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愛文堂出版
2024年11月19日 10:29
第1章浮浪者真島は、明かりを消したマンションで一服しながら、電話に耳を傾けていた。クラブでの宣戦布告から四日経つが、他の組にはまだそれらしい動きはなかった。電話は妻からだ。電話の向こうの声は、どこか不安げだ。「ねぇ、最近変なことがあって…娘も気味悪がってるの。毎日、家の周りでゴミを漁ってる浮浪者がいるのよ。それが、登校や出勤の時に私たちに話しかけてくるの」 真島の心臓が一瞬止まったかの
2024年11月19日 10:11
第1章暗号 リサとアレックスは一先ず落ち着きを取り戻し、コーヒーを飲みながらノアが隣の部屋でチップのデータを解析するのを待った。十分ほどして、奥の部屋からノアの呼ぶ声が聞こえた。「もう分かったのか?」アレックスが訊くと、「いいえ、わかったのはどういうフォーマットデータなのかということだけ。暗号化解除すると、出てきたデータは単なるマス目と不規則な数字。おそらく、アナログなクロスワードじゃないかし
2024年11月19日 10:04
第1章苦肉の策 三日後、エンサムが十字軍に召集をかけた。例の全体戦略会議だ。カイラン達も後ろの方の席で話を聞く。「皆よく聞け。ゴーレム討伐作戦はすでに半年以上経過している。国王からは次でしっかり決着をつけるようにと伝令があった。よって、今日から七日目の夜を最終決戦とし、それまでに、準備することがある」エンサムの口ぶりはやけに勿体ぶっていた。 調達隊が叫ぶ。「軍長、投擲機の岩なら当日まで
2024年11月19日 09:53
第1章魔法陣 アリシアは、フィリスから「次の研修に進む準備はできたか?」と促され、気持ちを引き締めて扉の前に立った。扉を開けた先に広がっていたのは、夜の森。星が瞬く闇の中で、彼女はひんやりとした空気を感じながら進んだ。開けた場所に到着すると、目の前には重厚な石板が立ち、その中央には複雑な魔法陣が刻まれていた。いくつかの同心円から作られた魔法陣の、円周上に宝石が埋め込まれていて、まるでダイヤル電
2024年11月19日 09:43
第1集夜 李華と劉辰が森を抜けた頃には、空一面が星の光で埋め尽くされていた。夜風が優しく吹き抜ける中、二人は小さな火を焚いて、干し肉を焼いて食べていた。火の暖かさが体に染みわたり、静かな夜の音が心地よかった。「劉辰、旅を続ける上で心得ておかなければならないことがあります」と、李華は口を開いた。「この世には力任せに奪い、殺すならず者たちがいます。そしてすれ違いざまにモノをかすめ取るスリも。