【読書メモ】『MASTER キートン』(著:浦沢直樹/勝鹿北星/長崎尚志)
『MASTER キートン』、高校生の頃に手に取り、おそらくは大学で「史学科」を専攻するきっかけの一つにもなったシリーズ(浪人中も心の糧にしていた覚えがあります)、その前の連載でもあった『パイナップルARMY』も好きだったなぁ、、どちらかというと大人向けの漫画だったと思うのですが、どうやって知ったのかは思い出せずに、、古本屋とかで発掘したのかなぁ。
主人公は平賀・キートン・太一、日本人の父とイギリス人の母を持ち、物語開始時点ではおそらくは35-6歳くらいの中年(学生結婚、バツイチ、中学生の娘あり)、英国籍。考古学の研究者、保険の調査員(オプ)の今でいう二刀流の他、英国軍特殊空挺部隊(SAS)でサバイバル術の教官を務めていたとの経歴を持っています。『パイナップルARMY』もでしたが、当時の欧米視点からの世界情勢の切り口が新鮮でした。
なお、タイトルにもある「MASTER」は「修士」と「達人」とのダブルミーニングなのかな。キートン先生自身が主軸にしたいと考えている考古学では芳しくなく「修士」どまり、一方、あまり前向きにはとらえていない調査員では「達人」とも評される実績を重ねている、とのギャップも面白かったです。その上で普通の家庭人でありたいとの、卑近の家族や友人達との物語と、社会情勢への考察との対比も興味深く、折々で読み返したくなるシリーズでもあります。
物語の形態としては原則1話完結の連作短編、どちらかというと探偵もの要素が強いのかな、お約束の相棒もいますし、シャーロック・ホームズなどが好きな方は楽しめるかと。そういや、アニメ化もされていたのですが未見なんですよね、不思議と、、アマプラにないかな。。
全部で18巻(完全版で12巻)となかなかのボリュームで、それだけに印象的なエピソードもいくつもありますが、個人的には「屋根の下の巴里」との一編が一番最初に思い出されます。
なお通常版は1994年頃に完結、その後20年くらい経ってから完全版での再販と、20年後の物語との設定での続編となる『MASTERキートン Reマスター』が10年ほど前に、、てっきり不定期で続くのかと思っていたら(今のところの最終話も微妙な終わりでしたし)、その後は何も出てくる気配がないのでスピンオフ的に終わってるのかな、、またどこかでしれっと出てきそうでもありますが。
で、「Reマスター」に出てくる人物も、それぞれに20年ほどの齢を重ね、、通常版の終わりでは大学受験生くらいだった百合子さんもアラフォーで、キートン先生と同じ考古学の道に進んでいます。ちなみに劇中では一足飛びに離婚までしているのですが、、その理由にはまた、泣かされました。家族は大事にしないとなぁ、、ともあらためて。
生きている限り、何らかの形で何かしらを「学ぶ」ということは続けていきたいですね、大事な人たちとの関係性を保ちながら、なんてことを考えさせてくれるシリーズです。