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【読書メモ】『軍犬と世界の痛み(永遠の戦士フォン・ベック 1)』(著:マイクル・ムアコック / 訳:小尾芙佐)

「ファンタジー武器」と呼ばれるコスプレイヤー御用達の武器屋を訪ねた。
扉を開けるとくすんだ板張りの壁に剣や斧(おの)が並ぶ。鋲(びょう)のついた鉄球や宝箱もある。

出典:「ファンタジー武器 町工場の匠 コスプレ彩る」
(『産経新聞』2024年8月13日)

ファンタジー、最近だとやはり『ハリー・ポッター・シリーズ』が定番でしょうか、少し前だと『ロードオブザリング(指輪物語)』や『ホビットの冒険』、あとはディズニー系も定番ですかね、『アナと雪の女王』とか。

個人的には『ロードス島戦記』や『十二国記シリーズ』、『精霊の守り人』、『宇宙皇子』辺りの印象が強いのですが、この他、イギリス発祥の「永遠の戦士」と呼ばれるシリーズも印象に残っています。

その「永遠の戦士」との名を冠する存在は多数いますが、その一方で、多にして一なる存在であるともされているとの、最近マーベル系で流行り?の「多元宇宙(マルチユニバース)」のはしりともいえるのでしょうか。

それぞれの「永遠の戦士」が「地球」を舞台にした並行次元での物語、時に同時に存在し、時に時代も次元をも超えての転生体としてつながり、その万華鏡のような有り様と「多元宇宙」と表現される世界で、それぞれを主人公とした物語は紡がれていきます。

自分が初めて手に取ったのは中学生の頃でしたからもう30年以上も前になります、そう考えると息が長いですね。本国イギリスでは幾度となく新版が重ねられているそうで、今から10年程前に体系化され全14冊にまとめられたのが、今のところの最新版になるのでしょうか。

その、全集とも言うべきシリーズの先陣を飾ったのが、こちらの『軍犬と世界の痛み(永遠の戦士フォン・ベック 1)』となります。

舞台となるのは1600年代のヨーロッパ、30年戦争の真っ只中のドイツ。主人公は「軍犬」の二つ名でも呼ばれる、歩兵団長ウルリッヒ・フォン・ベック伯爵。

キリスト教世界に生まれながらもその「宗教」の在り方に懐疑的で、それが故にか、一人の堕ちた天使の要請に応えることになります、「聖杯」探索という要請に。

そして現実世界と忘却界(リンボ)がない交ぜになった探索行を経て、一つの「約束の地」に導かれていきます。その旅の過程で一つの「真実」を無意識に見出しながら、自身の変化にも気づかずに。

わたくしたちは助けを借りずに生きるのですね

出典:『軍犬と世界の痛み(永遠の戦士フォン・ベック 1)』

終盤に登場するこの台詞は、恐らくはムアコックの原点でもあり、この後に続いているであろう他のシリーズの中でも、これに相反する「絶対者からの束縛」との観念は、宿命的な頸木となって主人公達を悩ませ続けます、その終わりまで。

そういった意味でも、この14冊の冒頭に本書を持ってきたのは、上手い配置だなぁ、と感じました。ちなみにこのシリーズは、イギリス・ゴランツ社から「永遠の戦士叢書」として出されているシリーズを元にしているとの事です。

知識とは何か、自由とは責任とは何か、そして「人」で在るとは、、なんてことを突きつけてくる物語だよなぁ、なんて思いながら。

そういや数年前、この「永遠の戦士」の中でも有名な一人、エルリックがゲームになんてニュースも出ていましたが、まだまだ模索中なんですかねぇ。。

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