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理想的な自宅通勤なのに一人暮らしを始めた【音声と文章】

山田ゆり
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※今回はこちらのnoteの続きです。

https://note.com/tukuda/n/ndba5c76dba52





自分から進んで事務職から販売職に転属したのり子は水を得た魚のように毎日を楽しんでいた。


「やってみたいと思うことはやってみよう。」

その時ののり子を言葉で表現すればこうだった。


そしてのり子は20代後半になって、「ひとり暮らしをしてみたい」と強く思うようになった。

自分のお給料で暮らせるのかどうか。
一人で生活しても規則正しく生活できるのか、自分を試したくなったのである。



のり子は住環境に恵まれていた。
自宅から駅までは徒歩8分位(自転車では4分位)。
電車に5~6分揺れて、駅から徒歩8分位で会社に着く。

通勤通学の時間帯は4両になるが、それ以外の時間帯はのどかな田園風景を2両編成の電車が走る。


通勤時間帯は座るところがないが、都会のようにぎゅうぎゅう詰めの状態になることは絶対にない。

のり子は定期的に東京に出張に行っていたので都会の殺人的電車を知っている。


どうしてあんなにぎゅうぎゅう詰めの電車になるのだろうか。
もっと、車両を増やすなり来る回数を多くすればいいのにと思うが、都会は数分おきに電車が来る。それでもやっぱり、はち切れんばかりに人が詰め込まれ、ドアにぴったりとくっついている人がいっぱいだった。


のり子の住んでいるところは、30分おきに電車が来るから、今の電車を逃すと遅刻をしてしまう。
だから、乗り過ごすことはできない。

でも隣の人の肌に触れるというあの都会のような状態には絶対にならない。



だから、のり子は田舎での電車通勤に全く不便は感じていなかった。

帰りの電車は始発だから、少し早めに行って電車の中で読書を楽しめる。

手編みに凝っていた頃は編み込んでいる途中のセーターを持ち込んで電車が着くまで棒針を動かしていた。


そんなのり子は一人暮らしをする必要は全くなかった。

それでも自分のお給料で生活できるのかを試したくなった。


当時、新聞社に勤めていた弟のつてで、新築のアパートを紹介してもらった。

そこはまだ周りの舗装ができていないほど出来立てのアパートだった。
家賃はその頃の相場の中の上くらいで、すぐ近くに国立大学がある関係で、本屋さんが多く、学生の街という雰囲気が気に入っていた。


会社には徒歩30分位かかり、自宅通勤よりも不便にはなったが、それでも自分の人生を自分で動かしている感覚を感じ、のり子はそこで新生活をスタートした。


お米は自宅からもらうことにした。これは父が作ってくれたお米である。時々両親が軽トラックに乗って、お米やほうれん草などを持って来てくれた。
だから、「自分の給料で」生活することからは少し反則にはなるが、両親が好きでやってくれているからのり子はその行為に甘えた。

それ以外はのり子の力で生活した。


お米は毎朝一合炊き、夜に食べ切り、タイマーをかけて翌朝また一合を炊いた。

2~3件隣にスーパーがあり、食材はそこで買うことにしていた。

また、電気水道などの光熱費にも気を配り、電気の点けっぱなしは勿論しない。
夜遅くまで起きていることはなかった。

小さなブラウン管のTVは朝の時計代わりに付ける程度で、夜遅くまでダラダラTVを見る習慣は無い。

もともと、早寝早起きだということもある。



洗濯機はあったが、一人分の洗濯は手洗いで十分であることがすぐに分かり、洗面器に洗濯板を入れて洗濯をし、洗濯機は脱水のためだけに使っていた。
もともと、洗濯物を溜める習慣がなかったのり子は毎日手洗いをしていた。

洗濯物は夜に部屋に干すと翌朝には乾いていたから部屋の中が煩雑になることはない。


ワンルームだったから、ベッドは置かず、布団を毎朝、押し入れにしまっていた。
シーツは朝に洗って干して会社へ行き、帰宅すると乾いたシーツで寝たから1枚で事足りた。


質素な料理だったが、出来合いの物はあまり買わず、お味噌汁はほぼ毎日作っていた。

ゴミ箱は大きいものを用意するとゴミを溜めやすいと思っていたから、小さいものを1個しか用意せず、市役所に出向いてゴミの日の一覧表をいただき、ゴミの日はなるべく毎回出すようにして、ゴミを溜めないように注意していた。


部屋には自宅から持って来たカラーボックス2個と小さなTV、ワープロ、一人分の小さなちゃぶ台があるだけだった。


モノは増やさない。それを最後まで貫いた。

完璧主義なのり子は、朝、会社へ行くときに自分の部屋を振り返る。

突然だれかが部屋に来ても恥ずかしくない状態か。
いつもそれを問いかけ、自分にOKを出してドアに鍵を掛けた。



日常の生活に自信を持って来たのり子は「自分の未来」を強く考えるようになった。

あと数年で30歳になる。


のり子には、好きな人がいなかった。会社で素敵な男性を見ているから理想が高いのかもしれない。


何度かお見合いを勧められてしてみたが、地元の男性は、無趣味で将来の夢を熱く語る人はいなかった。


「私はもしかして、結婚しないのかもしれない」
そんな気がしていた。



「結婚しないなら、自分はこの地元にこだわる必要はない。
姉は既に嫁いでいる。
我が家には跡取りとして弟がいて自分は自由だから、生きたいように生きよう。」

のり子はひとり暮らしをしながら、都会で暮らす自分を想像するようになった。








長くなりましたので、続きは次回にいたします。




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山田ゆり
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