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【詩】牡蠣

牡蠣の豊饒な風味を指して、海のミルクだなんだの言われるが、俺から言わせりゃ、ありゃ牡蠣の根性の味だね。

青色の深い孤独や、工場の垂れ流す毒物や、歯の鋭い捕食者の恐怖や、あれやこれやの海の苦しさに、歯は食いしばれねぇから、殻閉じしばって、いつまでも耐えているんだ。

それだけじゃねぇ。

自分にとっての良いものと悪いものとをいつだって見聞きしているのさ。
一波一波のあいだにまぎれている善悪にじっと耳を澄ましている。

お前さんらが美味しい美味しいと頬張る牡蠣の豊穣は、奴らの根性と人生の重みだ。

だから、牡蠣を食う時には自分に問うてみるんだな。

何年後か何十年後か、あの世の天使か悪魔か知らねぇが、そいつがパクっと自分を食った時に、俺はどんな風味なんだろう。ちゃんと根性の味がついてるかってよ!

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