「グリーンローソン」がお客様と共に取り組む レジ袋、フードロス、使用電力の撤廃と抑制
レジ袋有料化をきっかけにマイバックを持参する人も増えていますが、コンビニではレジ袋削減だけでなく、フードロス対策や使用電力の抑制といった環境対策にも取り組んでいます。
今回は、環境負荷軽減に積極的にチャレンジしている「グリーンローソン」事例について、「月刊コンビニ」副編集長の梅澤聡さんにレポート頂きました。
コンビニに求められている環境負荷対策とは
環境に配慮した店舗運営は、コンビニ業界にとって重要なテーマです。コンビニは生活者にとって最も身近な立地で商売を営み、日々の生活に大きな影響を与えます。1店舗1日平均800人が買物をするので、全国5万8,000店舗に計4,600万人が訪れます。日本人の4割近くが毎日コンビニを利用している計算になります。
もう一つの理由は、コンビニチェーンのシェアの大きさです。コンビニは大手3チェーンで9割以上のシェアを持ちます。ここに中堅6チェーンを加えると、ほぼ100%のシェアを握ります。すなわちコンビニ9チェーンが環境に配慮すれば、毎日4割近くの日本人に行動変容を促すことができます。これが、コンビニのチェーン本部と店舗にとって、環境に優しい店づくり、売場づくりが必須テーマとなる背景であり、実際に、そうした使命感を持って業界全体が取り組んでいるのです。
コンビニに限った話ではありませんが、プラスチック製買物袋の有料化が2020年7月1日から全国一律でスタートした当初は、コンビニ店舗から不安の声が数多く寄せられました。買物環境を考えると、スーパーマーケットでの買物は計画購買です。他方、コンビニは何かの移動中に、ふと立ち寄る利用がとても多いのです。
仮に、コンビニで購買点数が複数になり、マイバッグを持ち歩く習慣がなければ、お客様はレジ袋を購入するしかありません。果たしてクレームにならないのかという懸念がありました。また、従業員に対しては、一人一人に「レジ袋をご利用ですか?」と尋ねる手間が増えます。コロナ禍でもビニールシート越しにレジ袋が必要か?不要か?のやり取りが求められ、今も続いています。
これは、現場にとっては少なからず負担でしたが、実際に効果はありました。ファミリーマートの「レジ袋辞退率」は、2021年度は76.3%に上っています。もともと単品買いのお客様はレジ袋を使用しないとしても、それまでペットボトル1本だけでも、何となくレジ袋に入れてもらっていたお客様は多いはずです。レジ袋が有料化されたことで、必要以上にレジ袋が使われることはなくなったのではないでしょうか。
このようにコンビニが環境負荷軽減への取り組みを強化、継続すれば、大きな効果を生むと考えてもおかしくありません。
特にコンビニが矢面に立つ環境負荷は、一つ目に、上述のレジ袋やスプーン、フォークに使用するプラスチック製の配付物、二つ目に弁当などの食品廃棄、三つ目に店舗で24時間使用する電力があります。
二つ目の食品廃棄については、「食品廃棄ロスを抑制したい店舗」VS「欠品しない売場を維持したい本部」の二項対立を煽るメディアも散見されましたが、現在は各チェーンで廃棄ロスを出さない仕組みづくりを強化しています。
三つ目の使用電力については、24時間営業をコンビニ業態の基本とする以上、チェーン本部が電力削減に対して技術革新に取り組んでいく必要があります。
有料レジ袋とカトラリーを全撤廃
こうした業界の課題に対して、お客様への啓発活動を含め、共有化を図る画期的な店舗が2022年11月28日、東京・豊島区にオープンしました。ローソンが直営で運営する通称「グリーンローソン」です。ローソンは、将来的に実現すべき、環境に配慮した新しい店舗像を示しているのです。
この「グリーンローソン」は屋号の通り、CO2 排出量やプラスチックの削減を図り“地球にやさしい店舗”づくりを推進していくモデルとして位置づけられています。
「私たちがお客様とともに実施していきたい取り組みが、“レジ袋とカトラリーの撤廃” です。マイバック、マイカトラリーを、お客様にご用意いただき、お客様と一緒になって進めていきたい」(ローソン インキュベーションカンパニー 事業開発部部長 吉田泰治氏)
グリーンローソンではレジ袋を扱っていません。有料販売すらしないのです。店内で販売しているマイバックを勧めたり、リユースされた紙袋を勧めたりしています。このリユースの紙袋は、自宅で不要になった紙袋を店頭で回収し、「お買物袋」として再利用する取り組みです。
さらに、グリーンローソンでは、箸、スプーン、フォーク、ストローといったプラスチック製の使い捨てカトラリーのサービスを全面廃止しています。11月のオープン当初は、必要なお客様にだけ、木製であるとか、紙であるとか、そうした環境配慮型のカトラリーを提供していました。
ただし、オープンから1カ月の間に、店頭にて、お客様への告知、周知を実施した上で、2023年1月10日より、これら環境配慮型のカトラリーを含めて、使い捨てカトラリーを全て廃止して、必要とされるお客様にはオリジナルカトラリーの購入を勧めていくとしています。
いくら実験的な店舗とはいえ、(グリーンローソンの試みを)知らないで入店したお客様は、かなり戸惑うかと思います。しかし、筆者がグリーンローソンの立地を見たところ、人通りの多いJR大塚駅の近くにありますが、メインの通りには面しておらず、一見のお客様様が通りがかりに入るような店舗ではありません。駐車場のないビルインの店舗で、近隣の就業者や居住者が繰り返し利用する立地に見えます。“環境配慮型店舗”の周知徹底が、駅前立地やロードサイド立地、オフィス街立地のコンビニ店舗に比較して、実行しやすい環境にもあるのでしょう。
他にも、店舗をハブとした、リサイクル、リユースなど、エコサイクルの推進にも取り組んでいます。例えば「フードドライブ」を店内で実施し、各家庭で使い切れない未使用食品を店頭で回収して、フードバンク団体や地域の福祉施設、子ども食堂などに寄贈する活動を始めています。また、不要になった衣類を店頭で回収して、必要とされている海外への出荷や、軍手などにリサイクルする取り組みも実施しています。
冷凍とオーダー制でフードロスをゼロへ
数年前に恵方巻の売れ残りを大量廃棄しているとして、コンビニ業界が批判にさらされました。生活者の日常にワクワク感を提供しようと、縁起物の販売を強化してきましたが、フードロス抑制に対する世の中の変化に後れを取ったのかもしれません。
グリーンローソンでは、フードロス削減に向けた大胆な取り組みを実施しています。“冷凍弁当”と“オーダーを受けてから作る店内調理”の2本柱で、米飯弁当の廃棄ゼロを目指しています。通常の(青色)ローソン店舗で販売している「チルド米飯弁当」や「定温(20℃前後)米飯弁当」は品揃えせず、グリーンローソンで新たに発売する冷凍弁当と、店内厨房で作る弁当のみにしています。
冷凍弁当は導入時で全7アイテム。もともと定温弁当の商品を、冷凍が可能なように仕様を変えました。既に専用の冷凍弁当を一部ローソン店舗に導入していますが、グリーンローソンの冷凍弁当は、最新の冷凍技術を用いて、定温仕様の米飯弁当を冷凍にしています。この冷凍技術について、ローソンは公表していませんが、例えば「液体凍結」であれば、中小の飲食店でも導入されており、比較的容易に実現できます。
冷凍弁当は平台の冷凍ケースに展開し、2023年の2月頃には解凍後の冷凍弁当を定温の棚に陳列して販売していくそうです。冷凍食品はフードロスが、ほとんど発生しません。また、当日のお客様の動向を見ながら解凍するオペレーションを組めば、廃棄を大幅に削減できます。
さらに、店内で調理する「まちかど厨房」(ローソン約9,000店舗に設置済み)を設置、それに加えて、一部メニューについては、オーダーを受けてから作る「できたてモバイルオーダー」をローソンでは初めて導入しています。「まちかど厨房」にしても、当日のお客様の動向を見ながら店内調理するのでフードロスは少なく、「できたてモバイルオーダー」に至っては、注文を受けてから作るのでフードロスは限りなくゼロに近づきます。
ただし、冷凍弁当の解凍、店内調理の弁当は、フードロス削減に大きく貢献しますが、仕入れ弁当を並べて販売する通常の店舗より、従業員に負荷がかかります。バランスを取りながら、どのように移行していくかは今後の課題になるでしょう。
冷気漏れを防ぐ扉の設置で使用電力を削減
使用電力の抑制もコンビニ業界にとって大きな課題です。昨今の電気料金の高騰は、冷ケースを揃えたコンビニ店舗にとって負担は重く、店舗での節電が求められています。
グリーンローソンでは、冷蔵ショーケース、および冷凍ショーケースについて、既存のオープンケースを見直して、それぞれ大幅な省エネを図っています。通常のオープンタイプの冷蔵ショーケースにペアガラス扉を取り付けて、外気の侵入、冷気漏れを改善しています。もう一つ、平台の冷凍ショーケースにもアクリル扉を取り付けて、冷蔵ショーケースと同様に、外気の抑制、冷気漏れを防止して、省エネを推進しています。
扉の設置により、お客様が商品を手に取る際に「扉を開ける」ひと手間が発生します。その手間が売上に影響を与えるのか、与えるとしても軽微なのか、見極める必要があるでしょう。
グリーンローソン開設にあたり、ローソン執行役員インキュベーションカンパニー プレジデントの酒井勝昭氏は次のような期待を語ります。
「リアル店舗であるグリーンローソンを通じて、何よりも “未来にやさしい持続可能なビジネスモデル”にしていきたい。それには、今あるローソンの水準だけではなく、お客様にとってのますますの便利、あるいは必要とされるサービスを、グリーンローソンを通じて、お客様と一緒に創っていく必要があります」
利便性の追求はコンビニの使命ですが、それと同時に環境負荷を低減しながら、持続可能なビジネスモデル作りがさらに求められています。
(文:「月刊コンビニ」副編集長 梅澤聡)
未来にやさしい持続可能なビジネスモデルの実現に向けて、今までにない新しい取り組みにチャレンジするグリーンローソンの事例をご紹介いただきました。特に印象的だったのが、お客様にも「理解」や「協力」を求めるような施策を打ち出している点です。レジ袋やカトラリーを全撤廃したり、冷蔵・冷凍ショーケースに扉を設置したり、不要になった紙袋を回収したりと、従来のコンビニと比べて利便性が下がったり、お客様のひと手間が発生してでも、環境負荷低減を目指して様々な工夫を試しているところに、ローソンの本気度がうかがえます。
改めて、持続可能な社会づくりは企業だけでなく私たち消費者の意識や行動も変わる必要があるのだと考えさせられる事例ではないでしょうか。同時に、お客様の利便性も追求していくことも見据えているようなので、環境にやさしく、顧客満足度も高まるような、新しいアイデアやソリューションが生まれることに今後も期待したいと思います。