積読は、恋なのかもしれない(第21回積読読書会レビュー)
11月も最終日、ふだんより早めの19時30分に開始された第21回積読読書会には、5人の積読家が集った。
前回の第20回では「積読読書会に参加するために、本を読まないでとっておきました」という、私は何か根本的に間違った取り組みをしているのではないだろうかと疑念を抱くことになるご発言もいただいた本読書会。
しかしながらど平日のほどよい夜に語り合った今回の集いで、すべての疑念は見事に晴れたのでした。
積読こそが最高の読書法である。
積まれよ、さらば救われん。
まさにそんなスローガンを再認識する夜でした。
📚積読が積読でなくなるとき
冒頭の私たちは、ぜんぜん積読に関係のない話ばかりしていた。
行商人が本を売るときにどんな棚を持って来てくれたら感動するか・拝みたくなるかとか、露出狂の方に社会的な問題なくご活躍していただくためにはどうしたらいいかとか。あるいは、東京・神楽坂にある会員制の風俗資料館についてとか。
・・・なんやかんやで、全然読書会の話をしないまま約1時間が経過してしまっていた。
これは本当に読書会と言えるのだろうか。主催者はとても不安だった。ありがたいことにほぼ毎回ご新規の参加者様がお見えになる積読読書会。いざ初めて参加してみたら、本なんてとりださずに延々と棚とか資料館とか露出狂の話ばかりしている。「これはちょっと来るべきではないところに来てしまった」と思われていないだろうか。
私はあたまのおかしい人だと思われるのではないだろうか。ややもすれば「読書会とうたっているのに全然読書をしない」ということで、訴えられたりするかもしれない。
不安はつきなかった。
・本が好きになる原体験はなんだろう
「積読家」というくらいだから、積読読書会に参加している皆さんは「本好き」に分類されるのだろう。しかしながら一方で「読んでいない」。ただ、本は大好きである。買っても買ってもやめられない。
ご参加者の中から「本が好きになる原体験ってなんでしょうね」というご発言が出た。どうして露出狂の話からそうなったのか皆目覚えていないんだけれど、とにかくそんな言葉だった。
いかにも読書会らしいいいワードだ。
椎葉村図書館「ぶん文Bun」のクリエイティブ司書としては「本がある場所で不必要に子どもを叱らないこと。それは、生涯の本嫌いを生むことになる」というお話しをした。だからこそぶん文Bunでは「静かに」「飲まない・食べない」「写真撮影禁止」「パソコンを使わない」などの禁止ルールを設定していない。
今は本を読まなくても、本が積んである場所で賑やかに遊ぶという原体験。それこそが「生涯の本好き」を生むのではないだろうか・・・。そんな話をした。
反応は「それは大事だよね」というものだった。露出狂の話の盛り上がりを10とすれば、「2」くらいの盛り上がりである。
本好きっていったい何なんだろうか。
しかし今となって思えば、第21回積読読書会の冒頭(本以外の話をした約1時間を除外する)で、このように「本好きになる原体験」の話題が提出されたことが、まさにこの夜の実りの種になったのではないか。
いや、風俗資料館もエロトークも露出狂も、すべては積読の積読による積読のための思し召しだったのかもしれない。
すべては繋がっているのだ。
📚積読協会会長のありがたいお話
19時30分開始の積読読書会。1時間が過ぎた頃、何かの事情で遅れてご参加いただくことになった「積読協会会長」がZoomにログインされた。
積読協会会長は、第2回積読読書会の頃から全参加されているという数寄物の方である。「積読協会」を立ち上げるくらいだから、そりゃ相当なものである。
清流がよどみなく合流するように積読読書会へ加わった会長はすぐさま ①積読検定について ②第2回積読本大賞について、と二つの重要事項をご説明してくださった。
・積読検定について
ついに始まった・・・!!!
全世界が興奮せざるをえない「積読検定」の始まりである。
今回は練習問題がウェブで公開されたということで、クリエイティブ司書もさっそくやってみた。結果は8割正解。「清々しい積読の専門家」という、誉れあるお言葉をいただきホクホクであった。
積読読書会の参加者さんも、読書会中というのにめいめい検定を解いていたりした。
本を読め、本を。
(開始から2時間、誰も本を開いていない)
積読家を自称される方も、そうでない方も、ぜひ解いてみていただきたい。積読協会会長によれば、今後様々な級数設定や問題数の拡大、クオリティの向上が見込まれているそうだ。日本の検定界に激震が走り、世の検定対策本の売れ行きチャートも色味をすっかり変えてしまうことだろう。
ちなみに、解いたからといって特に良いことは起きないと思う。
積読検定と真摯に向き合うこと。それ自体が重要で絶対で価値ある行為なのだ。
・第2回積読本大賞について
積読協会会長の活動の幅は広い。
さる2022年11月26日に開催された「第二回積読本大賞」の選考会には、クリエイティブ司書もオンライン参加させていただいた。現地の音声はマイクが遠すぎて全然聞こえなかったのだけれど、とても楽しそうなことだけはわかったのでそっと退出した。
・・・つまり選考結果を聞く前に退出した私は(業務多用でした、すみません)栄えある大賞の行方を知らなかったのだけれど、第21回積読本大賞のなかで会長じきじきに大賞受賞作をご発表いただいたのである。
さすがは「積読協会公認積読読書会」である。
そんな栄誉ある受賞作品こそがこの、白揚社さんから出版された『ゲーデル、エッシャー、バッハ 20周年記念版:あるいは不思議の環』である。
「第二回積読本大賞受賞」というワードを、白揚社さんはどのように受け止められるのだろうか。けっこう立派な賞状まで制作された会長が「できれば出版社さんにお渡ししたい」とおっしゃっていましたので、どなたか白揚社さんにお知り合いがいらっしゃる場合はお繋ぎいただきたい。
ここで「積読」に関してひとつ誤解がないように注釈しておくと、それは「読む価値がない本」ではないということである。
積読。それは、積めば積むほど幸せを生む行為のである。
「読みたい」を超越した「積みたい」がすべての欲望を凌駕し、その先にはただ幸福の時間があるのみである。
積まれている本は役に立たないなどと、ゆめゆめ断言なさらないほうがよろしい。積読の価値は計り知れない。
・・・怪しいでしょうか?
・・・そうでしょうか??
実は冒頭の「本が好きになる原体験」は、積読にこそ秘訣があるのではないか。そんなことを、いま私はこの文章をかきながらゆらゆらと考えている。
その考えに説得力をもたせるためには、第21回積読読書会でお披露目された積読に関する名言・至言・金言の数々をご紹介しなくてはならない。
📚積読に関するすばらしいことばの引用
第21回積読読書会に初めてご参加された某氏は、こんなコメントを残された。
・・・時勢が時勢(令和4年)だけに、こうして文字にしてしまうとちょっと怪しいコメントである。仕込みとかサクラみたいである。こういう手法の団体とかありそうである。なんの団体かとか、はっきりと想像してはいけない。いけないよそれは。
しかし、積読読書会に参加したからといって「積読協会」に入信入会しなければならないわけではない。大丈夫、ほんと大丈夫だから安心してほしい。
また、何かを買わされることもない。・・・たしかに他の参加者さんが紹介した積読をみて買ってしまう例とか「積読読書会で聞いた本が近所の書店に並んでいてやたら大きな存在感を感じてしまう」とかいう被害報告楽しい会話が生まれることはあるものの、買うのは本である。
積読読書会に参加すればさらに本を積めるのだから、もう嬉しくて仕方がないというわけである。
ほんで、我々はこのご新規様のお言葉を聞きながら改めて積読の良さを噛み締めていた。そんな感動の連鎖こそが、数々の「積読名言」を生んだのである。
以下、文脈を無視することもあり多少乱暴ではあるが、できうる限り当夜の興奮を伝えられるように名言を引用したい。
・この本が積読ではなくなってしまう悲しさで、胸が張り裂けそうです。
・重いほうが積読しやすいですからね。
・だいたい本の存在自体が積読なわけですから。
・読んでしまうと、その本の役目が終わってしまうような気がしている。
・積読って、恋に似ていると思うんです。しかも、付き合い始める前のあのドキドキに。
・積読は、おもちゃの缶詰
・積読は、未来の自分に渡すバトン
・・・これらの名言を読んで「何を言っているかわからない」と思った方へ。
どうかご安心していただきたい。
わたしだって何を言っているかわからない。
しかしそれでもなお、あの夜に私たちはこんな名言を交わしあい、積読を紹介しあい、破顔のことばそのままに笑いあっていたのだ。
それ以上の何が必要だというのだろうか。
積読は、すべてである。
積まれよ、さらば救われん・・・。
📚第22回積読読書会はいつ開催されるのか?
ここまでお読みいただいた皆さま、ありがとうございます。
本当に怪しい読書会ではないんです。
本当です。
こわくないよ。
次回は12月23日金曜日の21時から開催しようと思いますので、気の早い方はどうぞ下記フォームから先行してお申し込みくださいませ。
ここまで読み進めてしまったからには、もうあなたは立派な積読家です。
↑お申し込みいただきましたか?
申し込んでいない?
怪しいから??
・・・本当に申し込まなくて大丈夫ですか?
(またnoteで別途、12月中旬までには案内記事を公開させていただきます。今回は見送られる方も、その際はぜひお申し込みくださいませ)
📚第21回積読読書会で紹介された本たち
白熱の名言合戦を生んだ第21回積読読書会。それもこれも、積読のせいだというわけです。
一体どの本が我々の内奥に眠る積読への憧憬を刺激したのか、ぜひ「第21回積読読書会で紹介された本たち」のリストをご覧いただき検証してみてください。
・池田修の夢十夜
・宮沢賢治全集
・第一藝文社をさがして
・みんなでつくる中国山地
・.doto
・ボディビルのかけ声辞典
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私が分析するに、今回の積読読書会で名言がぽいぽい飛び出したのは『ボディビルのかけ声辞典』のせいではないかと思う。
だって帯コピーが「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」ですよ。たまらん。
そんなバルクアップ名言に感化されつつ「図書館司書×ボディビルダー」って聞かないよね・・・みたいな話をしてみたり、延々と楽しい会話は続きました。
※今回も、できるだけ版元さんなどのリンクを貼るようにこころがけました。気になった積読さんをご自宅にお迎えされる際は「推し書店」さんで購入されるか、または版元さんのウェブページ情報などから入手の糸口を探してみてくださいね!
///////////////おしらせ更新場所について///////////////
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///////////////以上、おしらせ更新場所でした///////////////
・・・こんなところで、第21回積読読書会のレビューを終わりたいと思います。
いいですよね、積読。
たまらんですよね。
積まれよ、さらば救われん・・・。
これからも、健全で怪しくない積読読書会をよろしくお願い申し上げます。
※次回は2022年12月23日金曜日 21時から