踊らないインド映画はいかが?『あなたの名前を呼べたなら』
こんにちは。ぽんずです。
この前、「『RRR』がハマらなかった人の感想文」という題でnoteに投稿させて頂きました。全く毛色は違いますがインド映画続きという形で、今回紹介したいのが『あなたの名前を呼べたなら』(2019)。
本作は、「ラブストーリー×社会派」な作品となっており、切ない恋愛映画でありながら、インド社会のリアルを知れる映画であります。
そして、本作は踊らないインド映画です。インド映画の独特な雰囲気が苦手な方にも楽しめるのではないでしょうか。
また、「踊らないインド映画も知ってるぜ。」的なマウントも少々取れるかと思うので、記事を参考に気になった方は観ていただきたいなと。
『あなたの名前を呼べたなら』(『Sir』※原題)
実のところ、本作はフランス資本が入っているので純なインド映画ではありません。インド・フランス合作です。
でもまあ、舞台も言語もインドですしインド映画とさせてください。(笑)
監督のロヘナ・ゲラはインドの裕福な家庭出身であり、現在はフランスに在住しているそう。そのため。当事者且つ客観的な視点でインド社会のリアルを描けているのかと考えられます。
本作もフランスで高い評価を受けており、今後もフランスを拠点に活躍が期待される映画監督でしょう。
あらすじ
感想
未亡人であるメイドと建設会社の御曹司のラブストーリー。
何度も言いますが、「インド映画なのにインド映画っぽくない」のが新鮮でした。
作品として、インド社会に蔓延るカースト制度の名残を大きくテーマとしていた印象です。随所でインドの根深い差別社会の様相が伺えます。
インドでは、1950年に「カーストによる身分差別」は禁止されたものの、結婚は同じカースト間でしか出来ない・職業選択の不自由などの差別は未だ健在だそう。逆に、低カースト層を保護しようとし、結果的に上位カーストの逆差別に繋がるなどの問題も出てきています。
日本でもある程度の所得や出生など、結婚の際には見られるでしょうが、インド程ではないです。インドではきっぱり二分化されていて、それがインドでは普通という感覚が不思議です。インドは超学歴社会でもありますが、それ以前の「文化による弊害」による分厚い壁は想像以上でした。
また、インドの中流階級以上には基本的に住込みのお手伝いさん(メイド)が居て、且つお手伝いさんの仕事も分業化されている生活というのが驚きでした。
また、主人公のラトナは若くして夫を失った未亡人。
インドの田舎だと未亡人への扱いも酷いもので、多くの権利選択が制限されてしまいます。これもいわば慣習なのだそう。
また、ラトナはデザイナーを夢を見ていますが、ここも身分の問題にぶつかります。
夢を見ることさえ出来ないのがインド社会での現状みたいです。
しかし、ラトナは「未亡人×階級差」という大きな足枷のもと、御曹司であるアシュヴィンに恋をしてしまう。
2人は惹かれあっていくものの、周り(社会)がそれを許さない状況。
結ばれるのか別れてしまうのか。
2人の結末はどうなるのか?
固唾をのんで観てしまいます。
禁断の恋でありながら、お互いが少しずつ惹かれあっていく。
その過程を丁寧に丁寧に描いており、1つずつの行動からも感情の機微を感じ取れるような繊細な演出でした。
とにかく、本作のラストが抜群に良いですよ。痺れました。
原題は『Sir』ですが、本作に関しては『あなたの名前を呼べたなら』という邦題が抜群にはまっています。
ラストの一言で心奪われ、邦題を考えた人に拍手を送りたいです。
以上になります。
非常に良かった。
シンプルに「インド社会」への知見も増えますし、抜群の脚本です。
是非、ご鑑賞してみては?
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