マンションポエム、その魅惑の宝石箱 -つなまよポエムを添えて- #036
「マンションポエム」をご存知だろうか。
高級なマンションの広告に載っている文言の事である。ただの売り文句ではなく、それは、ポエムと呼べるほどの魅力的な煌めきを放っている。
いくつか挙げてみよう。
『歴史を継ぎ、今日を紡ぎ、明日を結ぶ、流儀の邸。』(ブランズ弦巻四丁目)
『誇りを、此処へ。そこは、濠の内。石垣の傍。』(パークハウス千代田富士見)
『パークを纏う、日本橋浜町』(PREMIST日本橋浜松公園)
『名作を日常とする。深まる静謐を味わう、私領域。』(「ブリリア ウェリス月島」)
どこから何にコメントすればいいかもよくわからないほど、みなさんは相当に、困惑されているかもしれない。
「歴史を継ぎ、今日を紡ぎ(つむぎ)、明日を結ぶ」家とは、いったいどんな家だろう。マンションの地下書庫には、古文書があるに違いない。
「此処」とはどこなのか。「パークを纏う(まとう)」というのは、単に「公園が近くにある」というだけではなさそうだ。なんせ「纏っている」のだから、さぞ緑で覆われていることだろう。
「継ぐ」「紡ぐ」「纏う」「静謐」など、私は人生で一度も使ったことがない。というか、読めないくらいである。「傍」など、なんと読むのだ。
恐らく多くの人が読めないであろう文字を広告に使っても、上質な雰囲気を出そう、という粋な心意気を感じる。
ポエムでは、よく「家」を「邸宅(いえ)」と言い換えたり、「時」は「刻」に、「森」は「杜」に、「住む」は「澄む」「棲む」、もしくは「住まう」になっていたりする。
また大抵のポエムの文尾には「。」(句点)がある。「文学的な感じ」が出すぎている。
冒頭で最後に挙げたポエムの「私領域。」に至っては、アニメやゲームのような中二っぽい感じがして、非常にカッコいい。
『PEAK of the HILL ここに、高台の上質。』(パークホームズ志村坂上フォレストヒル)
ポエムには英語が多用される。英語を使うと、やはり、なんだかカッコよくなる。「丘の上の家です」だとどこか牧歌的になってしまう。ハイジか。
『The One. 都心居住の先進を目指して、次の世紀へ贈る。The Spirit.』(ブランズ麻布狸穴町)
『PLANET DAIBA その惑星に住める日がくる。』(「THE TOWER DAIBA」)
「The One.」も「PLANET DAIBA」も意味はよくわからない。しかし、どんな壮大な住居なのかと、ワクワクする。
『此処に歴史を標す。洗練の高台に、伝統が聳える。風格と由緒、感性と街並みが響き合う。主要道から一歩奥まった地に、東京の新しき基点を。暮らしを妥協しないあなたへ -TOKYO HERITAGE』(マンションポエム研究家、大山顕氏作成)
さすがに詰め込みすぎだ、と思われるかもしれない。しかし、マンションポエムにはそれを受け止める器の深さがあるのである。
さて、このような重厚なものだけではなく、ポエムにはシンプルなものもある。
『あえて、深大寺』(深大寺レジデンス)
「敢えて」の意味を辞書で調べてみると、「わざわざ、ある意図を持って、しなくてもいいことを、無理をしてでも」とある。
深大寺をディスっているのかともとれなくもないが、これは、多くの人が気づいていない深い魅力があることの暗示かもしれない。
『劇的に、千葉。』(エクセレントシティ千葉グランクラス)
千葉県出身の私は、胸が躍る。千葉は、劇的であって、劇的でなくてはならないのだ。
『広尾、一期一会。』(オープンレジデンシア広尾ザ・ハウス)
この家との、一生に一度の貴重な出会い、という意味だろうか。それとも、広尾で過ごす一日一日、一瞬一瞬を二度とないかけがえのない貴重な時間として大切にしよう、という深い決意かもしれない。
『その横浜は、本物か。』(ブランズ横浜)
「…私の思っている横浜は、実は偽物なのか。…ここは、いったいどこなのだ」、気づけば、住民たちは疑惑の中にいる。
『そこは成城でもなく、仙川でもない。そして、成城でもあり、仙川でもある』(「セイガステージ仙川」)
そこは、いったいどこなのだ。
さて、こうしてマンションポエムの魅力に、しばし取り憑かれた私は、気づけば、頭の中でいくつも、つなまよ日記ポエムを作っていた。
『つなまよ日記=(それは)現代の憩居(オアシス)』
『1000文字(※)の劇(ドラマ)に酔いしれる。』(※注 平均の文字数を表現したもので、実際とは異なることがあります)
(マンションポエムには「注」も多用され、大抵当たり前のことが丁寧に説明されている。)
『TSUNAMAYOという日常円舞曲。一話の上質。』
『衝撃を受ける準備は、できているか。』
『変人、集う。』
『あなたをゆさぶる、未知の領域。THE TSUNAMAYO OF SUPREME』
『劇的に、つなまよ。』
『それはつなまよではなく、そしてつなまよでもある。』
『そのつなまよは、本物か。』
『あえて、つなまよ。』
…私はいったい、何をしているのだろうか。よくわからないまま、夜は更けていくのである。
(参考サイト)
どのサイトも膨大な時間をかけて分析して、執筆されている。その努力に思いを馳せ、頭の下がる思いである。どれもすごいので、是非一度ご覧頂きたい。
参考1 参考2 参考3 参考4(google map)
2023年12月21日執筆、2023年12月29日投稿
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