気合を使わずに、原稿用紙を使え【オンラインナースのお仕事】
※この記事は、双極性障害の朝日さんの原稿をもとに、看護師の私の視点を入れ書き起こしたエッセイです。
この原稿、ちょっとおもしろくて。でも、多くの人がやってしまうやせ我慢。「気合だ」は一時期よく耳にしましたよね。気合ってなんだんだろうって、ちょっと考えたくなったんです。
気合があればなんとかなるって思っていた時期、私にもあります。でもそういうときって、ひざを痛めていてもランニングをしたり、徹夜でレポートを書いていたり、テスト勉強中に眠気覚ましのドリンクをガンガン飲んだりと、まぁ不健康。
今ある力を振り絞って、なんとか乗り切る感じ。それでなんとかなっちゃうんですよね。「やればできるじゃん!」みたいな感じで、無茶なことをして自己肯定感を上げていたのかもしれません。
でも、そんな感じでやりくりできるのも、学生まででした。眠気覚ましのドリンクは、命の前借りとも言われています。学生のころは、勝手に頑張って勝手に倒れることができていましたが、仕事をするようになってからは、そうはいかなくなります。明日も明後日も仕事はありますし、「これどうなってるんだ」の電話も深夜問わずかかってくる。
ましてや家族ができると、家事や子育ても延々と続くわけで、前借りなんてしていられません。倒れこむ日を作ることができないのです。
気合って、上乗せするものではないんじゃないかなというのが今の私の考えです。もっと冷静で、凛として、ほどよい緊張感がある状態にするという意味があるのではと思っています。
私は産婦人科に勤務しておりましたので、出産に立ち会うことも多数ありました。助産師さんにもいろいろなタイプがいらっしゃって、それこそ体育会系で気合の入った言葉かけの方も。反対に、とても落ち着いた助産師さんもいました。「焦らない。大丈夫。深呼吸して」と妊婦さんに言葉をかけ、赤ちゃんの誕生を待つのです。かっこいいなぁと思いました。
その助産師さんに「こんな穏やかなお産もあるのだと驚きました」と伝えたことがあります。すると「待っていれば、赤ちゃんは降りてくるものだからね」と答えてくれました。
もちろん、赤ちゃんの頭の回旋が悪かったり、お母さんの骨盤の状態によっては、あの手この手で介助しなくてはならないのですが。でも、「待っていれば降りてくる」という感覚、それがとても自然に思えたのです。
母子ともに今どんな状況なのか。健康であるために何ができるのか。研ぎ澄ませていった結果、このような関わりになっていったのでしょう。
寒ければ服を着る。膝が痛いならランニングを休む。喉が渇いたら水を飲む。眠くなったら布団に入る。だから勉強はそれまでに終える。これらは、とても自然なことです。自然なことって、無理がなくて健康的。健康であることに気合って必要ないような気がしています。
でも、それがなかなかできなかったりしますよね。どうしても、私たちは我慢をしてしまう。私の場合は「この我慢の先にいいことがある」というマインドが潜んでいました。昔はそういう教育でしたよね。それでも子どものころは、体も成長するので多少の無理も結果につながることもあって、そのマインドを確信していってしまう。けれども、私たちは体の成長も止まりますし、徐々に衰えていく。
そういったときに、気合ではなんとかならないと気づけるか、気づけないか。その対処ができるか、できないかにかかってきます。やはり、自分の体の変化や感情の揺れをキャッチできる力が必要になると思うのです。「眠いな」「ちょっと喉がいたい」「あの一言が嫌だなと思った」など。それらを書き起こしていくことです。
思うだけでは忘れてしまいます。何度も書いていれば、また同じこと書いているよと思うでしょうし、自分のウィークポイントにも気づくことでしょう。まずは気づくことが大切です。気づけば、それからどうしようと考えることができます。
気合は、自分の健康を守るために使っていってほしい。どうか無理をなさらずに。自分の体と心に素直に向き合ってほしいと思うのです。
※このマガジンは、個人が特定されないように書こうと留意しています。でも、朝日さんは「別に自分だと気づかれても構わない。それよりも、同じ病気の人を救えるのならという思いが優先する」とのこと。関係者の方は、そっと見守ってくださると幸いです。
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