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『小学校ICTの授業づくり 超入門!』(高橋純・水谷年孝・編著)
GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想が発表されて、なかなか進まなかった環境整備や指導改善が、図らずも「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大を受けて大きく変化しました。
改めて述べるまでもなく、2020年4月の緊急経済対策そして補正予算等により、全国の小中学校で「通信環境」や「1人1台端末」の整備が一気に進みました。
そして、2021年4月には“1人1台端末”を手にした授業・学習が“普通”になりました。
しかし、子供も教職員も“初めてのこと”が多く、試行錯誤が続いて一年が過ぎたところもあったようです。
2年目の今年、“スタートの一年”を検証し、改善された1人1台端末の使用・活用が“新たな一歩”になっていることでしょう。
この3か月、成果や進歩が見られていますか。
先生、“普通”になっていますか。“なくてはならない”ものになっていますか。
保護者のみなさん、お子さんは“活用”していますか。勉強を“楽しんで”いますか。
この3か月のICT活用について見直す前にお薦めなのが『1人1台タブレットではじめる小学校ICTの授業づくり 超入門!』(明治図書)です。
タブレットを上手に活用するためには、多くの道のりがあります。
そこで本書ではChromebookを用いた授業を先行実践されている愛知県春日井市の学校の事例を交えて、公立学校でもできる日常的なICT活用の基本をスモールステップでわかりやすく解説しました!
以前より授業改善、ICT利活用に取り組んできた春日井市の学校が“1人1台端末”で、何をねらい、何をして、どうなったか、そして“質の高い実践”を実現していくかが、具体的な場面や事柄からポイントを絞って紹介されています。
“GIGAスクール構想”により戸惑い、資料や書籍にアイデアを求めているのは、担任の先生が多いでしょう。本書も、そうした先生の助けになる内容が満載です。
ですが、ぜひ読んでいただきたいのは市町村でICT利活用を“推進するリーダー”や“行政の担当者”の方々です。
それは、“1人1台端末を使う”ことに、利用法として「~しない」といった制限が見られます。これらは、担任はもちろん各学校で変えられないこともあります。
例えば、「クライドを使って便利に…」となるはずが、子供が便利には使えない地区も少なくないようです。その地区の事情によるのでしょうが、本書の取り組みに見られる“子供の成長”に勝る価値が、その制限にあるとは思えません。
これまでの利用法の変更や改善を“できる立場”の方々に、本書そして春日井市の実践を参考にしていただけるよいと思います。
教育に関わるすべての方にお薦めの一冊です。
読書メモより
○ PCは学習のための道具であることを伝えよう
○ 教科書かや資料集から情報を集めて、PCでまとめを作成したり、集めた情報を共有したりするような学習が中心となるときのPCの置き方です。
○ この点を、小学校中学年以上の子どもには指導しておきます。(略) 「何のための道具だった?」と原点に戻って指導することが容易にできます。
○ 明日の授業でキーワードになりそうな言葉や、一時間の授業、単元全体の流れなどをスライドや動画で作成しておきます。
○ 情報担当者の心得
○ これまでは職員間であまり共有をしなかったような、ちょっとした役立つ情報も積極的にできるようになります。
○ Google Jamboard の体験は手書きから始めると低学年でもすぐできます。
○ 思考ツールを活用するうえで最も大切なのは、対応する思考スキルを意識させることです。
○ 日常業務で活用しながら授業活用イメージを
○ GIGAスクール構想によって整備された環境は、子どもたちの学びを充実させるためだけのものではありません。
○ 常時集約用のフォームに書き込めるようにしておけば、これまでと違い、日常的に地域の情報を集め、共有することができます。
【関連】
◇GIGAスクール環境活用事例集 - 春日井市 - (PDF 愛知県教育委員会)
◇1人1台PC活用は業務改善から~春日井市教育委員会(KKS Web:教育家庭新聞ニュース)
◇第 48 回全日本教育工学研究協議会全国大会 愛知・春日井大会
◇GIGAスクール構想の実現について(文部科学省)