【小説】『リトル・リト』 美大生活の終わりに
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あるところに、女がいた。名前をアキソラホホといった。彼女は自分がいつまでもは生きられないことを憂い、自分の分身をこの世に残す方法を思案した末、一冊の本をこの世に残すことにした。ところが本の完成の直後、彼女は死んでしまった。彼女は数少ない思い出を手土産に、他の誰もと同じように、ただ、この世から立ち去ったにすぎないのだ。
そして、この本を所蔵する美術大学附属図書館に、いまにもこの本をひらこうとする者があった。深緑色のコートを着たその人物は……
彼女の妹だった。名前をソエ