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20240703 イラストエッセイ「私家版パンセ」0025 「意識と無意識」

 心理学は人間の無意識を扱う学問です。
 無意識の発見は、20世紀最大の発見の一つと言われていますが、それ以前の人々は、人間の思考や言動に影響するものは、理性と感情の二つしか知りませんでした。突然の発作や、ど忘れなどは、悪霊などの超自然的な存在が原因と考えていました。
 自分の無意識に光をあてることは、自分の思考のパターンや感情の波などをコントロールするために必要ですけれど、心理学が生まれて100年以上経った今日でも、自分の無意識の領域について、意識的である人はほとんどいないと言っても良いかもしれません。

 ともあれ、今日は意識と無意識についてちょっと考えてみました。

 ぼくは人間の意識とは、無意識という深淵に浮かぶ一枚の木の葉のようなイメージを持っています。
 無意識の深淵には、恐ろしい海獣にも似た原型(アーキタイプ)が住み、時に嵐となって小舟に襲いかかります。まさに小舟は無意識の嵐に翻弄されます。
 しかしこの深淵は世界の隠された意味の宝庫であり、創造力の源泉でもあります。芸術家と呼ばれる人々は、この深淵からインスピレーションを得、世界の真理を発見し、それを形にする人々と言っても良いかも知れません。そして何より、ここは生命の源の領域でもあります。
 けれども、この深淵を相手にするのは危険も伴います。ある人々は、この深淵にとりつかれ、のめり込み、帰らぬ人となります。
 結局のところ、我々は人間はこの意識という小舟の上に生きるしかないのです。この小舟こそ、長い年月をかけて我々が獲得した唯一安全な領域なのです。あたかも森の木々を切り倒して畑や町を作ったように。
 ぼくたちが生きてゆくうえで、この深淵と上手につきあいつつ、小舟のかじ取りをすることが大切です。
 ユング派の心理学者ル・グゥインが書いた「ゲド戦記」の魔法使い、ゲドが小舟を操る者として描かれているのは単なる思い付きではないとぼくは思っています。

ル・グゥイン「ゲド戦記」 影との戦い 模写






私家版パンセとは

 ぼくは5年間のサラリーマン生活と、30年間の教師生活を送りました。
 たくさんの人と出会い、経験と学びを得ることができました。もちろん、本からも学び続け、考え続けて来ました。
 そんな生活の中で、いくつかの言葉が残りました。そんな小さな思考の断片をご紹介したいと思います。
 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。

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