死に様とはすなわち生き様だ|『エンド・オブ・ライフ』@つじりの図書室
#13
《生き様とは、「自分で選ぶこと」だと思う。》
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佐々涼子 著『エンド・オブ・ライフ』という本を読んだ。
著者のことは#紙つなげ という本で初めて知った。
『紙つなげ』は東日本大震災での津波によって被害を受けたある製紙工場の奮闘と復興をインタビューしたノンフィクション。
製紙工場復興に向けた熱いエピソードとともに、大震災そして津波によるその悲惨な状況まで描かれていて、鮮烈に記憶に残る一冊となった。
一方、今回の本は「在宅医療」「終末期」を題材にしたものである。
ーーそして、もうひとつ。
訪問看護師として多くの在宅終末期患者を看取ってきた森山ががんに罹患し、彼自身が”患者”となって命と向き合う話でもあった。
看護師として多くの命の終わりと向き合ってきた森山が、最後に下した決断は“その日まで、日常をただ生きること”だった。
予後やがんの症状に怯え屈するのではなく、運命を受け入れ、感謝をし、祈り、できる限りありのままの日常を生きることを選んだ。
自身が学び、使ってきた医療や看護を捨てたのだ。
看護に誇りを持っていたはずの森山の選択を見て、もしかすると人を“患者”に変えてしまうのは、病気や怪我などではなく“医療者”なのかもしれないと思った。
「あなたは病気なのだから、こんなことはしてはいけない」「こんなものは食べてはいけない」「行ってはいけない」「やめてください」
僕が病院に勤めていた時、これらの言葉をどれだけ聞き、どれだけ言ってきたのだろう。
死に様とはすなわち生き様だ。そして、生き様とは自分で自分の道を選択することでもある。
ある人は重度の呼吸不全を抱え、行ったら死ぬと知りながら、家族と潮干狩りに行った。
ある人はがん性の痛みに耐えながらも、ディズニーランドへ行った。
ある人は、痛み、悲しみに耐えきれず自身で命を断つことを選び、そして森山は妻と娘と楽しい思い出をつくり、家族の傍で命を閉じることを選んだ。
医療者が白衣を脱いで、医療を捨てて患者の望みを100%聞くことは勇気のいることである。
しかし、“医療”という名の剣で彼らの“選択”を切り裂くのは簡単で、残酷だ。
だから、医療者側の態度として訪問診療所の院長のこの向き合い方がしっくりきた。
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”「僕らは、患者さんが主人公の劇の観客ではなく、一緒に舞台に上がりたいんですわ。みんなでにぎやかで楽しいお芝居をするんです」”
僕も訪問看護ステーションに勤務している身として、がんに罹患された方のお宅に訪問することがある。
その時に必要なのは、医療という名のもとの応援とか支援とか、上から偉そうなことを言うのではなくて。
その人の“生き様”という『舞台』にまぜてもらう。
死を目の前にしている人の傍に立つ時は、それくらいのスタンスでいいのかもしれない。
この本を読んで、そう思った。
★参考した書籍など
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