【書評】出口治明・駒崎弘樹『世界一子どもを育てやすい国にしよう』
読み終えた後に奥付を確認して驚きました。2016年に著された書籍だということに。ここに書かれた内容、提起されている問題はまだ解決されているとは言えず、むしろ遅々として進まず先送りにされている印象さえある。この6年間、日本は、政府は、企業は、国民(自分を含め)は何をしてきたのか。
子育てで取り上げらる課題のひとつと言えば「待機児童問題」が思い浮かぶかと思います。長年言われ続けているにも関わらず「待機児童ゼロ」とはほとんど耳にしない。実際には「待機児童ゼロ」と発表している自治体はあるものの実態としてはゼロではない。一定の理由で待機している児童はカウントされなかったりすので。そこで出口治明さん、駒崎弘樹さんが提案されているのが保育園の義務教育化。そして確かに!と思ったのは、「保育園では待機児童がいるけれど、小学校で待機児童はいないよね」ということ。ここに国がどこまで本気で取り組んでいるのかの姿勢が見えてくるように思えます。
じゃあ、なぜ取り組んでくれないの?となると予算編成、政策など政治が関わってくる。すると、なんで政治家は取り組んでくれないの?となると、よく言われることではありますが、票に繋がらないから。選挙の投票率をみると若者・子育て世代よりも高齢者という世代の方々の投票率の方が高い。だから、票を入れてくれる人たちの政策がどうしても先行、重要視されてしまう。どうしたらいいの?問題解決のためには?と考えると、自分たちが投票に行って政治を変えていくしかない。「政府VS市民」ではなく、より良い政府になるために市民(国民)が積極的に政治に関心をもち、選挙(投票)に行くことが子育て問題解決への一歩だと改めて勉強させられました。
海外の政策も紹介されて、日本がいかに遅れているかを痛感。もっと政治も企業も国民も子育てについて積極的に考え、支援していけるようになればいいと思う。電車内で赤ちゃんが泣いていたら怒声があがったり、舌打ちが聞こえたりするのではなく、心優しく見守っていく。むしろ「大丈夫?」「何か手伝うことはない?」と声をかけていく。そんな国民性に変わっていけたならと切に願う。
そのためには子育て支援だけではなく、働き方も変わっていく必要があるのではないでしょうか。自分自身、心に余裕がなければ他人に穏やかに接してはいけないでしょう。何かに追われている、疲れ果てている、イライラしている・・・そんな精神状態では他人のために行動を起こそう、興味を持とうとはなれない。残業の常態化、帰宅後や休日も対応に追われる、という日本の当たり前の変革を。プライベートと仕事のアンバランスを見直す。そんなきっかけを与えてくれる一書になっています。