ぷろヴィそ

人や事物との一期一会を大切にしたいですね。性格は「気取らない黒ヒョウ」です。クラシック音楽、ミステリー、時代小説、ノンフィクションなどのコンテンツが大好き! あっ、あとお酒も・・・

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最近の記事

東京のジョージ・セル

ジョージ・セル。50~60年代に全盛期だった19世紀生まれの指揮者。昔は「冷たい」「完璧主義」などと揶揄されていたが、21世紀の現在でもその演奏は全く古びていない。SONYもマメに再発売してくれる。手兵クリーヴランド管との名盤の数々は見事なアンサンブルと緊密な造形により生命力にあふれ、説得力が強く、キリリと引き締まっている。 ところで1970年の大阪万博に因んでは、カラヤン、バーンスタイン、ブーレーズ、ヨッフム、プレートル、ロジェストヴェンスキーなど多くの巨匠が来日公演をして

    • ロンドンのトスカニーニ

      85歳のトスカニーニが1952年に英国に招かれ、当時名手揃いのフィルハーモニア管弦楽団を振った演奏会のライヴ録音。このコンサートはEMIによって録音されたが、トスカニーニがRCA専属だったためレコード化されず、お蔵入りとなっていた。2000年になってテスタメントによりやっと日の目を見たのがこのCD。 演奏は裂帛の気合とそれを完全にコントロールしきった意志の力、そして力強いカンタービレというトスカニーニ本来の魅力に加え、より自発性のあるオーケストラ独特の伸びやかさが演奏全体を支

      • カイルベルト・ザ・コレクション

        ヨーゼフ・カイルベルト。地味中の地味である。理由①カラヤンと同年同月生まれで存在が霞んだ(仲は良かった)②所属がテレフンケン(テルデック)という斜陽のレーベルだった③60歳で急死した。 しかし死後38年を経た2006年、1955年のバイロイト音楽祭でのワーグナー楽劇「リング」全曲ライヴ録音がテスタメントから突然リリースされた。その滋味溢れるステレオ録音は世界中で絶賛された(レコード・アカデミー賞大賞)。誰がお蔵入りさせたんだ(怒り)! このBOXは、60年代「質実剛健」「保守

        • 東独に殉じたヘルベルト・ケーゲル

          ヘルベルト・ケーゲル。たびたびN響を指揮。1990年、東独消滅を悲観してピストル自殺。その後1960~70年代の鋭利な強烈演奏(旧東独録音)が流出し、駅のワゴンなどで安売りされていた。そのうち某有名評論家が「猟奇的」などと書くものだから日本でカルト的人気が高まり、未だに旧録音のSACD化や放送録音の発掘が行われている。 そのケーゲルは、正確なリズムと明瞭な音色を重視する指揮者であった。楽器の音色が混ざり合ってしまうことを避け、各楽器のパートが明確に聞き取れる演奏を追求した。現

          即興のティーレマン

          ティーレマンももう65歳。ベルリン生まれ。歌劇場のカペルマイスター(楽長)出身。レパートリーはオペラがメインで独墺系ロマン派中心。ザルツブルク、バイロイト両音楽祭の常連。とくれば20世紀巨匠の再臨だ! 実際本人はフルトヴェングラーとクナパーツブッシュに私淑し、カラヤンの指導も受けたというから出来過ぎ。 このCDは本人37歳時のDGデビュー盤のひとつ。ピリオド奏法全盛時代にアゴーギク(テンポに変化をつけて演奏すること)たっぷりな演奏で切り込んで自らの個性を強く主張した。だから途

          即興のティーレマン

          幻のチェリビダッケ

          セルジュ・チェリビダッケ。敗戦後の混乱期1945年からフルトヴェングラー復帰までBPOの暫定首席指揮者の地位にあった。しかしフルトヴェングラー死後、BPOが首席に指名したのはカラヤンだった。レパートリーは広く、演奏会も数多くこなし、批評家の受けも悪くなかったのになぜ? それは彼の非妥協的で独裁的な性格にあった。しかも「オレはレコード録音は拒否する。音楽は実際の演奏会場でこそ味わえるものだ」という態度を終生崩さず、厳しいリハーサルと同業者への毒舌と相まって、アンチ・カラヤン派な

          幻のチェリビダッケ

          ハイティンク 巨匠への道

          1988年度レコード・アカデミー賞(全集)。70年代初めくらいまで「凡庸」などと評していた日本の評者が「室内楽的な純度の高さ」「聴き手の心を揺り動かすヒューマンな温もり」「ワルター以来」などと絶賛したターニングポイントとなる録音。 察するに当時ピリオド奏法による小編成の演奏が急速に台頭してきた時期であり、大編成オケながらややそれらに寄っているところが評価されたのかも。 時代の流れとは言え、演奏そのものは大変立派です。 ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦

          ハイティンク 巨匠への道

          「ワルツの革命」アーノンクール

          衒学的指揮者アーノンクールがウィーンにおける舞曲の展開を徹底的に追ったアルバム。対象は「始祖」モーツァルト、ヨハン・シュトラウスⅠ世とそのライバル、ヨーゼフ・ランナー。可能な限り自筆譜や初版譜などを使用し、作曲者が指定した楽器を用いることによって、後世の編曲で覆い隠されていた部分が明瞭になり「革命的」演奏となった。ワルツやポルカが単なる娯楽的作品ではなく、文化史的にも、音楽学的にも重要な意味合いを持つのだ。「ワルツは19世紀のヨーロッパ社会の進化を映す鏡である」(アーノンクー

          「ワルツの革命」アーノンクール

          ストコフスキー/オーケストラ・トランスクリプション

          ストコフスキー94歳時の録音。初録音は1917年(!)。レコードを通じていかにクラシック音楽の若い聴衆を増やすか。この課題に生涯挑戦し様々な大胆な試みを行った人。原曲に手を加え(自ら編曲)、オケの配置を工夫し、映画にも出演し、現代音楽を積極的に取り上げた。チェリビダッケなどとは真逆である。おかげでハイブロウな評者や聴衆からはただのショーマンシップと見下された。特にバッハなどバロック音楽などの勝手なトランスクリプションは噴飯ものだったらしい。 21世紀の現在はそうした偏見は排除

          ストコフスキー/オーケストラ・トランスクリプション

          絶好調のクラウディオ・アバド

          80年代のアバドはロンドン響、ミラノ・スカラ座管、ウィーン・フィル、シカゴ響といった世界有数のオケとの録音を多数行い、まさに絶好調であった。首席客演指揮者を務めたシカゴ響とのこの録音は、ミュンシュ盤と並んで20世紀の幻想交響曲のベスト盤であった。しかし前者が標題音楽としてのドラマ性を劇的に表現した熱血系であるのに対し、アバドは複雑多彩なオーケストレーションを誇張なく忠実かつ客観的に再現している。つまり全く異なる演奏である。後者のスタイルはその後ピリオド系の演奏に引き継がれ、現

          絶好調のクラウディオ・アバド

          マゼール&ウィーン・フィルによるラヴェル

          マゼールの演奏史はワイルド時代(50~60年代)、スッキリ時代(70~80年代)、巨匠然時代(90年代以降)に分けられる。 ラヴェルについては1981年に本場フランス国立管との録音があるが、今回は何とウィーン・フィルとの共演。VPOのラヴェル録音は非常に珍しく、ほとんど初録音ではなかったか?  注目すべきの⑤は後半から各楽器が自己主張を始め、コーダ直前ではテンポがぐっと遅くなり、結果旧盤より1分近く長い演奏となっている。フランス人のオケだったら怒り出すところだろう。 また④は

          マゼール&ウィーン・フィルによるラヴェル

          フリッツ・ライナーとシカゴ交響楽団

          フリッツ・ライナーはハプスブルク帝国の生まれだが、1922年には指揮者として渡米している。非妥協的で独裁的な性格が災いしたらしい。実力はあったので合理的な米国のオーケストラ・ビルダーとしての実績を重ね、1953年クーベリックの後任としてシカゴ交響楽団の音楽監督となった。在任わずか10年足らずだが、大レコード会社RCAの画期的な2チャンネルステレオ録音の鮮明さと相まって、このコンビは黄金時代を迎えた。YouTubeで見られるその指揮ぶりは動きが少なく、動かすのはほとんど腕だけだ

          フリッツ・ライナーとシカゴ交響楽団

          ニューヨークのブルーノ・ワルター

          大指揮者はクセのある人物がほとんどだが、このワルターは珍しく温厚で円満、勤勉家で人格者であった(女性問題除く)。1938年にドイツから米国に亡命。戦後はNYP、VPO等と多く共演したが80歳(1956年)に引退表明。その後説得されて西海岸の録音専門オケ(コロンビア響)と膨大なステレオ録音を残した。このCDはそのワルターのモノラル時代の録音。①~⑥はコロンビア響を名乗ってはいるが、ニューヨークシティでの録音なので、のちのステレオ時代のハリウッドの演奏家たちではなくNYPやNBC

          ニューヨークのブルーノ・ワルター

          ブリュッヘンと18世紀オーケストラの「第九」

          ブリュッヘンと18世紀オーケストラは、モダン楽器の団体との違いを意識し、古楽器による合奏の特色を徹底して追求しており、現代オーケストラの「均等の美学」を真っ向から否定している。そのため今までの古楽器にないシンフォニックな、迫力のある響きが生まれた。ブリュッヘン自身が「私たちは傑作しか演奏しないのです」と語っているとおり、彼らの演奏は傑作揃いである。 そのコンビが8年がかりで完結させたベートーヴェン・シリーズのラストを飾る第9作目のアルバム。 しかしこの「第九」だけはさすがに初

          ブリュッヘンと18世紀オーケストラの「第九」

          チェコのクーベリック

          チェコの巨匠クーベリックの活動歴は主に5期に分かれる。 ①チェコ・フィルの首席就任(1942~) ②西側に亡命、英国で活動(1948~) ③不遇なシカゴ響音楽監督時代(1950~1953) ④バイエルン放送響との全盛時代(1961~) ⑤ソ連崩壊後チェコ・フィルへ復帰(1990~) 1990年、クーベリックが40数年ぶりに長い旅を終えてチェコ・フィルを指揮した。この「新世界」はその翌年、再びチェコ・フィルの指揮台に立ったクーベリックによる記念碑的ライヴ録音。 ラファエル・クー

          チェコのクーベリック

          バイロイトのフルトヴェングラー

          超有名なEMI盤と同一場所、同一日時をうたう「謎の」録音。どちらがゲネプロで、どちらが本番か? 演奏はほぼ同じ(第4楽章だけはEMI盤よりやや冷静)ですが、音質はこちらのほうが少し良いと言われています。 EMI(ワーナー)盤をお持ちの方はぜひ聞き比べをオススメします。 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団 ベートーヴェン 交響曲第9番《合唱》 1951年7月29日 バイロイト祝祭劇場でのライヴ録音(モノラル)

          バイロイトのフルトヴェングラー