価値共創の営業 vol.0: 営業活動が届ける価値をサービスの観点から考える
価値共創の営業 vol.0: 営業活動が届ける価値をサービスの観点から考える
価値共創の営業 vol.1: Buyer-Sellar Relationship
価値共創の営業 vol.2: Value-based Selling
価値共創の営業 vol.3: Key Account Management
noteの説明
最初に今回のnoteの目的です。このnote(合計4本)で達成したい目的は、B2Bセールスに携わる皆さんが自分たちがお客様に届けられる価値って何だろうかと考えるきっかけとなり、それらを実現するための一つの参考図書となることです。ここで説明される内容はスキルではなくマインドであり行動様式ですので、例えば業種やプロダクトが変わっても適用できる普遍的かつ土台となるものを目指します。
私はB2Bセールスとして主に大手企業向けアカウントマネジャーを述べ11年ほど務めています。営業トレーニングとしてSPINやValue-based Selling(バリュー・ベースド・セリング)に触れてきました。前職ではモノとしての製品(後ほど説明するグッズ)を提供することが多かったですが、組織では「我々はソリューションプロバイダーであって、物売りではない」と言われて育ちました。この考え方は今でも私の根幹であり、このnoteで触れる大部分に大事なインパクトを与えています。現在はどちらかというとコンテンツビジネスで、いわゆる商用データベースを商材としています。つまりキャリアチェンジによって有形商材(グッズ)から無形商材(サービシーズ、サービスの複数形として後ほど解説)を取り扱うように変わりました。すべてのキャリアを通して大事にしていることは、お客様に価値を届ける事、お客様の価値を一緒に作り上げる事です。つまり、価値共創を目指しています。今回のnote4部作ではこの価値競争についてじっくりと調べて考えたことをまとめていきます。
多くのB2Bセールスの場面では大事にすることとして別の言葉を聞く機会が多いかと思います。例えば課題解決という言葉と皆さんはどう思いましか?課題(つまりIssue)はすべての議論の始まりであることに疑いの余地はないかと思います。そのため、B2Bセールスのプロセスではまず(インサイドセールスだろうとアカウントエグゼクティブだろうと呼び方に依らず)お客様の抱える課題を認識することが重要なステップとなっています。課題を解決することがお客様のビジネスに良いインパクトをもたらすこと、課題解決を促してお客様のビジネスをより良い方向へ導くことにフォーカスしたコミュニケーションが今主流となっているSPINやチャレンジャーセルスモデルのポイントだと理解しています。さて、課題の同定と評価に注力した結果として特にセールスファネルの初期段階にリソースを強化するザ・モデル型分業では、組織としてお客様の課題を解決する能力とそれらを届ける仕組みはCRMツールやSFAツールの発展を土台にしているいますが、さて目指すところであるお客様の課題解決とはどのような状態を指しているのでしょうか。そして課題が解決されたあとでお客様は本当にビジネスインパクトを創出できているのでしょうか。お客様にとっての課題解決に向けた重要性・興味関心と売り手側である企業のそれとでは、以下のグラフの様に全く異なる挙動をしてしていないでしょうか。
つまり課題解決とそれによるビジネスインパクトの創出において、売り手側は契約締結をゴールとし、買い手側はそれをスタートと考えるギャップです。このギャップの最小化のために、従来守りのCSと呼ばれていたCustomer Supportは攻めのCSと呼ばれるCustomer Successとしてその存在価値を再定義しています。ただし、このCustomer Successもモノ・コトのオンボーディングやユースケース拡大にのみ焦点が絞られていると、ただ守りを先回りする程度の変化にしかなりかねません。
今回、価値共創の営業というテーマでnoteをまとめてみようと考えたきっかけは以上の様な事です。その中で、改めて価値共創とは何か?価値を起点にしたセールス活動とはどんなことを実現することなのか?という部分を過去から現在までの重要な研究論文や書籍を確認することで見つめたいと思います。そこからわかったことをどのように我々が日々行う現代のB2Bセールス活動に活かせるかと考えるきっかけになればと嬉しいです。
価値共創の営業は今回のnoteをイントロとして本編3部作でまとめる予定です。まずこのnoteの中では、価値共創というキーワードの震源地であるサービスドミナントロジックについて触れながら、お客様が売り手の価値を表現する一つとして顧客ロイヤルティを醸成する顧客体験(CX, Customer Experience)を確認します。サービスは価値創出において非常に重要なキーワードであるため、営業とサービスの関係性関して比較的新しい考え方であるサービスとセールスの両利き(SSA, Service-Sales Ambidexterity)についても簡単に紹介したいと思います。
本編第一部のテーマは買い手と売り手の関係性(Buyer-Sellar Relationship)です。B2B営業の重要なポイントである顧客の購買行動について、最近いろんな情報に触れることができるようになってきました。企業とお客様の接点であり、かつ価値を共創するための越境(Boundary sppainng)を考えるにあたって、買い手と売り手の関係に関する研究を紐解くことが重要です。第二部はこの価値共創の営業において私が個人的に最重要ポイントとして位置付ける価値起点の営業(VBS, Value-based Selling)です。VBSが目指すお客様の価値とは何なのか、それを達成するためには営業パーソン(もしくは営業組織)は何をすべきなのか、理論的かつ実践的に説明できるようまとめたいです。第三部は重要顧客管理(KAM, Key Account Management)です。このパートは私の経験も踏まえて営業組織が価値提供を行うための組織としての取り組みとKAMを担当する営業パーソンに求められる能力などを確認します。
ここから本編に向けた準備段階として営業活動が届ける価値をサービスの観点から考えるという内容で進めていきたいと思います。
サービスドミナントロジックにおける価値共創の考え方
ここでは概要としてサービスドミナントロジックと価値共創の考え方について簡単に説明します。詳細な内容が気になる方は是非書籍等を手に取っていただきたいと思います。サービスドミナントロジック(S-Dロジック)はグッズドミナントロジック(G-Dロジック)との対比として説明されます。そのため、まずはG-Dロジックについて触れます。
G-Dロジックとは、古来より続くモノ(つまりグッズ)を供給することで価値を提案・提供するということを指しており、グッズにドミナント(支配)されるロジックであるという事です。ここでのグッズは有形物を指し示しますが、いわゆる無形商材を販売するという行為はG-DロジックにおいてServices(サービシィーズ、Serviceの複数形)として扱われ、つまりグッズと同様に扱われます。ここでサービシィーズは明確にサービスという言葉と異なるものと認識され、サービスはそれを行う行為(動詞)であるのに対してサービシィーズは提供される無形商材そのもの(名詞)とみなされます(ラッシュ, 2016 p.24)。この時の価値はグッズが保持していると考えられ、それを購入する消費者はグッズの持つ価値と貨幣などを交換します(交換価値)。このように、G-Dロジックの市場理解では、グッズの生産側と消費側に対立する構造であり、かつ生産側は供給者からの資源に付加価値をつけることでビジネスの利益を確保することになります。プロダクトアウトの考え方では、如何にして高付加価値な製品(モノやサービシーズ)を作り、消費者に届けることで消費者が持つリソース(この場合は貨幣と考えます)と交換するために市場の競争に打ち勝つことを目指します。価値は生産側が決めるので、いいものを作れば売れるはずであるという発想のもとに、いいものを安く作って高く売ることを目指すのです。
しかし、二つの点でこの時代は変化していきます。一つは産業の変化です。ドットコムバブルと称されるようなインターネットの発展により、消費者はモノを購入すること(例えばパソコン)は単なる手段であり、価値はそれを使用して実現できることにあると考えるようになります(使用価値、例えばインターネット検索による情報収集)。これらは明らかに、モノ自体では価値を持たないもしくは十分に発揮されないことを示すとともに、価値の判断基準が消費者側にあることを示唆しています。もう一つはテクノロジーの進化です。テクノロジーの進化によって、生産者たる企業はその製造活動が自動化されたり、サービスの提供がより効率的に行えるようになってきました。同様にして、消費者側もテクノロジーの進化によってより多くの情報を手軽に入手できるようになり、購買体験は単なるモノの比較ではなく何が実現できるかという側面にフォーカスするようになりました。わかりやすい例でiPhoneなどスマートフォンはモノの提供価値を変えました。スマートフォンは単なる電話ではなく、多くの機能を有することでそれを持つことで可能となる体験をデザインします。この場合でも価値の判断基準は消費者側にあります。
この様に価値の判断が聴視者側に移った中で、供給側である企業は何を提供できるでしょうか。S-Dロジックでは、グッズはそれそのものが価値を保有するのではなく価値を届ける装置であるとしています(Vergo, 2004)。そして、価値は企業によってグッズに持たされるのではなく、顧客と共に創造される(つまり共創される)ものであるとしています。ここでS-Dロジックの提案者であるStephen L. VargoとRobert Luschの重要論文であるEvolving to a New Dominant Logicにて説明されるS-Dロジックにおける価値の決定と意味について引用します。
オペラント資産とは知識や技能といったリソースとして説明され、企業においてはコアコンピタンスと呼ばれるものがオペラント資産に当たります。ある資源(例えば生産や販売という行為)を効果的に活用する、作用させるための働きかけです。引用文の通り、価値はオペラント資源の有益な活用の結果である使用価値として顧客が受理、決定します。この時に企業は価値提案のみが可能である、つまり価値そのものを企業が創造することはできないと説明しています。
この考え方から、S-Dロジックでは価値創造における企業の役割、すなわち価値の提案とサービスの提供は、価値共創のプロセスの仲介役であると説明されています(Vergo, 2004)。この時に価値の提供や交換は様々な資源(例えばヒト、技術、情報など)は様々なプレイヤーによって構成されたサービスシステムを形成しており、価値共創は特定の交換やサービスシステムの二者間の活動に限定されるものではないとしています(Vergo, 2008)。つまり、価値を創造する(共創する)こととはある対立構造間での価値の授受ではなく、システムの中に存在するアクター間での資源の交換(A2Aパースペクティブ)によって実現します(ラッシュ 2016 p.10)。SaaSビジネスモデルを例に挙げるとわかりやすいですが、あるツールがそれ一つで達成できる提供価値は大きくないかもしれませんが、ほかのプラットフォームとのシームレスな連携やデータ活用のためのコンサルティングサポートなどを通じて、顧客が構築する環境における価値(例えばセールステックツールによる売上創出効果)を共創することが可能です。
まとめ:サービスドミナントロジックの中では、価値は企業が提供するグッズあるいはサービシィーズではなく、コアコンピタンスによるサービス提供を通じて顧客と共創され、その価値は顧客によって受理、決定される。
サービスドミナントと顧客体験を通じた価値共創
企業が顧客に対して価値創造を行う事とはサービスシステムにおける資源の交換によって共創であり、企業はその仲介役であることを説明しました。より営業プロセスの中でこの働きを見るために、顧客体験における価値創造を確認したいと思います。つまり、企業はサービスを通じて価値共創のための提案を行いますが、それらを正しく伝えることと実際の顧客の活動の中で価値共創を実践するプロセスについては顧客体験の重要性が高いと考えるためです。顧客体験(CX, Customer Experience)は企業活動の中でも特に(企業側から見た場合)顧客の獲得から維持、離脱までに顧客自身が得られる体験を示したカスタマージャーニーを最適化することを目指しています。ここでは顧客体験の中でも顧客ロイヤルティに着目して説明したいと思います。その理由は、顧客ロイヤルティは顧客による企業への忠誠心として、価値の満足度や評価として表れるものと考えるためです。多くの場合、顧客ロイヤルティに関する議論はB2Cビジネスを対象としますが、B2Bビジネスの中で既存顧客へのサービス提供を通じた価値共創を意識しながら理解を深めたいと思います。CX3.0の提唱者であり、カスタマーサポート領域で長く研究調査実績を持つGoodmanは著書の中で「サービスはCXの一部でしかない(グッドマン, 2016 p. 15)」としています。著書では主にカスタマーサポートに関連する顧客コミュニケーションとCX改善による顧客ロイヤルティの向上などを中心に説明していますが、重要なことは顧客から企業への意見(VoC, Voice of Customer)が取り込めるCXデザインを行うことで企業と顧客の相互作用による価値提案を実現に導き、顧客が受け取った価値の表現として良い口コミ(word-of-mouth)や再購入という形での機会になっている事です。あとで触れるように、Goodmanの調査から実際に困りごとや苦情が発生しても企業に問い合わせる顧客はせいぜい全体の5%程度で、ほかの顧客は不満があったときに静かに離れていく(すなわちサイレントカスタマー、グッドマン, 2016 p. 96)。サービスドミナントロジックの観点と照らし合わせると、売り手は買い手に価値提案をしたものの価値共創プロセスを放棄している状態とみることができる。すでに説明している通り、価値は企業と顧客の相互作用によって共創されるため、そのプロセスを進めるための両者の関係性は非常に重要であることを理解すれば、最適なCXのデザインはこの相互作用を活性化することで価値共創を促進することに繋がることがわかる。
Adrian Payneらは、顧客価値共創プロセスとして顧客側にあるCo-creation & Brand Relationship Experienceとサプライヤー側にあるCo-creation & Brand Relationship Experience Design、その間にEncountersがあると説明しています(Adrian, 2009)。前者は消費者行動の2つの視点として情報処理視点と経験的視点が考慮する必要があると述べています。顧客の経験は共創プロセスへの顧客の参加を促すために重要であると示しており、サービス提供を通じた顧客体験が価値共創プロセスにおいてキーポイントになることが理解できます。
一方でサプライヤーは価値共創機会と代替提案の検討から始めることになります。つまりサービスドミナントの論理では、顧客の価値創造プロセスから出発し、その中でサプライヤーがどのプロセスをサポートする能力があり、顧客がそのサポートを希望するのかを特定することを提案しています(Adrian, 2009)。両者が出会う事により相互作用することで価値の共創プロセスが始まることになります。B2Bビジネスにおいても、製品やサービスによる顧客価値の共創プロセスは、サプライヤーである企業が適切に顧客体験をデザインすることで相互作用が開始され、システム間でのリソースの交換(技術的な提案、サポート、ユースケースの価値検証、経験による新たな視点の追加など)によって顧客価値を作り上げていくものと考えることができます。それを実施するためのCX Designとはどのようにできるでしょうか、興味のある方は原著をぜひご確認願います。
Ingo O.Karpenらの研究では、S-DロジックをS-Dオリエンテーションという形で実証的に示すことを試みている(Ingo, 2015)。この研究の中で筆者はS-Dロジックが価値共創に直接関与する構成要素は少ない(相互作用対応能力と顧客エンパワーメント)ことに対して、S-Dオリエンテーションでは6つの構成要素が総合的な相互作用と価値共創のアプローチを表しており、相互作用能力の開発を通じて顧客がより賢くなることを支援することの重要性を概説し、それを含めている。
ここで述べられる通り、S-Dオリエンテーションとはサービスシステム内の個々のアクターとの互恵的な相互作用と資源統合プロセスを促進し、強化する組織の能力であり、つまりはB2Bビジネスにおいても担当者レベルではなく組織として顧客体験コンテクストでの顧客との接地面積を確保し、かつその境界領域での価値ある相互作用を促進させる働きによって価値共創プロセスがより強固なものとなると考えられる。
ここまでに見たS-Dロジックとそれを実践的に適用する試みであるS-Dオリエンテーションの研究はいずれも顧客との相互作用を通じた価値共創プロセスの促進を提示しており、このことは企業の顧客体験強化が価値共創機会の提供と顧客参加(エンパワーメントや経験の蓄積)をサポートし、その結果として顧客ロイヤルティあるいは企業のブランディングという価値の評価につながることを理解させてくれます。B2Bセールスにおいて営業パーソンは1)自身が積極的に多くの顧客レイヤーとつながり、2)自社の関係組織やメンバーを顧客活動に参加させ、3)顧客体験を通じたインタラクションと顧客教育による経験の増加を促すことで、自身の価値提案を共創レベルに引き上げることができるのではないかと考えます。これは新規案件のセールスプロセスにおいても既存案件のアカウントマネジメントにおいても有効な考え方です。
サービスとセールスの両利きが目指す価値共創の在り方
(両利きというと、両利きの経営が思い浮かぶ方も多いかもしれません。両利きの経営では探索と深化という2つの異なる企業活動を通して企業の成長機会を創出しています。セールスの両利きとしても同じように新規顧客と既存顧客を取り上げた論文がいくつか報告されています(例えばEdwin J. Nissen, 2017))
ここまでにサービスドミナントロジック(もしくはオリエンテーション)と価値共創に強い関係性があることを理解しましたが、B2Bセールス活動においても顧客体験を通じたサービス志向が重要であると考えたとき、B2Bセールス担当者は日々のセールス活動の中にサービス活動を取り込む事はできるのだろうか。例えば既存顧客における製品やサービスの利用においてトラブルが発生し、それに適切に対処するころで顧客満足がより一層に高まることは理解できます。Goodmanはすべての顧客のうち96%は不満があってもそれを企業に伝えることはないが、ひとたび伝えたことが迅速に解決された顧客は不満を申し立てなかった顧客よりも60~70%も再購入の可能性が高くなるとことを調査結果より報告しています(グッドマン第一の法則、伊藤, 2017)。つまり、B2Bセールスに関わる担当者にとってセールス活動とサービス活動は切り離すことが出来ず、かつサービスの充実により顧客の離脱防止だけではなく新たな販売機会の創出にもつながると言えます。このサービス活動をB2Bセールス実務上に取り込むことで、顧客との価値共創機会の提供と顧客のより積極的な参加を促進し、結果として価値共創に向けた相互作用が強化され、セールス成果(例えば売上)が高まることが予測されます。
*営業パーソンが個人としてサービスとセールスを両立するのではなく、それぞれを分けた場合がザ・モデル型分業制におけるCustomer Suceessの存在価値になると考えることができます。
Ting Yuらの研究はサービスとセールスの両利き(SSA, Service―Sales Ambidexterity)と企業の財務的パフォーマンスにポジティブな関係性があることを初めて示しました(Ting, 2012)。サービスとセールスの組織レベルでの両立は一般的には難しく、サービス提供はコストセンターとして扱われていましたが、サービスとセールスを両立させることでサービスが新たな追加的セールス機会を創出し、財務パフォーマンスを改善することでプロフィットセンターをなることを説明しています。そして、組織レベル(この論文ではBlanchという言葉を用いて少し小さい規模での会社組織をユニットとして扱っていますが、それはつまりフロントラインで顧客に近い組織体であることを強調しています)での両利きを有効にするためにはエンパワーメントと変革のリーダーシップが必要でこれらがグループに共有されることでサービスとセールスの両利きは触媒されるとしています。
Keo MonySokらの研究でも同様にサービスとセールスの両利きについて言及しており、特に営業担当者の活動における両者の行動要求とリソースの配分についてクロスセル・アップセル機会の創出を題材に報告しています(Keo MonySok, 2016)。
この見解は私の中でとても重要なことを示しています。つまりセールス活動における営業パーソンのサービス提供は、単なる製品やサービスの価値提案と比較してもより相互的な関係性を構築し、顧客課題を自分事として捉えることを促進し、かつ顧客も営業担当者を通じた企業のサポートから学習や経験を積むことで既存の提供サービスもしくは新規提案を通じた価値共創が実現しやすくなります。
このnoteでは価値共創の営業を読み進めるための導入としてサービスドミナントロジックにおける価値共創、サービスドミナントと顧客体験の関連、サービスとセールスの両利きを取り上げて説明しました。この後の具体的な考察に向けて営業活動が目指すべく価値共創の姿が少しでもイメージできるようになっていただけたら幸いです。
参考文献
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Karpen, I. O., Bove, L. L., Lukas, B. A., & Zyphur, M. J. (2015). Service-dominant orientation: Measurement and impact on performance outcomes. Journal of Retailing, 91(1), 89-108. doi:10.1016/j.jretai.2014.10.002
CSを超える顧客ロイヤルティ : 顧客ロイヤルティの教科書CSを基本から学びたいあなたへ 伊藤 秀典 (著), タカギ ユウコ (著) ISBN: 978-4-899-90338-3
Yu, T., Patterson, P. G., & de Ruyter, K. (2013). Achieving service-sales ambidexterity. Journal of Service Research, 16(1), 52-66. doi:10.1177/1094670512453878
Sok, K. M., Sok, P., & De Luca, L. M. (2016). The effect of 'can do' and 'reason to' motivations on service-sales ambidexterity. Industrial Marketing Management, 55, 144-155. doi:10.1016/j.indmarman.2015.09.001
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