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歴史学習の志向
歴史学習のヒントでは歴史学習の陥りがちな誤謬を紹介した。
続いて実感した歴史の誤謬についてである。
まず歴史的観光名所に行った際の感じ方の問題である。
歴史的とされる建造物がある事はきわめて大きい。空間に入る事で時間性を凌駕したり共有する感覚が生まれるからだ。この感覚が諸国民を創造する際に利用された事は言うまでもないだろう。
ただしその伝統的建造物が遥か昔から存在している保証はない。現代の金閣寺は1397年(応永4年)に建立されたものではない。
1955年(昭和30年)に復元されたのが現代の金閣寺でありかといって2025年(令和7年)に観る金閣寺がその頃の金閣寺の面影だという証拠は何もない。定期的に解体修理が行われているからだ。
すなわち「この建物は歴史がある」「この文化は歴史がある」という表現はあまり正しくはないのである。だから歴史的遺産は不要という事ではなくきわめて重要ではある。ただ概ねモチーフである。
「歴史がある」という感覚はきわめて間違いを孕んでいるという事だ。それを自覚しながら観光名所を観る必要があるだろう。
古代ギリシャや古代ローマや京都の歴史的建造物はここ最近再構築されたものが多いと考えるのが自然である。
続いて歴史題材とした映画やドラマについてである。
きわめてマイルドに云えば製作者の志向が必ず入るしきわめてハードに云えばプロパガンダに使われ続けているものだ。
ドイツのレニ・リーフェンシュタールの『オリンピア』は明らかなプロパガンダではある。しかしそもそも映画やドラマというのはそういうものであり製作者の意図がなくても志向が固定されるものだ。
それがエンタメという大義名分を掲げれば視聴者が思考停止状態に陥ってもかまわないスタンスをとるのが映画やドラマというものの本質である。
統一教会に勧誘された人々が真っ先に連れていかれるのはビデオセンターである。まずはそこで映像学習をする。直接のセミナー受講はその後だ。それだけ映像型のドラマツルギーは強力な効果がある。
大半のアメリカ人が陰謀論に嵌るのは陰謀論のテイストがハリウッド映画とテイストが類似しているからである。ゆえに映画やドラマ好きは無自覚なうちに陰謀論者になるのである。
歴史を題材とした映画やドラマを観る場合はそれが100%真実ではなく必ず製作者の志向が孕むという事を観る必要がある。すなわち映像やストーリーを観るのではなく志向を観るのである。
歴史的建造物はモチーフを継承する意味では歴史的であるが
現存の歴史的建造物が遥か昔から存在している確証はない。
つい最近建造されたものかもしれない。
映像化した歴史的ドラマツルギーは信憑性が低いものだ。後年の製作者の志向や政府や広告代理店のプロパガンダが必ず孕むものだ
コマーシャルやストーリーや陰謀論をそのまま信じるのではなくその映像を流すことによって「視聴者をどういう方向に誘いたいのか」その意図を読み解く力こそが歴史的リテラシーである。
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