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創作ノート

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フィクションの創作物をまとめてます。
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#創作

ハーメルン【16】

ハーメルン【16】

『多発する主婦の行方不明、ハーメルン冷蔵庫と関係?!』
『冷蔵庫から催眠波?拉致の可能性も』

SNSや動画サイトで噂は瞬く間に広まった。
僕らの教室でも休み時間になると話題にあがる。
「ねぇ、きみんちの冷蔵庫ってハーメルン?あれ、ヤバいって聞いた?」
「ビリーもハーメルンの仲間なんでしょ?」
「ビリーはたまたまCMに出てるだけなんじゃないの?」
いろんな憶測も流れる。

毎日、何度も流れていたハ

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ハーメルン【14】

ハーメルン【14】

ノリちゃんの笑顔につられて、みんな顔を見合わせて笑顔になった。
「そうだ、ママ!!」
僕は、ママが眠っていることをすっかり忘れていた。
急いで居間に向かう。あんなに僕らが大きな音をたてたり、叫んだりしてたのに、ママは最初に横になった時のまま、同じ姿勢で眠っていた。
不安になった僕はママの肩に手を置くと、そうっと揺らした。
その瞬間、催眠がとけたように、ぱっちりと目が開く。そして、あわてて起き上がっ

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ハーメルン【13】

ハーメルン【13】

「ドア、反対側から開けてみる。」
イズミちゃんの体を、またみんなでしっかり掴んだ。イズミちゃんは冷蔵庫のドアの取手が付いていないほうに両手を掛けると、グイッと引っ張った。けれど、ドアが開く気配は無くて、冷蔵庫ごと、ズズッと1、2センチ前に引き摺られた。
イズミちゃんは首をかしげて、今度はいつもの方からドアをを開く。
「シャラーン…」
気の抜けたようにあの音が鳴り響いた。そこにはヨーグルトや牛乳や納

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ハーメルン【12】

ハーメルン【12】

そうだ!
僕は、この前の図工の授業で使った金槌を思い出した。クロゼットの奥にしまってあった工具箱の中から探し出してくる。
冷蔵庫の正面に立つとドアの真ん中を睨みつけた。ボールペンの先くらいの穴がいくつか集っている。
あそこから、あの音が聞こえるのか…。
両手で柄を握って金槌を見つめる。釘を打つところが、平べったくなってる方と尖ってる方…。
よし。僕は大きく息を吸い込んだ。くちびるをぎゅっと結ぶと、

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ハーメルン【11】

ハーメルン【11】

「ママっっ!」
悲鳴のような声が出た。ママの腰に飛びつくと冷蔵庫から思いっ切り引き剥がす。
僕に全く気付いてなかったママはあっけなく床に崩れ落ちて、勢い余った僕はしたたかにお尻を床に打ち付けた。
いつもなら涙ぐむくらい痛いはずなのに、全く痛みも感じなかった。それどころじゃない。ママの視線はまだ真っ直ぐ冷蔵庫に向かったままだ。
あわてて立ち上がり、今度は真っ正面から首にかじり付いた。
「ママ、ダメっ

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ハーメルン【10】

ハーメルン【10】

「さてと、私はアイロン掛けしなきゃならないから行くわね。みんな、ごゆっくり。」
そう言うとイズミちゃんのママはトレイを持っていない方の手をひらひら振って戻って行った。
「イズミちゃんのママって、たよりになるよね。」
ノリちゃんとコウくんもうんうんと頷く。イズミちゃんは満更でもなさそうな顔で肩をすくめた。
「じゃ、私達もできるだけ沢山の人に噂をひろめなくっちゃ。お兄ちゃんにもSNSで拡散してってたの

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枯れ専上等!!

枯れ専上等!!

〈※これはフィクションです。
  【2000字のドラマ】参加の為に書いてみ ました。
    初心者ゆえ、ちょこちょこ加筆修正してます。〉

最近、うちの母がアツい。

いや、元々暑苦しい人ではあった。
デカい声で怒り散らすし、ドラマや映画を観るとブンブン鼻をかみながら泣くし、大声で踊りながら歌う。踊ると言うよりジタバタしているという方が的確か…。

私が中学2年生になった時、
母は「お母さんの今

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プロの失恋

これはフィクションです。
#ショートショートnote杯  へ参加のため書いてみました。

僕は失恋のプロだ。
なんてったって百発百中だ。
これまで散々、告白しては振られ続けてきた。
だから、ちょっとやそっとの失恋なんて、蚊に刺されたくらいのものだ。
失恋なんてプロである僕にとっては日常茶飯事。
そして、僕はプロとして新たな失恋へ向かう為、今日もあの子に告白する。

「やっぱり君が好きだ!諦めきれな

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半笑いの冷蔵庫

半笑いの冷蔵庫

ママが消えた。
スマホも財布もそのまま。
思い当たる所はすべて探したけど行方は分からない。
警察に捜索願も出した。
パパは家政婦を雇ったから、生活に何の支障もなかった。
ママの行方は何の音沙汰もない。
お爺ちゃんとお婆ちゃんが来て、泣きながら謝った。
「子供達を残して…。一体どこに?本当にごめんなさい。」
パパは言った。
「そんなに謝らないで下さい。」
お爺ちゃんとお婆ちゃんは帰り際、冷蔵庫を見て

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違法の冷蔵庫

違法の冷蔵庫

これはフィクションです。
#ショートショートnote杯  参加の為書きました。

警察が冷蔵庫とママを連れてった。
優しそうな警察官は「大丈夫、すぐママは帰って来るよ」と言い、ママは僕に頷いた。

僕の国はアイドルを取り締まり始めた。
ママの大好きなアイドルは中性的だから違法。
冷蔵庫に貼ってあるステッカーや写真、
冷蔵庫の中に隠したグッズが当局にバレたんだ。

パパとお婆ちゃんが駆け付けてくれた

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宇宙金魚

宇宙金魚

ある日、
睡蓮鉢のメダカ達の中に僕を発見した巨人は、僕をぽっちゃりしたメダカと呼んだ。

失礼な!

しばらくすると、タマゴ詰まりをおこしてるメダカだと心配した。

余計なお世話だ。

またしばらくすると、他のメダカより色が濃い。口がぱくぱくしてる。キンギョ?!と騒ぎ始めた。
 
いちいち、うるさい。

そして、ジッカのキンギョ達のホテイアオイをもらって来たとき卵が付いてたんだ〜と言って、僕をキン

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『ドリームキャッチャー』〈1〉

『ドリームキャッチャー』〈1〉

【六月三日】
「ねぇ、明晰夢って知ってる?」
 同僚たちと飲んで帰宅した僕は妻の背中に上機嫌で話し掛けた。飲むより食べるほうが好きだから、ほとんど酔ってない。
「めいせきむー?」
 妻は振り向きもせずに答える。熱心に磨いている鍋は、もうピカピカだ。
「『これは夢だ。』って、自分で認識している夢のことさ。夢の中で思い通り、好きなことができるんだ。自由に夢を操れるんだよ。」
「へー…。」
 意味が分か

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『ドリームキャッチャー』〈2〉

『ドリームキャッチャー』〈2〉

【六月四日】
「おはよう。どう?夕べはドリームキャッチャー、ちゃんと使えた?」
 すっかり朝食が準備されたテーブルの前に着きながら妻にたずねる。妻はいつもより生き生きしているように見えた。
「ちょっと難しかったんだけど、簡単な設定はできたの。今日は行きたい場所とか、お店なんかをリサーチしてみようと思ってるわ。」
 弾んだ声に一気に気分が萎えた。
 なんだ、ちゃんと使えたのか…。
 それ以上は、もう

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『ドリームキャッチャー』〈3〉

『ドリームキャッチャー』〈3〉

【六月六日】
 ドリームキャッチャーは僕の妻以外にも研究員家族の数人が使っていた。一週間様子を見たら、すべて回収することになっている。
 研究室の扉を開く。今朝はやけにざわついていた。
「え、井上室長の息子さん?それマズイでしょ。」
「西京大学専門の予備校に通ってるっていう?」
「そうそう。ドリームキャッチャーでも勉強してて。てっきり受験勉強だと思ってたら、西京大学の講義を受けてたんだって。受験勉

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