プロの失恋
これはフィクションです。
#ショートショートnote杯 へ参加のため書いてみました。
僕は失恋のプロだ。
なんてったって百発百中だ。
これまで散々、告白しては振られ続けてきた。
だから、ちょっとやそっとの失恋なんて、蚊に刺されたくらいのものだ。
失恋なんてプロである僕にとっては日常茶飯事。
そして、僕はプロとして新たな失恋へ向かう為、今日もあの子に告白する。
「やっぱり君が好きだ!諦めきれない!」
「実は…私も、好き。」
え?!
そんな…僕が受け入れられるなんて。これじゃもう、プロ失恋家じゃない。
でも、でも、憧れの彼女と付き合えるなら、プロなんか捨ててもいい!
彼女と一緒に過ごす時間は幸せだった。
が、ある日彼女は言った。
好きな人ができたの。ごめんなさい。
去っていく彼女を涙で見送る。
僕は失恋のプロだ。これくらい蚊に刺されたようなもの…
違う。
鋭利な刃物で切り裂かれたようだった。
苦しくて、辛くて夜も眠れない。
初めて知った痛み。
これまでの僕の失恋はアマチュアだった。
今日、僕はプロの失恋を知った。