【連載】ディズニーランド紀行 〜『創造の狂気』・Uボート・メタボリズム | 3/4 スペースマウンテンとウォルト・ディズニーの科学信仰
東京ディズニーランドのフィールドワーク的紀行の第3回です。
ぼくは、ウォルト・ディズニーをファンタジーや御伽噺の人ではなく、科学志向(または信仰)の強い人物だったと捉えています。テクノロジーで人心を掴もうとした人物です。スペースマウンテンで、なんとなくその解釈を強めた風景があったのでご紹介します。
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スペースマウンテンの建物内、ちょうど乗り場がある空間には巨大な宇宙船が設置されています。
※ロサンゼルスやフロリダのスペースマウンテンも同様の構図であることをあらかじめ断っておきます。
スペースマウンテンはこんなストーリーのアトラクションです(Wikipediaより)。
スペース・ポート(宇宙港)に到着した最新型の宇宙船から発せられる未知のエネルギーを受け取り、宇宙飛行士(ゲスト)の乗った小型ロケットは宇宙飛行に出発する。
写真中央がその宇宙船で、その真下に小型ロケット(コースター)があるというレイアウトです。宇宙船の力を受け、ゲスト(地球人)が宇宙飛行へと出発する。そんなストーリーです。
この宇宙船、というかそれを中心とする建物内の配置がどこかで見たことあるなぁと思ってたのですが、既視感の正体がわかりました。
米国・シカゴにある科学産業博物館(MSI; Museum of Science and Industry)はご存知でしょうか?まあ名前の通りの施設なんですけども。ここの目玉展示の一つに、第二次世界大戦下で使用されたドイツ海軍の潜水艦(Uボート)があります。一隻の状態で保管されているのは世界でも稀なため、これを目当てにシカゴへ赴く観光客もいます(ぼくもその一人)。
そのUボートの写真がこれなんですけども。(こじつけですが、)スペースマウンテンの宇宙船の配置そっくりなんです。巨大なホールの真ん中に船があり、スロープを降りながら船を周りから観察することができるレイアウトが同じです。
このUボート、第二次世界大戦の戦いの結末に非常に強く貢献"させられた"一隻でして。そもそもなぜシカゴにこのような丸々一隻の形で存在しているかというと、連合軍がドイツの暗号・エニグマを解読するためにその暗号変換装置を載せたUボートを鹵獲したからなんですね。エニグマは連合軍からすれば未知なるコード、技術といってもよいでしょう。それを載せたUボートは、連合軍、アメリカにとっては勝利をもたらした特別な存在です。
現在の展示は2005年からとられた展示方法にはなりますが、なんでしょう、ありがたい何かを祀りつつ知的探究をせざるを得ないような、そんな展示レイアウトのように思えます。同時に、敵国ドイツは強敵だったしその力も凄まじかったけど、それを攻略して今こうして展示できているアメリカはもっとすごいぞ、という思いも感じます。
スペースマウンテンの宇宙船も同じような感情を喚起させられるのです。なぜそのような"展示"方法をとるのか(こじつけですが深掘りして考えていきます)。
一つは来場客の知的好奇心を煽るため。もう一つは、未知のものを知った気になったうえで、それを主体的に遊ぶことの偉大さを感じるためかと。宇宙船から受け取るパワーを利用して新境地へ臨むというストーリーですが、力の泉源を崇めつつ人間の科学の力を信じるというのがテーマの一つなのではないかと思います。
その根元には、ウォルト・ディズニーの科学信仰があるのではないかと。生命の創造(模倣)する技術であるアニマトロニクスを駆使して、「進歩のメリーゴーラウンド」を作ったような人物ですから『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』519ページ)。
「進歩のメリーゴーラウンド」(Walt Disney's Carousel of Progress)については以下の概要をご覧ください(Wikipedia)。
このアトラクションは中央のステージの周りに観客席があり、シーンに合わせて観客席がステージの周りを回る仕組みになっている。ステージは6つのシーンに分けられており、20世紀のそれぞれの時代の生活の様子がオーディオ・アニマトロニクスによって表現されている。
科学技術の進歩や生活の変化の模様、それらを再現したアニマトロニクスの技術そのものを中央に据え、観客に“拝ませる”という構図をこのアトラクションでも採用しています。というより、ここから思想が確立されたのかもしれません。
そうした思想が科学信仰者たちの根底で繋がっているためか、スペースマウンテンのストーリーとシカゴのUボートの展示の構図が似ているのかもしれません。
4/4へつづく
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