号泣させるS・ダルドリー監督にご用心! (2回目のリトル・ダンサー。ネタバレあり) その2
だいたい。
男は男らしく、が当然の時代にバレエに興味を持ったビリー。父親が認めるわけがない。
「男らしくボクシングをやってりゃいいんだ!」
みたいな暴言を吐いたりもする。
そもそも父親は、それどころではない。
炭鉱が時代遅れとなりつつあり、賃金も低いので組合員として大規模なストの真っ最中なのだ。
ここで勝ち抜かないと、収入に他大な影響が出る。年の離れたビリーの兄、トニーもすでに炭鉱で働いている。
中にはあきらめたのか日和ったのか「スト破り」と言われる体制側につく仲間もいて、そういう男たちのことを、父親とトニーは激しく非難している。
「え! ここでこの曲?」
びっくりした。
オープニングから数曲は、T・REXの曲が流れていたけれど、組合員と警察が乱闘を繰り返すシーンは、THE CLASHの「ロンドンコーリング」だった。
ハマりすぎるほどにぴったりの選曲。THE CLASHが大好きなくせして、そのことも忘れていた私だった。
ビリーは、踊っている時は何もかも忘れることができる。お母さんを亡くした悲しみも、踊れば少しは和らげられるのだろう。あくまでも、ほんの少しだとは思うけれど。
おそらく病死だった母親は、20歳になったら読むように、とビリーに手紙を渡していたのだけれど、11歳の時点でもう読んでしまっている。
しかも。
一字一句暗記している。ここがもう、涙腺崩壊のシーン。
「いつも一緒にいるから」
という愛に満ちた文面だけれど、母親がこの世にいない事実はどうやっても覆すことはできない。
バレエの先生に手紙を見せつつ、彼女の音読に合わせビリーが口ずさむメロディのような母の文章。その調子は、美しくもあるけれど、やけにもの悲しくもある。
先生は、ビリーの才能に気づき、ロンドンのロイヤルバレエスクールに行くことを勧める。
始めは反対していた父親も、ビリーが踊る姿を見て、ようやくその類稀な才に驚くのだ。
ロンドンに行かせてやりたい。
でも、先立つものが・・・。
そこで父親は、なんと「スト破り」をしてしまう。
ここも涙なしでは、観られない。
トニーに、
「裏切者!」
と罵られても、
「ビリーには未来があるんだ。こんな炭鉱町でくすぶってちゃいけない!」
と叫ぶ。