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発酵ラボ 第13回〈ロースト麹〉
麹研究の三回目です。
前回、麹は糖とアミノ酸を含んでいるという点に触れました。初回に引用したnomaの発酵ガイドという本にはローストした麦麹が紹介されていますが、メイラード反応が糖とアミノ酸による反応なので、理にかなっています。麦麹を自作するのはなかなか大変ですが、乾燥米麹を使えば「麹を焼くとどうなるか」は体験できるはず。
麹 100g
水 100g
生クリーム 100ml(35%乳脂
発酵ラボ 第11回 〈乾燥麹を極める─甘酒と甘酒ファッジ〉
麹といえば甘いという印象があります。前回、乾燥麹を煮出して、味を確かめました。意外とサラッとして、みそ汁の上澄みのような風味を感じたはずです。ベジタリアン用のストックにしたり、鶏出汁の風味ブーストに使ったりと応用範囲の広い液体でした。麹ストックはうっすらとした甘みはあったものの甘い液体ではありません。麹=甘いというイメージにはデンプンの糖化が関係しています。というわけで今日は甘酒の話。
前回、プ
発酵ラボ 第10回 〈乾燥麹を極める─麹出汁(ストック)─〉
デイビットジルバーは著書のなかでこう表現していますが、麹はまさに神秘のツール。魔法のように食材の風味を変えます。まずは教科書に載っているようなところから復習しておきましょう。
麹菌は乳酸菌や酢酸菌、納豆菌などと並ぶ代表的な発酵菌の一つで、穀物につくカビで、アスペルギルス (Aspergillus) 属に分類されます。その特徴は酵素enzymeというタンパク質で、デンプンを単糖に分解するアミラーゼ
〈ノンアルコール研究〉発酵ラボ(番外編)インスタントコンブチャの作り方
ぽつぽつと書いている発酵ラボのシリーズで、コンブチャを解説しました。
コンブチャで活躍する微生物は主に酵母と酢酸菌です。酵母によって独特の風味が出てくるのがコンブチャの特性ではありますが、大事なのは酢酸菌の働きで、出来上がった液体は結局、お酢の一種ではあります。コンブチャをつくるのは楽しい行為ですが、時間がかかったり、雑菌の混入のリスクがあったりと自分で飲むならいざしらず、人に飲ませるのはちょっ
発酵ラボ〜第9回 牛肉のガルム
発酵ラボ、前回はイカのガルムをご紹介しました。
今回は「牛肉のガルム」。開発したのはnomaのトーマスフレーベル氏。(一時期、日本のInua(KADOKAWAのレストラン)のシェフとして日本に滞在していましたが、現在はコペンハーゲンに戻り、nomaでプロダクトを担当しているようです)当時のnomaの看板的な調味料になりましたが、魚ではなく牛肉で作ったガルムはセンセーショナルだったようです。
と
発酵ラボ〜第8回 イカのガルム
発酵ラボの第8回。テーマは「ガルム」です。
ガルムは魚醤のことで、歴史はローマ時代に遡ります。ところが歴史が下ると次第に使われなくなります。もちろん、アンチョビという形で残っていますが、液体状の調味料としてレシピには使われなくなりつつありました。味や風味が強いので使いづらかったのかもしれません。
最近、注目されているのがこのガルム。イタリアでは家庭レベルで手作りしていたらしく、商品として復活さ
調理テクニック紹介〈黒フルーツと黒ベジタブル〉
世界中で流行った食材といえば一昔前は柚子、そして黒にんにくでしょう。
(おすすめ黒にんにくのリンクを貼っておきます。株式会社元気は日本で最初に黒にんにくを製造した企業です)
日本生まれの黒にんにくは今や世界中のレストランで使われています。洞爺にあったミシェルブラスのシェフ、シモーネ・カンタフィオさんは講習会で「自分は流行っているからといって黒にんにくは使わない」と言っていましたが、それだけ流行
発酵ラボ〜第7回 バラのハーブティーのコンブチャ
前回はリンゴのコンブチャでしたが、今回はハーブティーのコンブチャです。
コンブチャは紅茶キノコと呼ばれていたくらいで、実際はこちらの方がスタンダードな作り方。
グラニュー糖 80g
水 600cc
バラ 10g
ハイビスカス 2g
スコビー 100g
りんごジュースの場合は餌となる糖分が入っていたので、そのまま使いましたがお茶の場合は砂糖を足す必要があります。目安は重量比で1
発酵ラボ〜第6回 リンゴのコンブチャ
前回までは乳酸発酵を取り上げましたが、今回は〈コンブチャ〉について解説します。コンブチャと言っても、昆布茶ではなく、KOMBUCHAという発酵ドリンクです。
昆布茶とコンブチャ。ややこしいのですが、このコンブチャの方は日本で昔「紅茶キノコ」という健康ドリンクとして流行った飲み物です。
コンブチャ自体はその以前から存在してましたが、1974年に発売された『紅茶きのこ健康法』という本がベストセラー
発酵ラボ〜第5回 乳酸発酵の基本 乳酸発酵ブルーベリー〜
第3回で乳酸発酵を料理に取り入れるポイントを「甘みを減らし、酸味を増やす」と書きました。今回の乳酸発酵ブルーベリーはその典型的な応用例。フルーツの甘みを酸味に変えることで複雑な味にします。
このブルーベリーの乳酸発酵。blueberry lacto ferment とグーグルで検索するとやたらとレシピが出てきます。NYTIMESの『レネ・レゼピのようにブルーベリーを発酵させるには?』という記事の
発酵ラボ〜第4回 乳酸発酵の基本 ザワークラウト〜
乳酸発酵シリーズ、続きます。前回はトマトを乳酸発酵させましたが、今回は王道の乳酸発酵キャベツ=ザワークラウトです。なんでザワークラウトをはじめに紹介しなかったのか、というとテクニック的にトマトよりも難易度が少し高いから。
乳酸発酵は「酸素を遮断すること」が基本だと述べましたが、キャベツは水分量がトマトほど多くないので、若干の注意が必要です。
キャベツ、半玉を使いました。500g程度です。ザワー
発酵ラボ〜第3回 乳酸発酵の基本 トマトの乳酸発酵〜
乳酸発酵は料理に一番、取り入れやすい発酵テクニック。ザワークラウトや乳酸発酵ピクルス、サワー種のパン、ヨーグルト、ワインやチーズ、みそ作り(にも一応関係しています)などお馴染みの食品にも使われています。
一口に乳酸菌といってもその種類は様々。そもそも乳酸菌とは特定の菌類を指す単語ではなく「糖類から乳酸を産生し、悪臭の原因となる腐敗物質をつくらないもの」という性質を持つ菌類を指します。
伝統的な
発酵ラボ〜第2回 安全性について〜
発酵の話でも避けて通れないのは料理と同じ「安全性」の話です。発酵微生物について学ぶのと同じくらい病原性バクテリアやカビについてもあらかじめ知っておく必要があります。知識さえあれば発酵は(他の料理と同じく)恐れるものではありません。なにせ人類は今のような近代的な知見が蓄積される前から発酵食を食べてきたわけですから。
安全性について考えると発酵以前の話として、食品のリスクを知る必要があります。WHO
発酵ラボ 〜まずは基礎知識〜
ここ数年「発酵」という料理法が一般のレストランにも定着し、料理に自家製の発酵食品を取り入れるシェフたちが増えました。とはいえ発酵はもともと伝統的なもの、ぼく個人としては日本の発酵食品──みそや醤油、納豆──などを取材してきた経緯もあり、流行としての〈発酵〉にはあまり興味がありませんでした。
伝統食品とは関係なく新しい調理法の一つとしての発酵が注目されだしたのは2010年代以降のこと。世界ベストレ