自分らしく生きられる子どもを育てるには5つの欲求をサポートする【育児哲学#26】
「子どもには生き生きとした人生を歩んでほしい」と考えるのは、すべての親の願いでしょう。自らの力で生きたいように生きるためには、”自己実現”できる人になることが必要。
ビジネスでも使われる「マズローの欲求5段階説(自己実現論)」は、子育てにも活用でき、親として正しく子どもをサポートすることができます。
「マズローの欲求5段階説」は教員試験でも問題としてよく出されており、学校教育にも活用されています。
すべての欲求がみたされ「自己実現」ができた子どもは、親の欲求もかなえたいと考える子に育ちます。「哲学」と合わせ、子どもの「自己実現」へ向けたサポートができる「マズローの欲求5段階説」について、詳しくご説明します。
【哲学】
欲求を作り出すのは、習慣である。
◆フランスの哲学者 アラン『幸福論』引用
毎日甘いものを食べている人は、習慣的に、甘いものが食べたいという欲求が湧きやすい。人にちやほやされ慣れている人は、ちょっとしたことで人にちやほやされたいという欲求が湧いてくる。欲求というのは、習慣として根づいたものから生まれる。欲求を断ち切るには、まず習慣を断ち切るための努力が必要だ。
良くも悪くも「欲求」とは「習慣」から生まれてきます。次の「マズローの欲求5段階説」にも必要な「習慣」と不必要な「習慣」があります。子どもの「欲求」を親は「習慣」にてコントロールしましょう。
「マズローの欲求5段階説(自己実現論)」とは
下の欲求から順に見ていきましょう。
1.生理的欲求
食事・睡眠・排泄などの命に関わる生理的欲求です。まずはこの基盤の安定が子どもの成長の大前提になることは言うまでもありません。「お腹が空いた」「眠い」「オシッコしたい」です。
2.安全欲求
安心、安全な暮らしに対する欲求です。健康であること、事故、暴力や犯罪などからの危険回避、経済的安定もです。貧困や家庭内暴力の中で日々の生活が脅かされている子どもは、この2段階目の欲求を満たしていません。
3.社会的欲求
愛情や人とのつながりを求め、どこかに所属したい欲求です。学校や友達から受け入れられている安心感を感じます。いじめや不登校の問題に悩んでいる子どもは、この欲求が満たされていないのです。
4.承認欲求
社会的欲求が満たされると、次は「他者から認められたい」という欲求が生まれます。「親や先生に褒められたい」「かけっこで一番になって友だちに一目置かれたい」など、自分の存在感に注目を集めたいと思います。しかし、これは低いレベルの承認欲求。高いレベルでは、他人よりも自分自身による自己評価が重視され、努力や結果から自己肯定感が高まり、満足感を得られます。
5.自己実現欲求
人は生活の基盤が満たされると、最終的に「自分の持つ能力を最大限に発揮して、理想の自分になりたい」という欲求を持つようになります。そのために意欲的に努力やチャレンジを続けるのです。
「自己実現」への積み重ねが「自分らしく生きられる場所」に導くことになる
それでは具体的に、お子さんが何に悩んでいるのか、どんな助けを必要としているのか、段階別にみていきましょう。
【1.生理的欲求】【2.安全欲求】を求めている場合
この2つは"物理的欲求”です。子どもが安定した生活を送るために、親がしっかりとしたベースを築いてあげましょう。
具体的には「規則正しい生活」です。栄養バランスの取れた食事、良質な睡眠、規則正しい生活をめざしましょう。また「家族の会話」が大切です。「親に守られている」という安心感は、子どもにとって何ものにも変えがたいものです。
"物理的欲求”に対しては習慣つけて、生活バランスの見直しと家族の会話を定期的に行ってください。
【3.社会的欲求】【4.承認欲求】を求めている場合
こちらの2つは“精神的欲求”となります。大切なのは、自分で行動することで子ども自身が「満たされている」と感じることです。
具体的には「子どもの話を真剣に聞く」「家庭内での役割を与える+褒める」です。これは習慣ではなくその都度対応しましょう。仕事や家事に忙しいかもしれませんが、なるべく真剣に子どもの話を聞いて社会的欲求を満たしてあげてください。また、家の中で「お手伝い」をしてもらい「人の役に立っている」という自立心と自己信頼感を育みましょう。そしてお手伝いができたら褒めることが大事です。
【5.自己実現欲求】を求めている場合
ほかの欲求がすべて満たされても、自己実現欲求が満たされないと幸福感を感じにくく欲求不満になってしまいます。子どもがやりたいことを見つけたり、夢を語り始めたら、次の3つの言葉に気をつけてあげてください。
「勉強しなさい」・・・「〇〇しなさい」は親の要望になってしまっています。子どもが「自己実現のために勉強する」というモチベーションにつなげたり、学習の意義を見いだせるように誘導してあげましょう。
「ダメ」・・・子どもの要望を頭ごなしに否定するのはもってのほかです。よほど危険なことをしようとしているときは必要かもしれませんが、モチベーションを削ぐような否定は避けましょう。「どうすればできるようになるか」一緒に考えてあげてください。
「失敗しないようにね」・・・親として”心配””気をつけて”という意味もありますが、これはマイナスのプレッシャーになります。失敗してはならない、間違えてはならないと思い、子どもはしょげてしまいます。親が見守っているという安心感のなか、小さな失敗を積み重ね、成長していきます。失敗してもリカバリーできるという経験は人生の大きな財産になります。
自己実現欲求を満たすコツとしては、子どもの夢に向かって「大きな目標」と「小さな目標」を子ども自ら立ててもらうことです。
たとえば、大きな目標が「プロ野球選手になる」なら、小さな目標は「毎日素振り100回」「毎朝30分走る」など。具体的事項をひとつずつクリアしていくことで、自己実現へ少しずつでも近づいていく実感を得ることが大事で、満足感も増していきます。
まとめ
子どもの夢には学習などで目標達成することをはじめ、創作、研究、運動、芸術などさまざまな形で自己実現を図ろうと試みるようになります。
いまは日本のみならず、世界の状況や情報が簡単に手に入るぶん、比較対象は広がり、求めるもの、求められるものも多様化し、「グローバル化世界でどう生きるのか」ということも、小さなうちから求められることもあります。
子どもの「自分らしく生きられる場所」へ導くために、どの段階で悩んでいるのかをしっかり把握して要所を抑えたサポートをしてあげてください。