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サラリーマンと経営者、それぞれ9年ずつやってみてわかったこと

果たして自分はこのままでいいのか?
安定した居心地のよい場所に止まっていないか?
自分には一体何ができるのだろう?
最近仕事で伸び悩んでいる
心のどこかに満たされない自分がいる

社会人として一定の経験やキャリアを積んで、日々充実した仕事生活を送る一方で、ふとしたタイミングでこうした漠然とした不安や悩みを抱える人は意外と多いのではないでしょうか。わたし自身もそうでした。

2006年に新卒として社会人をスタートしてから9年間にわたり大小含む様々な組織でサラリーマンとして勤め、2016年に1社目を起業。現在は2社目となる不動産ITベンチャーを起業しています。そんな経験を通じて自分なりに培った「仕事」や「働くこと」における気づきや学びについて書きます。

特に、大手やベンチャーへの就職または転職を考えている方や自ら起業を考えている方にとっての気づきになればうれしいです。

1. だれかの役に立てているか

働く意義は人さまざまで、ライフステージによっても変わります。まだキャリアをスタートしたての時分は、働く目的は自分以外にあまりありません。それが結婚して家庭を持つようになると、自分以外に養う対象ができ、目的は徐々に自分から家族へと移り変わります。

そんな事とはまだ無縁の20代、私はお金や肩書きのために仕事してました。たしかに最初のうちは、お給料が上がって上司や同僚にも認められることがやりがいであり喜びでした。でも、収入が上がり憧れの名刺タイトルをもらっても、いつもどこか虚しく心の満たされない自分がいました。

金融という特殊な世界だったこともあり、朝から晩までただひたすら数字を追いかけ続ける日々。恵まれた会社や上司のおかげにも関わらず、あたかも自らの能力や実力で手に入れたか地位であるかのように思い上がった自らの高慢さやそれにしがみつこうとする姿勢に嫌気がさし、組織を離れ、自ら起業する道を選びました。

そして、起業を通してわかったのは、私にとっての働く意義は「だれかの役に立つこと」だということでした。そこで大事になるのが、主語を「わたし」から「あなた」にすることです。

会社員の場合、周囲からの評価が自らの収入や昇進に影響を与えます。多少身勝手な行動を取っていても、結果さえ出していれば、上司も幾分かは多めに見てくれるかもしれません。ただし、会社経営においてはそうはいきません。いくら優秀で高い能力を持っていたとしても、それのみでお金を払ってくれる人は世の中どこを見渡してもいないからです。まず人の役に立つサービスがあり、それを必要とする顧客がいてこそ、はじめて売上という報酬が得られます。

また日々のサービス提供を通じて、顧客や取引先から寄せられる喜びや感謝の言葉にまさる仕事のやりがいはないことも学びました。

まさに読んで字のごとく、仕事とは誰かに「仕える事」です。

2. 自立に向かえているか

2つ目のテーマは、自立です。
Google検索によると、自立には生活的、経済的、精神的、社会的など様々な種類があるそうです。ここではそれらを総称します。まず大切なのが、「自立」という言葉の意味です。

人は誰ひとり自分だけでは生きてはいけません。生まれてから死ぬまで、常に誰かに支えられ、そして誰かを支えながら生きています。人に支えられるとは、つまり誰かを頼る。ちょっと強すぎる言い方になりますが、それは他者への依存を意味します。

赤ん坊が生まれた瞬間は、100%お母さんに依存します。しかし、そこに父親や兄弟という未知の存在が現れ、はじめはぎこちないながらも互いに信頼を深め、その比率は徐々に家族の中で分けられるようになります。
そこに、おじいちゃんやおばあちゃん、親戚や近所のママ友などが加わりますが、まだほとんど100%親(または家族)です。しかし、赤子から幼児へと成長するにつれ、保育園や幼稚園に入ると依存先の分散は徐々に加速し始めます。言葉を覚え、友達ができ、交友関係が広がることで社交性を身につけ、それまで親しか頼れる先がなかった赤ちゃんが一気に子供の階段を駆け上がり始めるのです。
小学校に入ってからは、もう異次元です。これは育児を経験された方であれば、皆さん共感頂けると思います。「つい昨日までママ、ママだったのに・・」というあの一言は、みな本心から来る言葉です。それだけ大人の理解できる範疇を超えたスピードで子供は成長します。

一見話が脱線したかのように思えるかもしれませんが、ここで言いたいのは子供の成長と同じように、「自立する」とはつまり「頼れる先を分散する」ということです。また、いざ頼るとなった時に「この人なら応援したい」と思ってもらえるよう日頃から人に丁寧に接し、謙虚さを心掛けることも重要だと学びました。ただ人に頼ってばかりの人生ではどうしようもありません。

しかし、わたしは20代から30代にかけてこの意味を大きく履き違えていました。以前は自立することは、つまり一人で生きていけること、もしくはそれぐらい強くならなければいけないことだと思い込んでいました。今となって考えれば、思い上がりもいいところです(笑)この大きな勘違いのせいで、随分と家族や周囲に心配を掛け、だいぶ遠回りをしたような気もします。

様々な失敗や間違いの経験を経て、本当の自立とは周囲に頼ることなのだと気づきました。強がって自分一人で抱え込んだりせずに、周囲に相談することで自らの心の負担を和らげることが大切なのだと学びました。人は自分一人の力だけでは生きられない。互いに喜びや悲しみも分け合えるからこそ、人なんだと。また同じことが会社経営においても言えると思います。自立した経営とは、売上、資本、社員いずれの構成においてもバランスかつ効率よく分散させることが重要になります。

スタートアップの場合、特に立ち上げ期においては、これら3つのいずれにおいても過度な依存状態が一定期間続きます。生まれたての赤子が親なしでは生きられないのと同じように、会社やサービスもまた、その成長過程において、限られたわずかなサポーターやファンからの支えや応援のおかげで育ちます。そこから事業を継続していく中で、プロダクトラインや顧客セグメントを増やしたり、種別の異なる投資家を迎え入れたり、人を採用することで徐々にその輪が広がり、限られた少数に集中したウェートを分散することで自立が可能になると考えます。

3. 自らの心の声に従えるか

次に気づけたのは、心の声に従うことの大切さです。

会社員を経験された方はお分かりいただけると思いますが、サラリーマンの場合、組織の中ではどうしても自らの心の声を押し殺さなければならない場面があります。なぜなら会社という組織が個を中心に構成されず、乗組員である「あなた」よりも、船である「組織」を優先するからです。

例として、航海する豪華客船に、あなたは乗組員として乗り合わせたとします。そこで開かれた航路を決めるべき重要な会議の場で、突然船長が「心の声に従って、このまま真っ直ぐ進もう」と言い出したらどうでしょう。もし船長が十分な情報収集や分析もなしに取った言動だとしたら、これほど恐いものはありません。もしかしたら進行する暗闇の先に氷山が潜んでいて、船もろとも沈んでしまかもしれません。

こうした事態を避けるために、一定規模以上の会社では、リスク管理を目的とする厳格な意思決定機関やコンプライアンス体制が整備されています。その目的は、社員一人の過ちによって組織全体を沈没させないためです。

しかし、これにより組織の中で個人の意見や意思の尊重は制限されます。わたしは、会社員をしていた時分、だいぶこの制限に苦しめられました。目先の利益や効率性のみを優先して下される決断が、会社や人として取るべき行動として正しいかと尋ねた時に、常にそうとは限らないからです。

人は誰にでも間違いや過ちはあります。わたしも人として経営者として、これまでたくさんの間違いや過ちをしてきました。それは未熟であるのと同時に、まだまだ成長できるからなんだと捉えています。

わたしは、小さい頃から母に

"いつどんな時でも、答えはあなたの中にある"

と言い聞かせられながら育ちました。会社を経営していると、日常的に様々な壁や困難にぶつかります。悩んだり迷ったりした時には、常に自分の心の声(Intuition)を大切にするよう心掛けています。

4. 挑戦し続けられるか

さいごのテーマは、「成長」です。

会社員として培った学びの一つに、自らの安全地帯(コンフォート・ゾーン)から出るというものがあります。これは、自分が不安や恐怖に感じたり、できれば避けたいと思う方向にあえて飛び込むことで、人としての幅を広げ、成長していくという考えです。その裏側にあるのは、次のような前提です。

失敗や挫折の経験を通じて、人は成長する

人は誰しもが自らの安全地帯、つまり安心できる居場所をもっています。それは自分という単一の存在だけでもなりえますし、家庭、学校、職場、趣味のサークルなど集合体であるコミュニティからも成り立ちます。

誰にとっても初めての場所というのは、ある程度緊張するものです。特に、それが職場の場合は尚更です。アルバイトであれ、正社員であれ、共に働く相手や仕事の勝手がわからないうちは、常に不安がともないます。と同時に、ワクワクやドキドキといった興奮や好奇心といった前向きな感情を覚えるのもこの時です。

しかし、やがて場に慣れるにつれ、そういった不安や好奇心の入り交じった感情も次第に薄れ、新鮮だった職場は自らの安全地帯へと変わります。
昔から「まず習うより慣れろ」とはよく言ったもので、わたしたちがなにか物事に集中して研鑽する上においてまず必要になるのが、周囲から快く受け入れられ、場に帰属することで得られる安心感です。そこで一定の帰属心や安心感が得られない場合、人は離脱します。まずは仕事や職場に慣れること、これがフェーズ1です。

そして無事フェーズ1を乗り越えた先にあるのが、成長期にあたるフェーズ2です。仕事を覚え、上司や同僚からも信頼された結果、より多くのタスクや責任を任されるようになります。もしかしたら部下を従え、マネジメント的な立場に置かれる機会にも恵まれるかもしれません。そこで重要になるのが、自らの成長を実感し、それを維持できるかです。つまり成長の持続です。

会社員にとって成長の持続が困難なのは、それが人事評価と密接に結びつくからです。ここでいう人事評価とは、昇給やプロモーションを意味します。では、組織の中で高い人事評価を得るためには何が必要か?それは、ずばり失敗しないことです。もちろん中には、やる事なす事が成功ばかりの飛ぶ鳥落とす勢いで昇進階段を駆け上がるライジングスター的な存在もいますが、非常に稀ですし、何より長続きしません。いつか壁にぶつかります。

世の中にある大半の人事評価制度は、失敗しないことでコツコツと貯められるポイントシステムによって成り立っています。少なくともわたしがこれまでに経験してきた組織のすべてがそうでした。この「人事評価=失敗しない」というシステムに限界を感じたのも会社員として組織を離れる決断をした理由の一つです。なぜなら

失敗しないこと、それはつまり挑戦しないこととイコールだからです。

ベンチャー起業は、失敗と挫折の繰り返しです。けれども初めから失敗したくて起業するような変わり者はいません。みな己の可能性やビジョンを信じ、成功という頂を目指すからこそ、あえてリスクを取って起業します。

失敗や挫折は、何かに挑戦する過程で困難や壁にぶつかった時に生じます。しかし、と同時にあきらめ続けない限り、壁の向こう側には成功や目標が常にあるのです。だからこそ、あきらめずに挑戦し続けることが大切です。

  • 自らの中にある不安や恐怖と対峙し、ちょっとずつでいいから自分の安全地帯(コンフォート・ゾーン)を広げられるよう努力する

  • 失敗を恐れず、挫折にめげず、自らのペースで挑戦し続けることをあきらめない

  • その先にこそ、仕事におけるやりがい(生きがい)が見出せる

以上がサラリーマンから経営者に転身し、それぞれ9年ずつの歩みから学んだことです。

さいごに

最後までこの投稿をお読みくださり、ありがとうございます。
はじめはサラッと書くつもりだったんですが、書き始めるとなかなか考えが収まらず、長文になってしまいました。

散々偉そうなことを書きましたが、まずわたし自身がまだまだ発展途上ですし、何かを成し遂げたと言えるところには決してありません。

でも、ここ最近になってようやく自分は人とちょっと違う視点から物事を見ているんじゃないかと、周囲からの指摘で気づけるようになりました。40歳を過ぎて、ようやく自分が変わり者だと認められたんだと思います(笑)

この投稿を読んでくださっている皆さまに、最後に贈りたいのは次の3つの言葉です。

  • 世の中に楽な仕事はない

  • 隣の芝生はつねに蒼い

  • 人をアテにしない

このあたりについては、また別の機会を通じて投稿したいと思います。

もしお読みいただいて少しでも共感できる部分や感じることがあれば、ぜひ「いいね♡」を押してもらえるとうれしいです。この投稿をシェアして頂けたらもっと喜びます!

ありがとうございます。

田沼 豊寿
2006年にドイツ証券株式会社に新卒入社。東京およびロンドンを拠点に、ドイツ銀行グループが運用するグローバル投資ファンドでの国内および欧州圏での投資案件を担当。その後、投資アドバイザリーでの起業を経験。
住まい探しをする上で「かかりつけの不動産屋さん」が見つからないこと、紙、電話、FAXなどの非効率さによって不動産屋が丁寧な接客のために時間が取れないことに課題を感じ、不動産業界のデジタル化に取り組むため、2017年に株式会社オープンルームを設立し、代表取締役CEOに就任。
カリフォルニア州立大学サンディエゴ校経営学部卒。


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