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短編集

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ジャンルごったまぜの短編集です。
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2014年12月の記事一覧

顔をあげると朝日が昇るところだった

この光を彼女も見ているかもしれないと思うと涙がこぼれた

彼女と離れてからもう15年が経とうとしている
そろそろいいと思うのだけど神さまのご機嫌はいかがですか


彼女が生まれ変わるその日には
どうかぼくに電話をください

おおざっぱな男のはなし

おおざっぱな男のはなし

あたし、ちょっとおおざっぱなところがありまして。
自分では気に入ってるんですよ? そんなところも。
けどこれが、仕事のこととなるとめっぽう困る。
相手様がいる仕事なんで、そちらに迷惑がかかるってこたぁあるんですが、
それだけじゃあない。
あたしも困ったことになるんですよ、これが。
つい最近もそんなことをやっちまってね。ちょっと聞いてもらえますか。

あれは大ぶりの雨の日でした。
近頃じゃあ、豪雨と

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だから私は空を見上げる

だから私は空を見上げる

※ややグロ注意

田んぼのあぜ道を歩いていた。
私の横を、涼しげな音を立てながら水が流れている。水路だ。
じりじりと這い上がってくるような暑さにはうんざりしていたけれど、この水音のおかげでいくらか気持ちは穏やかだった。
そういえば、昔はあぜ道を歩くだけで一匹や二匹青蛙に出合ったというのに、何時の頃からか見かけなくなった。あの蛙たちはどこにいってしまったのだろう。

暑さのせいでしおれた下生えを踏む

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個体と個体の話

個体と個体の話

ここに一つの個体がある。

彼がそう話し始めたので、これは長くなるなと私はお茶をいれにかかった。
片手間に聞いているのが見るからにわかっただろうに、彼は気にした様子もなく台所の椅子を引いてお茶が入るのを待つ体勢だ。
ようは、長くなることは確定しているということだろう。
かといって、ここで話を聞かないと途端にむくれる。
ゆえに付き合うことは必死なので、やはり私はお茶をいれるしかなかった。

「どうぞ

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この世界に一人きり。

この世界に一人きり。

──受信メール なし

なんの変化も訪れないスマートフォンの電源を落とし、ほんの一秒ほど目を閉じてみる。
そうすると、目の前は暗くなりまるで世界に存在しているのは私一人かのような錯覚に陥った。

誰からのメールも来ない時、私はいつもこんな風だ。

大げさだろうか。
用事がなければメールなんてしない。それは私もわかっている。
けれど、何も家族や友達からのメールが欲しいだなんて贅沢を言っているわけじゃ

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