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近代哲学を生んだ「意外なもの」とは
17世紀は、西洋哲学史においても重要な時代とされています。「われ思う、ゆえにわれあり」で有名なデカルトを始め、ホッブズ、ロック、スピノザ、ライプニッツなど著名な哲学者が多く登場しました。
教科書では、フランスなどヨーロッパ大陸の哲学は「大陸合理論」、島国であるイギリスの哲学は「イギリス経験論」と区分けされます。しかし、この区分は便宜的なものに過ぎず、実際には各地の哲学者たちは影響を与えあっていました。
また、当時の哲学は「世界の真理を解き明かすもの」であり、物理学や天文学、数学や生物学、政治学や法学など幅広い分野を含みました。
哲学者として知られるデカルトですが、光の屈折のような物理学の研究もしていますし、「方法序説」にはガリレオ裁判についての言及もあります。
ロックは社会契約説を唱えた政治学者でもあり、ライプニッツは微積分を発見した数学者でもあります。現代でいう「文系・理系」の垣根はありませんでした。
さて、この時代に哲学(をはじめとする諸学)が飛躍的に発展したのはなぜでしょうか。斎藤哲也編「哲学史入門Ⅱ」(NHK出版新書)によれば、2つの背景があるといいます(山本貴光・吉川浩満両氏の対談より)。
一つはグーテンベルクに始まる活版印刷技術の改良と普及。書物を大量に制作・流通させることが可能になり、時代と場所を超えて研究成果を伝えられるようになりました。これはあまりに有名なので詳述の必要はないでしょう。
もう一つは、すぐには思いつかない人が多いのではないでしょうか。それは、近代的な郵便制度の導入です。
飛脚を用いて文書を送る制度は古代からありましたが、王侯や聖職者など限られた人のためのものでした。
15世紀末~16世紀初頭、神聖ローマ皇帝に仕えた貴族フランツ・フォン・タクシス1世(1459~1517)が、手紙や物資の輸送体制を整備します。これが近代的郵便制度の始まりとされています。
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ブリュッセルを起点に、ヨーロッパ各地が馬車によって結ばれました。やがて公式文書だけでなく、私的な手紙も輸送できるようになります。
当時の知識人はラテン語を共通言語として、国が違ってもやり取りできました。手紙を比較的安価に遠くまで届けられるようになり、学者たちは質疑応答や議論を通じて「知のネットワーク」を形成していきます。こうして、ヨーロッパでは多くの「知の巨人」を輩出するに至ったのです。