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金星の位置 自由歌集



宵の明星も桔槹けっこうのやうオレンジモノレール

ゆくみちはハタハタと蜻蛉のゆくみち夏未明

夏曉の勇魚のごとく遅くして潺湲せんかんたるこの大栗川

水鞠落ちる音いのち跳ぶ音

あらぬものはあらぬ幽けきものはこの心像に

さきの嬰児して母殺むるこころ翠雨のまにまに九月来る

首しなう雑魚を食みたる水鳥も岸辺一面打ち靡くくさ

この羽根は毎秒何回転涼しさよ然らば金星木星みな回るもの

雨乞いや龍をいずこと知らざりといみじ飛湍ひたんの腹のぼるみゆ

終着駅降りたれば過去の町真夏の田園の異邦のひと

継糸のほころび憂えよいるかの子命はもたぬ共に眠るとき

幼生ひ雑木の陰は高かりしあな踏む陰は新緑の陰

純真は単純にはあらねと三体の蝶々も親子の問題

帰る日の庭の白花つつましきなければこそ蝶の行方追う

ものも言へぬあわれなひとは帰るとき妙なるままに粗食つくるなり

列車よ村雨はきて故郷の日照あきらかに結界のそと

誰が思ひ出の嬰児殺されたる言の葉聞けじ夏の終わり

落陽よすべて燃ゆみどり八月は朱く染められたる中空

新星は遠くにあるらむ見ゆるまでまみえるまでは遠さこそあれ

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