トップガンマーヴェリックの謎を解け‼ #14(最終回)
前回で本編は完結しました。
最後にいつもながらの勝手気儘なコアラ!、いやコラムをお届けして、
『トップガンマーヴェリックの謎を解け‼』の最終回としたいと思います。
#1から最終回まで教範無視で書きたい放題の内容でしたが、これまで貴重な時間を割いて読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
次回作はきっと『シュペルター製作15年記(仮)』になるかと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
コラム4
F-14対第5世代戦闘機
さて問題です。どちらが勝つでしょうか?
…第5世代戦闘機かな?
でも劇中ではマーベリックがF-14を操縦して、第5世代戦闘機(しかも2機)に勝ってしまいました。
ではF-18 対 第5世代戦闘機では?
なかなか答えにくいので代わりにトップガンマーヴェリックの登場人物にお答えいただきます。
F-18が勝つと思う人!
おずおず手を上げる人ばかりですね。はい!あなた!
ルースター: パイロットの腕次第ですよ。
サイクロン(偽人格): 崖に衝突するよりは、生き残る確率高いよね。
F-18では絶対に勝てないと思う人!
はーい、はーい!
マーベリック: F-18じゃ無理だ!絶対やめとけ!!
サイクロン(真人格): 出撃は許可できません。だってF-18ですぞ!
どっちが正しいのでしょうか?教えて色彩先生!
彼を知り、己を知れば百戦して殆(あや)うからず。(孫子の兵法)
…えー、色彩先生ですよね?
すいません。ネットで見て、よくわからずに名前使ってました。
ということで、まずは彼(敵)である第5世代戦闘機について調べてみましょう。
おっ、偶然にも手許に丁度良い本が。
『軍事研究2012年4月号別冊 新兵器最前線シリーズ12 世界のステルス戦闘機』
ジャパン・ミリタリー・レビュー社発行 定価2000円
発行年はちょっと古く2012年ですが、新兵器最前線シリーズの最終巻にして、これ以降新シリーズは発刊されていないようです。
私は前にも書いた通り、軍事研究の趣味は全くないので、なんとなく模型製作用の資料として購入していたものです。
目次から内容の一部紹介すると
・ステルス戦闘機の戦いと将来の航空戦
ステルス機と精密誘導兵器がもたらした新概念“EBO” 宇宙空間とサイバー空間は新たな主戦場に
〈元防衛省技術研究本部技術開発官(航空機担当)/空将〉 林 富士夫 著
・ステルス戦闘機への対処(電波・光波)技術
RSC低減策/赤外線TRST/電子線/低周波パッシブレーダー
〈元航空自衛隊/1等空佐〉神野 喜久夫 著
・ステルス性より空中機動性を優先か?ロシアの第5世代戦闘機T-50(PAK-FA)
多目的ステルス戦闘機としてロシアが開発したステルス戦闘機の秘密と能力を推理する
〈兵器研究家〉大塚 好古著
なかなかガッツリした内容でしょう?
この本から第5世代戦闘機に関する説明を抜粋すると
簡単に言うと敵に見つかりにくいくせに、敵を見つけるのが得意で、いざ戦うと身軽なやつ、しかもネット好きの陽キャって感じですかね。
ちなみにならずもの国家の第5世代戦闘機はロシアの本書のT-50にそっくりですが、これは発刊から10年が経ち、Su-57として実際に生産が開始されています。
さらに本書を紐解くと、対拠点攻撃、空対空戦闘ともステルス性が重要なカギですが、とりわけ空対空戦闘(要するに戦闘機同志の闘い)では、次のように書かれています。
これからすると第4世代のF-14はおろか、第4.5世代の非ステルス機であるF-18でも第5世代戦闘機にはまるっきり勝ち目がなさそうです。
相手に接近する前に撃墜されるのですから。
ではどうすれば敵に接近して格闘戦に持ち込めるかというと、
一つ目はいわずもがな、敵に見つからない事、これにはステルス性を有する機体を使う必要があり、問題の裏返しであって解決策になりません。
二つ目は敵に見つかっても、(相手にとって自分が)敵だと認識されないこと。
戦車の例だと、ドイツの5号戦車(パンテル)が、ソ連のT-34/76戦車に(特に正面)シルエットが似ていて、霧に紛れてソ連戦車隊の後ろについて行き、ドイツ戦車とばれなかったなどという話がありますが、戦闘機では目視よりもレーダーやセンサーで感知されるのでそんな時代錯誤な事が起るわけ…、ありました‼
マーベリックが敵基地から盗んだ、いやお断りなく使用させていただいたF-14ならば、ならずもの国家の戦闘機のフリをするどころか、そのまんま、ならずもの国家機です。
かくして、ファースト・ルックはされたものの、ファースト・シュートされることなく相手から近付いて来てくれたため、敵に気づく前に撃墜されるという最悪の事態は避けることができました。
ここからは先はドッグファイト次第です。
ただし第5世代戦闘機は機動性でも第4世代戦闘機(F-15“イケてる兄さん”やF-16“バレリーナ・アンジェリーナ”、それから設計コンセプトは異なるがF-14“バブリーおやじ”も第4世代戦闘機に属するそうです。)を凌駕しており、まだまだピンチは続きます。ましてや乗っているのは整備状態も不確かなオンボロF-14です。
ドッグファイトでは敵の後ろを取れるかどうかが、大きく勝敗を左右し、そのための機動性優位なのですが、それだけではなくパイロットの技術や心理状態が入る余地があることが希望の光です。
そこで、このドッグファイトの登場人物である4人のパイロット達に注目することにします。
なお、ならずもの国家パイロット2人は“名無し、カオナシ”ではあんまりなので、コラムニスト権限でこのコラムに限って名前を与えましょう。
第5世代戦闘機1: パイロット アノヨデ・“ナラズ”・チーン少佐
第5世代戦闘機2 パイロット: アワテ・“ズモーノ”・アワワ大尉
F-14(ならず者国家機)パイロット: ピート“マーベリック”ミッチェル大佐
後部座席:ブラッドリー“ルースター”ブラッドショー大尉
F-14の操縦桿を握るはマーベリック!世界最高のパイロットを輩出しつづけるトップガンの中でも群を抜いた天才パイロットというだけでなく、30年余年、ひたすら教範破りの操縦を磨き続けてきた、由緒正しい海軍の厄介者です。
なお操るF-14はリフティングボティ(平べったい胴体が翼のような働きをする)や可変翼(Autoに設定しておけば、自動で最適の後退角になる)という特徴から第4世代戦闘機としてはなかなか侮れない空中戦能力をもっていますが、ストールしやすい神経質なエンジンにはマーベリックもかつて苦汁をなめているだけに、スロットル操作には注意が必要です。
決してスプリットスロットルなんかやらないでくださいよ。
って、やるんかーい!さすがに吹っ切れたマーベリックは一味違うぜ。
一方、ナラズとズモーノは第5世代戦闘機に乗っているだけあってエース級であることは間違いないでしょうが、そこは虎の子の第5世代戦闘機、絶対壊してはならん、と教範を守って操縦することを厳命されています。
乗機である第5世代戦闘機は正面以外の角度では、ステルス性を少し犠牲にしてまで、空中戦における機動性を重視しています。F-14に対してはやはり圧倒的な優位性を誇っていると思うのは当然かもしれませんが、危険を冒さずじっくり料理すればよいと思っていないでしょうね!(これ3人目のパイロット君も聞いとくように!)
そんな彼らにとって遺物と思って見くびっているF-14がマーベリックの手にかかれば、とんでもない動きをするのですから度肝を抜かれるのは必至。
ここからはズモーノ目線のライブでお届けしましょう。
Talk to me ズモーノ. うちのF-14が海に向かって飛んでいるんだが、出撃したって連絡あったか?
いいえ少佐、基地から1回だけ連絡あったんですが、基地が爆撃受けてめちゃめちゃ混乱してるようでして、他の第5世代戦闘機も出撃出来ないようでしたから、F-14を出したのかもしれませんね。
あんなポンコツを操縦してるのは、我らCup Gunチームじゃあないな?近づいて確認してみるか?
なんかあいつら、ヘルメットの模様派手くないか?赤青白ってバタ臭いっていうか。そーいやマルチャン大尉(注)は“肉”って書いたヘルメット被らされてたけど、あいつらも総統から処刑されたのかもな?そのくせのんきに手なんか振りやがって。
(注)ならず者国家日系3世 赤井 “マルチャン” キッツーネ大尉
誤作動のアラートに対して、どうせ誤作動だと高をくくって
出撃せず、“肉”の文字が額に書かれたペールオレンジのヘ
ルメットを被らされる罰を受けた。 (初登場 コラム3)
でもハンドサインに全然答えないな。しょーがない奴らだ、ズモーノちょっと後ろにつけて煽ってやれ。
ハイ少佐。ってあっれー‼
F-14が軌道を急に変えて、ナラズ少佐機に機関銃しこたま打ち込みやがった‼
訓練のつもりが実弾積んでたんじゃないだろうな。
ばっか敵だ!ミサイルで撃ち落とせ。
了解少佐。ミサイル発射(ポチッとな)
っていや~ん。F-14を追ってったミサイルが少佐機に命中。祝・俺初めての撃墜!ってオウンゴールじゃーん。
やばいやばい、あんなに第5世代戦闘機壊すなって言われてたのに、壊すどころか、撃墜です。しかもナラズ少佐もろとも。
こりゃーマルチャン大尉みたいに“肉”ヘルメットじゃすまないぞ、頭にとげのついた鉄仮面みたいなの被らされたらどうしよう。あれ前が見にくそうだし…アワワ。
(慌てた理由はそれですか?ズモーノ大尉。〈本名アワテ・アワワ〉)
とりあえずF-14を撃ち落とさないと!まだこっちが後ろ取ってるからミサイル2発目発射。
なにー!F-14が第5世代戦闘機みたいな動きするなんて(はい、ここスプリットスロットルです)、聞いてないよー。
…取り乱しました。
こっちも第5世代戦闘機お得意の超機動飛行でF-14の後ろ取ったドー。
今度こそ撃墜2機目を仕留めてやる。
(おい俺のは、味方機だろ!数に入れんなよ。とあの世からナラズ少佐〈本名アノヨデ・チーン)が生暖かい目で見守る。)
F-14が渓谷に逃げ込んだぞ。この第5世代戦闘機、最新の自動車みたいな操縦サポート機能が付いてて安心なんだけど(注:うそです)、俺閉所恐怖症なんで、渓谷飛行苦手なんだよねー。ナエ―。
そのころF-14コクピットでは。
いけー、曲芸飛行をみせてやれー!
ヨシきた。
うっわ、やりすぎだ―!
後部座席のルースター応援団長からの声援で、テンションアゲアゲのマーベリック。
できる、できる! よっしゃー2機撃墜!
(おーい、撃墜したのはマーベリックだぞ!自分の事みたいに喜んでからに!まぁいいか、あの世からグースがニヤリと呟く)
懐かしのF-14で、マーベリックへのわだかまりが消えたルースター坊やとの楽しいタンデムフライトはマーベリックにとって、第5世代戦闘機に打ち勝つ強力なパワーとなったようです。
マーベリックの旅はまだ終わらない
空母への道は遠く
困難はつづくにちがいない
けれども
その物語は
また別の話として
語られるべきであろう。 (宮崎 駿著『シュナの旅』より一部引用)