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顧客経験価値の分析と仮説のまとめは縦文脈と横文脈の2つ(後編)

事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)顧客経験価値のための商品企画開発の実践コース第23回


■横文脈:顧客経験価値の連動性、継続性と最終的な意味づけの分析


顧客経験価値の横文脈とは、商品の使用前、使用開始、使用中、使用後で発生する顧客経験価値を、感覚、感情、思考、行動、共感の5つの視点で時系列分析し、モデルとしてのストーリーをまとめることです。


 横文脈は、使用前、使用開始、使用中、使用後の時間にそって分析していきますが、使用前の感覚→使用開始の感覚、使用前の感情→使用開始の感情といったように単純に横には流れません。使用前の感情→使用開始の行動、使用中の行動→使用後の感覚、感情という具合に時間のながれとともに縦文脈と横文脈が複雑に交差します。(図参照)

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 グランピングのコミュニティサイトを1つの商品と考えた例ですが、
・自動車を購入する前に、友だちと車でキャンプに行って、海の見えるグランピングパークドライブして(使用前行動)、感覚、感情がリフレッシュされた。(使用前感覚、感情)
・そのリフレッシュされた感覚が記憶に残り、翌週週末に自宅にこもっていたことがちょっとしたストレス(使用前感覚、感情)になり、
・そこでグランピングのサイトを見て(使用開始思考、使用開始行動)、
・グランピングのコミュニティサイトに参加した(使用中行動)
・先週のキャンプの体験を書き込んだら(使用中行動)
・さっそく「いいね」を5人からもらってオンラインでの友だちもできた(使用中共感)。このように、実際は縦の5つの視点の文脈は常に時間軸である横文脈を連続的に生成します。


それらを細かく正確に記述出来るわけではありませんが、モデルとして考えるならば縦文脈で生成される何らかのシステムの一部が、横文脈をつくり出すシステムにつながって連鎖していくのだと思います。そのような横に展開するモデルが見つけることが重要で、その横文脈をつくる「手がかり」「切っ掛け」が何かを分析するとで、企業側はその「手がかり」「切っ掛け」をどう支援するかを商品やビジネスとして企画します。上記の例で言えば、グランピングのコミュニティサイトへのアクセスや、さらにそこへの書き込みやオンラインイベントへの参加などです。


 横の文脈は、使用前、使用開始、使用中、使用後と区切りましたが、実際のビジネス特性や顧客特性に併せてフェーズをつくっても良いと思います。自動車や住宅などの高額の耐久消費財であれば、顧客の使用前の「気づき」「関心」「情報収集」「コンタクト」「訪問・体験」などの購入前経験がかなり長く、そこがビジネスの成否を決めるフェーズですので、そこのフェーズを詳しく分析するべきです。

■まとめ・分析としてのカスタマーエクスペリエンスマップをつくる意義


●購入決定後の使用中、使用後の顧客経験価値に注力すること


 ビジネスとして考えるとどうしても売る前までは考えますが、購入決定後、使用中、使用後まで深く考えることがどうしても少なくなりがちですが、顧客の経験価値とはむしろ購入決定後から始まることがほとんどで、使用中、使用後の顧客経験価値に注力する企業は未だ少ないのが現状です。サブスクリプションなどのサービス提供化が進めば、購入後が大変重要です。

●横文脈での顧客経験価値を深く理解することで、商品と顧客、提供者の自分自身と顧客の関係を深めること


 提供者の喜びとは、顧客に購入していただくまでの課程だけでなく、購入決定後の使用、使用後の感情、思考、行動などの経験価値にあります。その購入決定後の顧客経験価値を知ることで、顧客との関係を深め、自分の役立ち感を感じ、仕事のやり甲斐を持つことが出来ます。そういった働く側の充実感が次の商品の発展につながります。

●顧客経験価値全体を俯瞰してみることで顧客にとっての商品の真の意味を理解し開発すること


 顧客経験価値の実際はかなり複雑で、本当の満足は、顧客自身が顧客経験価値全体を振り返ってみなければわかりません。スポーツのトレーニングやダイエット、新たなことを学ぶなどのサービスなどでは途中経過の顧客の苦痛(ペイン)は最終的には、顧客の幸福、満足と変換されることもあります。

顧客経験価値をカスタマーエクスペリエンスマップとしてまとめ・分析することは時間のかかる仕事ですが、顧客の感覚や感情、思考、行動、共感を丁寧に把握することで、商品提供者として顧客に寄り添うことで、他では得られない顧客経験価値をつくり、自らも提供者としての経験価値をつくっていく「共創活動」であることが理解できると思います。

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