着眼点2: 競争優位に立てる事業ドメインが定義されているか?
事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「成功する事業戦略計画の7+1の視点コース第3回」
■DIY量販向け卸からからDIY・ECサイトビジネスへのドメイン展開
DIY FACTORY (https://www.diyfactory.jp/)を運営する大阪の注目企業「株式会社 大都(https://www.daitotools.com/about/)」は、現山田社長が三代目であるが、以前はDIYの量販店を顧客にする工具や金物の卸業であった。リクルートをやめて奥様の稼業である大都を義父から引継ぎ、価格競争だけの卸売業から、有力な取引先や製品知識などをコア・コンピタンスにして、直接消費者を顧客にする独自のDIYのECサイトを立ち上げ、大きく成長した。まさにドメイン戦略の模範的な成功事例と言えよう。従業員26人で42億円の売り上げ(2019年)で、中小の有力工具メーカーとの強い結びつきをはじめ、一見競合と思われるカインズホームズなどと提携して、独自の市場領域を拡大している。
大都の独自性は、DIYを消費者目線、特にDIYを経験したことはないが、やってみたいと思う潜在需要を、ネットとわかりやすい製品で開拓したことである。大都のサイトDIY FACTORY(https://www.diyfactory.jp/)をご覧いただくと一目瞭然である。とにかく自分でもできそう、やってみたいと感じ、それぞれのカテゴリーでDIYで何かを作るプロセスが解りやすく説明されている。なによりもDIYを楽しむ価値観、ライフスタイルを共有し、一種コミュニティを形成している。DIYのエクスペリエンス(経験価値)を提供する、D2C(Direct to Direct to Consumer)
といえる。
このように自社に有利な事業の領域を見つけ出し、その領域に経営資源を集中して、他社の容易な参入を防ぐ戦略を″事業ドメィン戦略″と呼ぶ。
もし大都が事業領域を卸売り業のままで維持しようとしていたなら事業の存続すら危ぶまれたと考えられる。大胆に、苦労を乗り越えて事業ドメインチェンジに踏み切ったからこそ今の発展がある。事業ドメインチェンジ、事業領域の転換は重要な戦略なのである。
■ 競争優位に立てる事業領域はどこにあるか
事業戦略計画では、競争優位に立てる事業領域が見つけられているかどうかが評価ポイントとなる。事業ドメインは、必ずしも成長する市場になければならないというものではない。成熟市場や衰退市場であっても競争優位に立てる事業領域を見つけられれば、その事業は成長する。
また、事業領域の独自性が高ければ高いほど、他社の参入を防ぎ、顧客に独自の価値を訴求できる。その結果として市場での価格決定権を持つことができ、それは長期間にわたり高い利益率を維持できる可能性を意味する(図表参照)。
では、競争優位に立てる事業ドメインは、どのようにしたら発見できるだろうか。競争優位に立てる事業ドメインは、独自の強みの連鎖であるコア・コンピタンスがベースとなっていることが多い。コア・コンピタンスが活かされる有望な事業ドメインは、実績を積めば積むほどコア・コンピタンスがさらに強くなり、それが商品・サービスに反映され、その結果、顧客がさらに増えるという好循環をつくっていく。
つまり、コア・コンピタンスと事業ドメインは密接な相互関係にあるということである。従って、どちらかが先に考えられるといった順序はなく、相互に検証しながら企画していく性質のものである。
事業ドメインは、三つの問いに答えることで整理すると定義しやすい。
①対象顧客を誰にする事業なのか?
②何を提供する事業なのか?
③どのような商品・サービス形態で提供する事業なのか?
事業領域を決める際に答えなければならないこの三つの質問は、どの方向に事業ドメインを拡張、またはシフトさせるかを問いかけることから″事業ドメインの三つの拡張軸″と呼んでいる。そして、その根底にあるのがコア・コンピタンスである。
ところで、この事業ドメインは、一度決めたら変えてはいけないものだろうか? 答えはNOである。どの業界でも環境変化が激しい昨今、事業ドメインは、むしろ絶えず繰り返し見直していくべきであろう。