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諏訪原天祐
2023年7月22日 19:32
休日の朝。家の近所を散歩していると、見知らぬ男に呼び止められた。「お前、カレーにズッキーニだけは絶対に入れるなよ」「はい?」「だから、カレーにズッキーニは入れるな。さもなければ、お前をここで殺さねばならない」 そう言うと、男は肩にかけたカバンから、布に包まれたなにやら細長いものを取り出した。あっけにとられる俺を尻目に、男は布をするするとほどいた。青黒い刃が朝日に照らされギラリと光る。「
2023年7月22日 17:32
中田洋子(81)はその日、四年ぶりに我が家を訪問するというひ孫をもてなすため、郊外のショッピングモールに買い物へ行く予定を立てていた。洋子は運転免許を数年前に返納して以来、郊外への移動は決まって路線バスを利用している。その日も洋子は十時三十八分に近所のバスターミナルを出発するために家を出たのであった。時刻は十時二十二分。 洋子の家の近所にあるバスターミナル――鳥鳥駅前バスターミナルは、ゴールデ
2023年7月21日 22:22
皆さん、準備できましたか? ……、いい返事ですね。今年もこうやって四年一組の仲間たちで季節の行事を楽しめることが、先生とっても嬉しいです。きっとこれも皆さんが毎日お勉強を頑張っていることとあのお方が海のように深く深く深く我々を愛してくださっているからでしょう。 あっごめんなさい、先生ったらついついまたお話が長くなっちゃったわ。 じゃあ気を取り直して、元気にスペース豆まきを始めましょうか!
2023年7月21日 20:58
「今日からうちに配属されることになったブラックホールくんだ。さあ、ブラックホールくん何か一言」 宇宙服を身にまとった課長が虚空に向かってそう促した。課長はどうやら奥さんの言いつけは守らないタイプの人間らしい。宇宙服がパツンパツンだ。「どうも、ブラックホールです。まだまだ分からないことだらけですが、一生懸命頑張るのでよろしくお願いします」 パラパラとまばらな拍手がフロアに響く。我々総務課らしい
2023年7月21日 18:00
小さい頃にニュース映像で見た上海の街並みに、純朴だった少年の私の心は見事に惑わされた。 それから六十年。私は上海へのあこがれを胸に抱きながら生きてきた。長期の休みがあれば欠かすことなく上海へ足を運び、上海になじみの店が何軒もできた。私の家、一人で自由気ままに暮らすその家には、上海ゆかりのものが所狭しと飾られている。 しかし、あれだけ愛してやまない上海にすべてをささげる、私の理想としていた素晴
2023年7月20日 21:28
「いいか、この村では決してリンゴを食べてはいけないぞ。リンゴを食べたら梨神様の怒りに触れて、恐ろしい目に合うからな。まあに、そんなに怖がらなくてもいいぞ。何せ、リンゴなんかよりも梨のほうがおいしいに決まっているからな。ほれ、どんどん食えよ。宗太郎。どんどん食べて大きくなって、じいちゃんの畑を継いでくれよ」 じいちゃんはそう言って、ガハハと豪快に笑いました。ぼくはそんなじいちゃんの笑った顔がいっと
2023年7月19日 18:48
「それでは、非生物への転生コースで転生物はビート板でお間違いなかったでしょうか」 目の前にいる長髪の少女はそう言うと、私の前に一枚の書類を差し出した。そこには『特別転生許可証明書』と書かれていた。私は大丈夫ですと一言言って、前田良夫と大きく堂々とサインをしたのであった。 思えば私の人生ほど不憫で理不尽なものはなかった。身長は成人しても平均身長に遥か届かず、就職活動では二百社落ちてようやく内定