マガジンのカバー画像

回し読み

130
ぺけぽん
運営しているクリエイター

2020年9月の記事一覧

誰かが亡くなること、それはもちろんとても悲しいことだから

最近、こういうニュース多すぎませんか……? 例の感染症のせいで、これまでなんとか保てていたやりがいや役割が手のひらからこぼれ落ち、ときに破綻し、自分を自分たらしめるものが大きく揺らいでいる人が多いからなのかもしれません。 旅立ってしまった人に対して、いまのわたしにできることはなにもありませんが、残された人に対してはたくさんあります。 特に、悲しみやもやもやした気持ちを抱えながら、なんとか日常に溶け込もうとしている、あなたへ。 わたしたちは、泣いちゃダメ仕事柄、お看取り

【小説】祖母の指輪

小さい頃からおばあちゃん子で、鍋に菜を入れたり庭仕事をしたりする祖母のかたわらに、私はいつもくっついては甘えていた。しわが深く刻まれていても、祖母の手は美しかった。そんな祖母の細い右手の薬指には、いつでもアメジストの指輪が、きらきら光っていた。 「おばあちゃんの指輪、きれいだねえ。きれいだねえ」 私は何回でも言った。幼い私の目には、祖母の指輪はお話で読んだ王族貴族の宝物のごとく映っていた。祖母はあったかくて気風のいい人だった。八十代になってもてきぱきと家事をこなしていたし

低空飛行のお弁当づくり #ハッピーになるかもしれない朝エッセイ

あまり大きな声で言いにくいご時世だけど、昨日は飲み会だった。 呑むのが好きなんで、次々に、おいしそうな地酒を出されたら、試さずにはいられないじゃないか。 仕事関係の年配の方との会だったんだけど、年配のおじさんは、どうしてあんなにお酌が好きなんだろう。ほんとは、好きにちびちび呑みたい派なんですよ、私。 気が付けば、いつもより飲む量が増えてしまって、ほろ酔いを通り越して、酩酊状態に。 案の定、二日酔いとまではいかないけれど、今朝はちょっとぼーっとしてる。 でも、いつもの時間に布

結婚式のプレイリストだよ

先日、結婚式を挙げました! 前置きはさておきね、私、ほんとにこの式においてはみんなに笑って泣いて食べて、食べて食べて笑って泣いて欲しかったんです。 少し前まで、当たり前のように集って食べて笑って、たまにむせび泣いてたのに、めっきり出来なくなったこの冬からの空気が、ほんとに憎くてたまらなかった。 だから、自分への投資(主に美容)は適当にして、お料理と、そして大好きな音楽に力を注ぎました。 だから、披露宴のBGMプレイリストを惜しげなく、ここにドドーン!と大発表します!!!

差別化の穴を覗いたら見えたもの

ビジネスとか商いの文脈で差別化大事だよねという話をよく聞く。この言葉そのものが嫌いな人もいるけど。 あらゆるモノやサービスがコモディティ化(同質化)つまり、どれもそれなりの高いレベルになってしまって逆にどれも大差ない。そんなフラットな時代になって随分たつ。 もはや最近はコモディティという言葉すらそんなに聞かなくなった。 昔だったらスマホで動画視聴できる! っていうだけで差別化だったのが、いまはそれだけでは差別化にも何もならないっていうやつ。 それでも生き残るにはなんと

アイス半額劇場

私は冷凍ケースの前でしばし立ち止まる。 「ノベルティアイスクリーム全品半額 ※プレミアムアイスは除きます」 ノベルティアイスクリームって何だっけ?と考えながら私は陳列を眺めた。ああ、こういうことかとラインナップを見て納得する。 雪見だいふく、ピノ、パルム、チョコモナカジャンボ…。ノベルティって「おまけ」って意味だけじゃないのか。そしてその場でググって確認。ほう。「メーカー独自の商品」なるほど、知識がひとつ増えた。 対して半額除外の「プレミアムアイス」はハーゲンダッツな

書けない時期と苦手なカテゴリーについて

君のドルチェアンドガッバーナのその香水のせいだよ が頭の中で再生し続けているがこのサビの部分しかしらない。ドルチェアンドガッバーナの香水は一度も買ったことがない。ただ香水のせいだよというくらい香りというのは人の記憶に残ることはわかる。私自身は決まった香りを身につけることはないので、香水の香りで私を思い出す人は多分いないと思うが、一緒に食べた食事の香りで私を思い出す人もいるかもしれない。 今日のテーマはそれではない。 正直にいう。今、絶賛書けない時期がきた。 「私は本当

“I am art” 自分自身を作品に。 168時間、リアルな自分を展示し続けてみる。

はろー、nagohoです。note.2回目の投稿🖋 前回書いた「23歳売れないアーティストが、突然アートギャラリーのキュレーターになる話」を、想像を遥かに超えてたくさんの方が読んでくださって、 嬉しいやら、はずかしいやら。 マジで頑張らなあかん、っと震えました。 改めて、ありがとう、ありがとう、ありがとう。 2発目を日々書いては消しているのですが、 中々に白紙の期間が続いてしまい... もう少しで完成するので、今しばらくお待ちください。 お待ちいただいている間に...

周知連絡:悪質なスパム投稿にごちういください

表題の通り、今日はちょっとした注意喚起をば。 悪質スパムが激増しておる前々からギャンブル予想とかのスパム投稿は結構ハッシュタグとかに乗っかってきていたのだが、最近note利用者が増えたせいか一段と悪質なスパム投稿が増えたようだ。 おれがざっと最近見つけたのは以下のやつ。 ・ランダム文字数でアカウントを生成し、本文に不審なリンクをのせるタイプ ・英語でポルノサイトへの誘導を促すタイプ ・中国語で偽の身分証っぽいのを販売誘導するタイプ 言うまでもなく、どれもろくなものでは

思い出、道路に転がして

小学…何年生の頃だったろうか。 2年…いや、3年生だったかも知れない。 クラスに転校生がやって来た。 先生がにこやかに彼の紹介をし、「じゃあ一言、あいさつを」と振ると、彼は挨拶をする代わりに私達をギリッと睨んだ。 強い黒目が白目の光を引き立たせ、短く濃いまつ毛の線が、眼球を際立たせていた。 ──蛇。 人の目が蛇のそれに見えることがあるのだと、その時、初めて知った。           丨 その後彼は、遅刻したり、途中で消えたりするようになった。教師を蹴ったり、クラス

Weekly Ochialの教育格差の回を見て思ったこと。

Weekly Ochialに「この割れ切った世界の片隅で」のRin Yamabeさんが出てた。 これ見ていたら、僕も言いたいこと書きたいこといっぱい出てきて、思わず夜中にnoteを書くことにした。 話題のnoteはこちら↓ 僕は田舎の公立小中学校で不条理な教育を受け、 大学で横浜に出てきて、 スタートアップ的なことをやり始めた大学生なので、 バックグラウンド的には鈴さんに似ていると自分では思っている。 鈴さんのnoteにも、共感しかない。 番組を見て、いろいろ

勤め先の書類に、僕のパートナーの名前を記入した話。

僕が勤めてる企業は、LGBTQフレンドリー企業ではありません。そんな企業で、誰にも知られず、ある書類で僕の名前にパートナーの名前が並びました。 今日はこのことをお話ししたいと思います。   僕が勤める都内のある中小企業はLGBTQフレンドリーを掲げていません。 映像教材を各社員が必ず1度は観ること、という最低限のLGBT研修は行われましたがそれ以外の取り組みは特にありませんでした。 珍しいことではなく、日本の大多数の企業の大半はLGBTQフレンドリーは掲げていません。 映

レジに立つ僕

梨を買うことにしたから、お弁当は安い方にした。手の中のざらっとしている梨が妙に重く感じる。前に並ぶおばさんは、梨の何倍もの重さのカゴをレジ台に乗せて、大きくためいきをついた。ぴ、ぴ、ぴ。店員さんは息つく間もなく商品を手にとって、レジに通していく。あろうことか、手を止めないまま顔を上げて、にこやかにおばさんに話しかけ始めた。 「今年は、梅雨が長いですねぇ」 「ほんとうね、いつまで降るんだか」 おばさんは、大きく頷いて笑っている。店員さんも笑うと、髪と名札が揺れた。名札には

『ツキモノ』

夫の陰に女がいる。髪の短い立派な女。 半年ほど前からぼんやりと見え始め、彼岸を過ぎたらやけに濃くなった。 特に夕方、輪郭が際立つ。 こういう現れ方をする女は、大抵髪が長くて細身で陰湿で頼りない容姿のはずなのに、夫の陰に立つ女はいやに堂々としていた。 まっすぐにこちらを見る。その目に意志がある。この世のものではないのに。 長い間見てはいけない。すぐに目を逸らすつもりが、女の大きな瞳にいつもわたしは引き込まれてしまう。 わたしよりずっと若かった。二十代半ばか。膝丈のワンピー