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人気プロ格闘家のYouTubeと小説「ヘヴン」

人気プロ格闘家の少年刑務所での講演の様子をYouTubeを見た。
元不良、喧嘩自慢から成りあがった格闘家の彼が、言葉は正確ではないけど、受刑者たちへ、今街なかで理不尽な喧嘩を売られたら謝れますか?と問いかけていた。
格闘家は「俺は謝れます」と言い、20人ぐらいの受刑者たちは答えに戸惑っているようだった。
彼は、再犯率の実態を引き合いに出しながら、受刑者たちに呼びかけた。
夢を持てと諭した。
夢を持てば売られた喧嘩を買うこともなくなるのだと。

川上未映子の「ヘブン」は、クラスメイトにいじめられ続ける斜視の中学生「僕」と、不潔な身なりでいじめの対象になっている女子生徒「コジマ」との会話を主として進む。

僕はしばらくして口をひらいた。するとコジマはすぐにそれは違うと否定した。
「君もわたしも、弱いからされるままになっているんじゃないんだよ。あいつらの言いなりになってただ従っているわけじゃないの。最初はそうだったかもしれないけれど、私たちはただ従っているだけじゃないんだよ。受け入れているのよ。・・・中略・・・強いか弱いかで言ったら、それはむしろ強さがないとできないことなんだよ」
(引用)

いじめる側「百瀬」は「僕」にこう言い放つ。

・・・欲求が生まれた時点で良いも悪いもない。そして彼らにはその欲求を満たすだけの状況がたまたまあった。・・・中略・・・君だってさ、やりたいことってなにかあるだろう?で、できることならそれをやっているだろう?基本的に働いている原理としてはだいたいおなじだよ。
(引用)

善悪の前に欲求がある。
絶対、はないと言ったのは哲学者ニーチェ。
絶対に正しいことも、絶対に美しいものもない。

格闘家は哲学的に語ったつもりはないだろうけど、欲求と善悪の関係というのはふと考えてしまうテーマだ。

川上未映子、恐るべし。

で、こんなことを考えていた先週末、映画館で「ドライブマイカー」を観てきた。3時間。
なんだか繋がるんだよな。
映画のことはまた別の機会にと思っている。

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