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もう最高。圧倒的に面白かった | しろがねの葉(千早 茜)

前にこんなにインパクトを受けたのいつだっけ?思いだせない。
この小説、それぐらい圧倒的に面白かった。
夢中になって一気に読んだ。
一気に。だけど言葉を、表現を、捕まえるようにして丁寧に読んだ。
1ページぐらい前に戻ったりしながら、それからまた先に進むように。

龍源寺間歩をゆっくり歩いた(2022年9月)

1600年前後に最盛期だった石見銀山。
銀を採掘する坑道、間歩(まぶ)の環境は劣悪で、「石見の女性は生涯3人夫を持った」と言われていたらしい。
カンテラの煙や石粉などが肺に蓄積して、鉱夫は30歳で長寿祝いをするほど短命だったという。

いっぽう、銀を外国との交易で武器に替えるなど、金、地位に群がる魑魅魍魎の商売人や役人が跋扈した時代だった。

間歩で働く男たちに囲まれて育った少女ウメが、女へと変わっていく。

夜目が利く童だと、事あるごとに言われていた。
そのため、ウメは物心つくまで自らの名をヨメだと思っていた。
暗闇を怖がらない赤子だった。火の尽きた囲炉裏の傍で目覚めても、泣きもせず眼をひらいていた。土間にこぼれた稗や栗を狙う鼠が、煤けた梁を駆けていくのを、つぶらな双眸はじっと見つめていた。暗い中、生き物はよく動いた。時には、大人の腕ほどに太い青大将が身をくねらせながら鼠を追っていく。ウメは紅葉のような手を伸ばし笑った。
「しろがねの葉」冒頭

僕は、昨年秋に石見銀山へ出かけていた。
間歩が点在する山間の家並みでも観光客はあまり居ず、公開されている龍源寺間歩もゆっくり歩くことができた。
往時の栄華の名残を感じる温泉津(ゆのつ)。温泉は「今まで行った温泉トップ3」に挙げたい良いお湯だった。

ユニークな坊さん 温泉津温泉
最高の泉質だった温泉津温泉の元湯

先日の直木賞受賞のニュースで、「しろがねの葉」が石見銀山を舞台にしていることを知って、早く読みたいと思っていた。
先週末、ようやく書店で購入でき、一気読みした。

ウメが走ってきそうな家並み(大森銀山地区)

実は、映画も本も、少し時間を置いてから文章にするように心がけている。時間を置くことで浮かぶ言葉や気づく捉え方がある。だから、少し”寝かす”ことにしている。
とくにつまらなかった時や、批判的な気分になったときに感情のままに書いてしまうと、別視点を見つけ損なうような気もするから。

だけど今回は、興奮が冷めないうちに書いてしまった。

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