【洋画】「エレファント・マン」
デヴィッド・リンチ追悼。
日本では興行的にも成功したと思われる、1980年の作品「エレファント・マン(The Elephant Man)」(米・英)。コレも若い時から数回観てる。
映画会社に指示されたために、感動のヒューマン・ドラマの体裁を取ってはいるが(リンチ監督らしい映像は入るものの、確かに感動のドラマであるが…)、この作品は、デヴィッド・リンチ監督のフリークス(奇形)への関心・興味・偏愛が如実に現れた作品なのだ。
さらに、有名になってしまったエレファント・マンことジョン・メリックに対して、面会を望み、慈善事業の如く手を差し伸べる当時の貴族階級の連中を、徹底的におちょくっているし、引いては、人間の世界の常識や道徳、見識、良心といったものにも疑問を呈しているのだ。それは脆くも崩れるものであるということを。
俺は昔、映画を観る前に、角川文庫のエレファント・マンの実話を読んだ。エレファント・マンことジョゼフ・ケアリー・メリックは、妊娠時に母親がサーカスのゾウに襲われて怖い思いをしたから、こういう奇形になったと信じていたが、実際には象皮病ならぬプロテウス症候群だったらしい。妹も同じ病気だった。
映画と違って、自ら見せ物になって生活費を稼いでおり、マスコミが報じたこともあって、医師の勧めで病院に入ってからは話題となり、貴族も含め、たくさんの訪問客があったという。
部屋に閉じ籠ることが多かったために、大変な読書家となっている。
そして、28歳で部屋で自殺のように死んでいる。一応、死因は不明。確かイギリスの医療博物館に彼の骨と彼が使用もしくは作った作品が残ってたと思う。
「人間は理解できないものを恐れるものです」byジョン・メリック
「彼はまた見せ物になってると思います。今度はサーカスではなく病院で」by看護師
例え奇形であっても、人間として接すれば済むことだけど、その見た目がそれを許さないのだ。
メリックの最後の叫び。「僕はゾウでも動物でもない!僕は人間なんだ!僕はこれでも人間なんだよ!」。