人間はなぜ死ぬの?
今日の寅さん、またまた…。
「寅さん、人間はなぜ死ぬのでしょうねぇ?」
「まぁ、こう人間がいつまでも生きていると、丘の上がね、人間ばっかりになっちゃう。うじゃうじゃ、うじゃうじゃと。面積が決まっているから。でもって、こうやって満員になって押しくらまんじゅうしているうちに、ほら、足の置く場所がなくなっちゃって、隅っこにいるやつが、お前どけよ、と言われて、あーっ、なんて海の中へ、バシャンと落っこって、アップアップして、助けてくれー、なんてね、死んじゃうんです。結局、そういうことになるんじゃないんですか…ダメダメ、死ぬことなんて考えない方が良い」。
京マチ子が演じる、世間知らずの年上のマドンナ、綾さん。シリーズ中、唯一、マドンナが病気で死ぬ。京マチ子は、若い頃から魅力的であった。
娘の雅子を演じたのは壇ふみ。小学校の産休交替先生で、綾が死ぬと同時に子供が産まれる。
このパターンは、小津安二郎監督の映画にも通じる“無常”を表している。「小早川家の秋」の笠智衆が言う。「死んでも死んでも、あとからあとから、せんぐりせんぐり生まれてくるわ」。
物事は移ろいやすいが故に儚い。この世に存在するありとあらゆるものは儚くも虚しいもの。命も同様。でも、そこにこそ美が存在する余地がある。
寅さんシリーズでも珠玉の一本だ。
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