「お金を作ってこい」という授業
私が定期的に訪問しているフィリピンはセブの公立小学校での授業の中に、商売を体験する授業がある。
ものを作って、それを売って、売上を計算して、利益額を算出して、その額を競うというクラスである。
このクラスを小学校6年生で行っている。
日本の小学校にはないクラスなので、日本に例えるとという話ができないが、「家庭科で作ったものを売って金にしてこい」というクラスだ。
正直、セブの私が訪問している小学校の教室内での調理について、その衛生面は、「、、、」だ。
教室に、ガスコンロ台や鍋を持ち寄り、水はどこかから調達してきて、お湯を沸かし、そこに小麦粉などで作った何かを入れ、茹で上がったら衣的な何かに絡め、その上に砂糖とゴマと何かで作った何かをまぶす。そしてそれを1つ5ペソ(日本円で12円ぐらいかな)で他のクラスの生徒に売り歩くのである。
しかも授業中に。
そうは簡単に売れないでしょ、と思っていたが、バカ売れだ。
先生も買う。だから私も1つ買って食べた。それが大人と言うものだ。
お腹も減ってないし、暑いし、クーラーないし、飲み物もちょうど切らしてたし、食欲はなかった。だけどそこは大人だ。そこで食べるのが大人だ。
いろんなグループについて行った。
どうやって売りさばくんだろう。
早く作って早く売りに行ったほうが得だなぁと思った。
胃袋の数は限られている。みんなお腹いっぱいになったらもう誰も買ってくれない。
しかしそこで逆転劇が起こった。
あるグループが、突如、校長室に売りに行ったのだ。
校長室では校長先生と職員たちが会議をしていた。
クーラーギンギンの部屋で。。
校長先生は大人買いをしてくれた。
そしてガンガン食べてた。
私は何よりも、そのクーラーギンギンの部屋に驚いたが。そのお菓子の売れ行きどころではなかった。が、子どもたちは一気にそのお菓子が売れてうれしそうだった。
1グループ平均500から600ペソぐらいは売り上げただろうか。日本円にして1500円ぐらいだろう。これはかなりデカイ額だ。
フィリピンはセブでは、ショップ店員が1日中働いても給料は日給350ペソが良いところ。つまりショップ定員の1日の働き以上の売り上げを上げてしまっていた。
子どもたちの家庭科に毛が生えたようなクラスで、そんな大きな額が動くことに驚いた。
子どもにそんな大金扱わせるなんて。。
実際に、本物のお金を使って売り上げをあげることで学ぶのだろう。
日本の小学校で同じことをする場合は、紙でお金作って子ども銀行的なやりとりをするのだろうか。
そもそも家庭科で作ったものを売ってお金を儲けること自体が悪とされてしまうかもしれない。正しい教育とされないかもしれない。
でも、小さい頃からお金ってどうやって稼ぐのかを学ぶことは大切だ。
このクラスで彼らは基本的なお金を作り方を学んだ。サバイバル能力が上がった。
原材料仕入れる、作る、売る、お金を得る、計算して利益額を出す。
その後、チームメンバー間で利益を分配したかどうかはわからない。
ただ、子どもたちは夢中になって売り歩いた。学校中を、校舎をハシゴして売り歩いた。夢中になって「勉強」していた。
大人のやるべき事って、子どもたちを夢中にさせることなんじゃないか。
それが大人の役目なんじゃないか。
大人たちは、つい子どもたちに教えようとする。
物事を教えることが大人としての役目だと思っている。
でも、子どもたちは大人たちから教えてもらうことは求めていない。
とにかくやる気スイッチを押してくれればいい。夢中にさせてくれればいい。
そろそろ大人たちは、子どもたちになんでもかんでも教えてあげるという姿勢をあらためるべきかもしれない。
大人たちの方が優れているという考えをあらためるべきかもしれない。
そして、大きく道を外しそうな時だけ、大人は子どもに手を差し伸べてあげれば良いのではないだろうか。