【掌編小説】ヒットマン
相手には何の恨みもなかった。いや、俺が仕えるオヤジに牙を剥く相手なのだから、俺にとっては恨みのある相手だ。俺は自分にそう言い聞かせ、アパートと散髪屋の間の路地で息を殺していた。
掌には汗、拳銃がやけに重い。今朝、兄貴分から拳銃を手渡された時、まず思ったのが、映画の二丁拳銃なんて嘘だということだ。あんなもの不可能だ。技術以前に物凄い力が必要だ。それほど重い。重さだけでなく反動に耐えうる力も必要だろう。その上、グリップが厚く、うまく握れない。おまけに緊張のせいで汗をかき、その