知ってるようで全然知らない「たくあん」の話。
最近、たくあん食べましたか?
私はお弁当の白ごはんの上に黄色いあとができる黄色いたくあんのお弁当で育った世代です。おいしいですよね。あの、ご飯がどんどんすすむ味。おかずなしでもお茶碗一杯ぐらいはペロリといけちゃう。ただ、最近はお弁当やお店でもたくあんを見る機会が減ったような……(気のせい?)。
ま、それはさておき、たくあんの話です。
たくあんが大根なのは有名ですが、あのシャキシャキで瑞々しい大根がどうやったらパリパリのたくあんに変身していくのかは意外と知られていません。ひと口にたくあんと言っても色んな種類があるのですよ、実は。
日本人ならば絶対食べたことのあるたくあん、でも深く知らないたくあん。そんなたくあんについて今回はたっぷり語っていこうと思います。
そもそも、たくあんってなんでしょう?
たくあんは日本発祥のお漬物。歴史を遡ってみると、どうやら日本で初めての漬物は奈良時代の木簡に残されている瓜の塩漬だそうで。
その呼び方の由来は、貯え漬け(たくわえづけ)」が音変化し、「たくあん漬け」になったとする説があったり色々あるようです。
有名なのは、たくあん和尚からの由来でしょうか。江戸時代、徳川家康が沢庵和尚を訪れた際に、沢庵和尚が漬けた大根漬けをとても気に入ったそうですが、名前がないこの漬物に「じゃあ沢庵漬けでいいだろう」と何ともな始まりです。
まあ、名前の所以はいろいろあるにしろ。たくあんを知ろうと思えば、その原料である大根を避けては通れません。というか、たくわんを語るとは、つまり大根の話をするということなのです。
大根にもいろいろあるのです。
大根といえば冬、というイメージがありますが、生だいこんの収穫の時期は10月後半から12月前半。想像よりもちょっと早く、寒くなり始める頃に大根が市場に出回るようになります。
私たちが普段食べている大根は青首大根といって、現在、日本国内における大根の流通量の90%以上は青首大根と言われています。
そしてお漬物に使われるのは白首大根。ほとんどの白首大根は、たくあんに使用されているので、あまり目にすることはない大根です。
この白首大根、生で食べると水分が少なく甘味が少ないので、あまり美味しく感じられません。(生が好きな方は、すみません)
ただ、水分が少ないということは、腐らずに長期間保存することができるとも言えます。水分は保存の大敵ですもんね。
お漬物屋さんのたくあんは、大根をぬか床で長期間かけて漬け込むことで発酵しておいしくなります。瑞々しい青首大根だと、発酵する前に大根が腐ってしまい食べることができなくなってしまうのです。
また、白首大根は青首大根より繊維が多く、固い大根なので、より歯ごたえが良いたくあんになります。たくあんの特徴である、パリパリとした歯ごたえの良さを生み出しているのが白首大根なのです。
大根の漬け方いろいろ
味や形、製法などで分別しても国内には数10種類のたくあんが存在すると言われています。その中でも、たくあんの漬け方は、大きく3種類あります。
食塩で水分を抜いて漬けるたくあん
天日干しで水分を抜いて漬けたたくあん
屋内で燻して水分を抜いて漬けたたくあん
です。順番にご紹介していきますね。
1 食塩で水分を抜いて漬ける方法(シャキシャキ派)
瑞々しいシャキッとしつつもやわらかい食感の大根は、「生たくあん」と言われていて、生の大根をそのまま塩漬けにして作ることから「塩押したくあん」とも言われます。
塩で水分を押し出すため、この名前がついています。干さないで塩で漬けこんで水分を出してから漬けるので、ソフトな食感で歯切れが良く、みずみずしい美味しさが特徴です。
ポイントは、一押し、二押し、三押しと3回漬け替えること。
一押しでは、多めの食塩を使って短期間で大根を漬け込み、大根の水分を抜きます。浸透圧が関係してきます。二押しでは、少量の食塩で少し長く漬け込んで、大根の中の水分を均等に。三押しで、食塩と米ぬかを使って漬け込んで、たくあんが完成していきます。
最後の工程で調味液を使って味付けされることが一般的で、甘みをつけたりして、食べやすいたくあんになります。
2 天日干しで水分を抜いて漬ける方法(味と歯ごたえの本格派)
一方で、昔からの味わいのあるたくあんは干し大根からつくられます。
干し大根は、大根を風通しの良い環境で天日干しにして、水分を抜いた大根のこと。白首大根の水分量が適していると言いましたが、収穫したての大根は95%ほどの水分を含んでいると言われています。それを風通しの良い場所で葉っぱの部分を結んで棚にかけて、天日の下で乾燥させていくのです。
ただ、これには干す広大な場所が必要になります。そのため東京を中心とする地域では干さずに大根から水分を抜く塩押し大根が広がり、土地のある九州では干し大根が長く続いています。
ただ、暖かな九州といえども冬場に天日干しすると、大根が凍らないようにストーブを稼働させたり、雨に濡れないようにシートをかけるとか細心の注意を配らないといけません。しかもこれ、手作業で組み立てていきます。
宮崎県などでは、大根を干す「大根やぐら」が日本農業遺産に認定されるなど注目されていますが、主に九州の宮崎県や鹿児島県などで多く作られているものは年々生産量が減少傾向にあります。
漬物屋としてはゆゆしき問題なのですが、昔ながらの作業の大変さと費用対効果を考えてしまうと、、、なかなか難しいものです。。
干し大根は、天日乾燥する過程で紫外線による影響等を受けて、酵素の活動が活発になって、うま味成分であるアミノ酸やグルタミン酸が増えるということがわかっています。うま味成分があるので、噛めば噛むほどうま味を感じることのできるわけで、私は結構干し大根派です。
3 屋内で燻して水分を抜いて漬ける方法
燻製にした大根をぬか床で漬け込んだ、たくあん、いわゆる「いぶりがっこ」です。秋田の名産品ですね。不思議な名前ですが、秋田の方言で漬物のことを「がっこ」と呼ぶことからその名がつけられているそうです。
この地域は降雪の時期が早いので、日照時間が極端に少なく、冬の保存食として一般的なたくわん漬を作ろうとしても、天日干しだけでは水分が抜けきりません。
さらに干し大根が凍ってしまうのを防ぐために、屋内の梁に大根を吊して干す必要があり、そこから大根を囲炉裏の上に吊るして燻し、米ぬかで漬け込んだこのお漬物が生まれたそうです。
約4日から5日間にわたって昼夜、熱と煙で燻煙乾燥していく。火力も調整しながら、火の位置も変えながら、とても手間のかかる作業です。
楢の木や桜の木でいぶり上げ、独特の香ばしい木の香りがかもし出されます。さらに煙の強い酸が大根の表面を殺菌し、保存性が高まるという効果も。
完成したいぶりがっこは、同じ大根を使った漬物「たくあん」とは一味違った旨味が感じられます。噛めば噛むほど燻製の香りが口の中いっぱいに広がり、ぱりぱりとした食感も楽しいですね。
たくあんはなぜ色が違うのか
たくあんについてよくご質問いただくのが、たくあんの「色」について。
「なぜたくあんは黄色いのか?」
「白いたくあんとどう違うの?」
「黄色と白は大根の種類が違うのか?
まず、大根の種類は白も黄色も「同じ大根」です。
実は大根を塩漬けして漬け込むと、徐々に黄色くなっていくのです。これは、発酵によって大根の中に含まれる辛味成分が分解されて、他の成分と結合して黄色をしめすことが原因です。
大根を漬ける時も、10月後半から12月前半に収穫して、すぐに塩漬するのですが、新物の時期は発酵が進んでないのと、辛味成分もまだ分解されてないので白くみずみずしいたくあんになります。
スーパーなどでその時期のたくあん見てもらうと、「新物」と白いたくあんが並んでると思いますよ。この時期ならではのたくあんなので、ぜひ試してみてください。
そして、春から夏へいくと共に塩とぬかに漬けられて発酵していくのと、辛味成分の分解が進むので、今度は黄色くなったたくあんを楽しむことができます。
季節じゃないのに白いたくあんがスーパーに並ぶこともありますが、それは発酵させてない塩漬けのたくあんです。ビニールハウス栽培などで取れるたくあんを塩漬けして、大体1か月以内に出荷させています。ぬかの発酵をしてないので、さっぱりした味です。
もちろんたくあんと一口にいってもにもいろんな種類の商品があります。
たくあんのイメージを出すためにクチナシ色素等の天然着色料を使用した商品もあります。今回は書ききれないですが、調味液の違いもありますし。
味付けの違いも、楽しむポイントですよね。
さて、種類と漬け方だけでだいぶ長くなってしまいました。普段自分が食べているのはどれだ?と疑問に思った方もおられるのでは。
とまりのつけものでは、バラエティ豊かなたくあんを取り揃えております。
ご自身で食べ比べセットを選んで作っていただける、「選べる!つけものバイキング」でぜひ選んでみてくださいね。
味はもちろん、風味や歯ごたえ、品質の確かさなど様々な面から選び抜かれた逸品ばかり。食べ慣れたものを選ぶもよし、初めてのつけものにチャレンジしてみるのもよし。ぜひ、あなただけの最高の組み合わせを探してみていただけたら嬉しいです。
これから遠足やお出かけが楽しいシーズン。
美味しいお漬物をおにぎりにしたり、ご飯のお供にして頂いてお出かけするのはいかがでしょうか。