とまり木のうさぎ小屋 vol.2-五臓「脾」-
こんにちは。とまり木の見習い相談員のうさぎです。
喫茶とまり木のお手伝いをしながら、中医学について学んでいます。
前回は、アトピー性皮膚炎の原因について、「湿が溜まること」が多いとお伝えしました。
今回は、その湿が溜まることに関わりの深い、「脾」についてお話したいと思います。
中医学では人の体を「五臓六腑」に分けて考えるそうです。「脾」はその「五臓」のうちのひとつです。西洋医学にも脾臓という臓器が登場しますが、そちらはリンパ球や血球を造ることに関わっています。この脾臓と異なり、中医学の「脾」はもっと概念的なものです。中医学では、体の「機能」を五臓:肝、心、脾、肺、腎と、六腑:小腸、胆、胃、膀胱、大腸、三焦に分けて考えます。たくさんあって一度に覚えられないと思います(私がそうでした)。とりあえずまず脾というものがあり、それは体の機能のひとつを意味する言葉であるということだけ押さえておいていただけたら大丈夫です!
今回は脾についてお話しますが、次回以降に肝心腎肺や六腑についても書いていけたらなと思います。実のところ、まだ脾についてしか詳しく勉強できていないので、これを書き終わったら残りの臓器について先生方に伺ってみようと思っています。
脾の役割は、簡単にいうと「分配」です。体の中に取り込まれたものを、正しい場所に届くように振り分ける働きをします。例えば、取り込まれた栄養を体中に届ける仕事をしています。難しい単語を使うと、中医学ではこれを「運化作用」と呼びます。
脾が弱くなると、この「分配」の働きが上手くいきません。水分が上手く届けられないと、不必要なところにたくさん溜まってしまいます。正しくないところに届けられた水分こそが、前回お話した「湿」です。
ところで、先ほど少し出てきた「五臓」ですが、これは「五行」という中国の思想に基づいているそうです。五行とは、自然界のすべての要素を木火土金水の要素に対応させる考え方のことです。この木火土金水の五つが五臓にそれぞれ対応するそうです。つまり、中医学においては人間の身体は自然と一体のものであるという考え方をします。
五行の五つの要素の関わり方には、下の図のように、矢印の向きに栄養しあう関係と、矢印の向きに調整し合う関係の二つがあります。中医学用語では、栄養しあう関係のことを「相生関係」と呼び、調整し合う関係のことを「相剋関係」と呼びます。
土に対応する脾は、火に対応する「心」から栄養されます。そして、土に対応する脾は、木に対応する「肝」によって抑えられます。この二つの関係が、脾の働きに大きく関わってきます。
脾が弱くなるのはどんな時でしょうか。先ほどの二つの関係から考えると、まず、火に対応する「心」が弱くなれば、土に対応する脾は栄養が足りなくなり、弱くなりますね。火に対応する心は「喜び、笑う」という感情に関係します。楽しいと笑いますし、火がぽっぽと燃えている感じがしますよね。つまり、火が燃えていない状態、あまり笑顔が見られない状態になると、「心」が弱い、元気でないということです。こうなると、栄養が届かなくなり、脾も弱くなります。
抑え合う関係の方はどうでしょうか。木に対応する「肝」が強くなると、その分抑える力が強くなり、土に対応する脾は弱くなります。木に対応する「肝」は、「怒る」という感情と関係します。怒る感情が大きくなると、木に対応する「肝」が過度に強くなり、土に対応する脾が抑えられ、水分の分配が正しくなくなります。その結果、湿が溜まり、アトピー性皮膚炎の症状が出やすくなるという流れになっています。確かに、私自身もイライラすると肌荒れがひどくなりがちなので、この流れは納得して聞くことが出来ました。
先ほどから心は「笑う」、肝は「怒る」という感情に対応すると述べています。実は、脾にも関係する感情があります。脾は「思い悩む」という感情(?)と関係します。ここで言う思い悩むとは、悪いことばかりぐるぐる考え込んでしまうようなことを指します。考えすぎることは脾の負担になり、脾が本来の仕事をするのに差し支えてしまいます。その結果、正しい水分の分配ができなくなり、湿が溜まります。そしてアレルギー性皮膚炎が起こりやすい状態になってしまうのです。
ここまで脾に関係して湿が溜まるメカニズムについてお話しました。
次回もお楽しみに!