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奇妙で、不思議で、不穏な物語。美しくも恐ろしい子どもたちの共和国を描いた、アンドレス・バルバ『きらめく共和国』

奇妙な子どもたちは、盗みを働き、
大人を襲い、そして32人が一斉に死んだ。
子どもたちはどこから来たのか?
理解不能な言葉で何を話していたのか?

衝撃的な出来事に関わった語り手が、
22年後のいま、謎を見つめ直す。

みなさまこんにちは。翻訳班HSです。1月22日発売の『きらめく共和国』(アンドレス・バルバ著、宇野和美訳)についてご紹介いたします!

装画:原裕菜/装幀:藤田知子

この作品は2020年11月に単行本で刊行した本の文庫化となります。刊行時には、不思議で不穏な気配のある内容に、たくさんの方が驚かれたのではないかと思います。

わたしは本書の冒頭の文章がすごく好きで……。

 サンクリストバルで命を落とした三十二人の子どもたちのことをたずねられたとき、相手の年齢によって私の答えは変わる。

このなんとも言えない、どことなく不安感をかきたてられる文章がいいなー!と、今回の文庫化のために作品を読み返して、あらためて思いました。

詳しいあらすじはこちらです。

緑のジャングルと茶色い川をかかえる亜熱帯の町に、理解不能な言葉を話す9歳から13歳の子どもたちの集団がどこからともなく現れた。その存在は徐々に大人たちの日常にひびを入れていき、数ヶ月後、32人の子どもは一斉に命を落とした――。現代スペインを代表する作家が描く、子どものかわいらしさと暴力性、野生と文明、保護と支配。一読忘れがたき恐るべき寓話、待望の文庫化。

アンドレス・バルバ/宇野和美訳-きらめく共和国|東京創元社

舞台は、著者が創造した架空の町。ジャングルをかかえる町で起こった、奇妙な子どもたちをめぐるさまざまな事件は、謎めいていてとてもスリリング。そして文学であると同時に、不穏さと緊迫感を味わえる良質のサスペンスのような作品でもあります。
子どもの死を扱っている作品ではありますが、衝撃的な事件に関わった大人の語り手が、20数年後に過去を振り返って謎をひもといていくという構成のため、生々しい描写はありません。シンプルに奇妙さに惹きつけられ、ぐいぐいと読まされていきます。

かわいらしさと表裏一体の子どもの暴力性、野生と文明の対比など、本書がテーマとしている要素はたくさんあり、「現代をひもとく最良の寓話」と言えるのではないでしょうか。
奇妙で、不思議で、不穏で、自らの見たものを信じられなくなりそうな……そんな物語の世界に浸れる、忘れがたい作品です。

文庫版の装画には、単行本と同じくイラストレーターの原裕菜さんに新しい絵を描いていただきました。装幀は藤田知子さんです。おふたりのおかげで、『きらめく共和国』の新しい魅力が見えたと思います!

また、翻訳された宇野和美先生に、文庫版の訳者あとがきを書いていただきました。単行本刊行時以降の著者の動向などがわかります。ぜひご一読くださいませ。

1月22日発売の『きらめく共和国』、どうぞよろしくお願いいたします!

(翻訳班HS)