KOH

中国系日本人/コンサルファームに務める社会人2年目/東京大学経済出身/大学時代は模擬国連や日中学生交流活動などに参加/普段考えていることを徒然と投稿していきたいと思います。

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  • 日常生活とささやかな考え

    自分が日常生活の中でふと考えたことについてまとめてみました。

  • 社会・政治

    社会問題や政治について論じた記事をまとめました

  • 本の森

    自分が読んだ本について綴っていきます。

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1人の中国系日本人が日本の人種差別について考えたこと

アフリカ系のジョージフロイド氏が警察の暴力によって亡くなった事件をきっかけに人種差別に反対するデモがアメリカ全土で広がっている。中には暴徒化した抗議者も多く、大きな問題となっている。この件についてすでに多くの著名人が声をあげ、アメリカにて長年黒人が社会で不平等な地位に置かれていることが浮き彫りとなっている。 本日はこの件をきっかけに、アメリカではなく、われわれ日本社会に存在する差別について私が考えたことを話したい。 【1】日中に挟まれて以前自分の出自についてnoteにて書い

    • 人間の傲慢が生む過去と現在の二重の不幸:『遠い山なみの光』読書感想文

      ノーベル賞受賞作家としても知られるカズオ・イシグロ氏のデビュー作である『遠い山なみの光(A Pale View of Hills)』は、イングランドに住む長崎出身のEtsukoが、娘の一人が自殺した悲しみを引きずりながら、過去に長崎で出会ったSachikoとその娘Marikoの話を思い返す物語だ。 話が進むにつれて、SachikoとEtsukoの物語が大きく重なっていること、何ならSachikoの物語はEtsukoが作り出した幻想なのではないか、ということに気が付く。 して

      • 北京の景色とアンビバレントな感情について

        2023年9月1日。私は北京に向かう飛行機に乗ろうとしていた。 飛行機の席に座ったとき、私は随分と自分が形容しがたい気持ちを抱えていることに気が付いた。北京といえば自分が幼少期に数年住んだ都市であり、大学時代にも何度も訪れた都市である。つまりは馴染みがある場所なのだ。でも、自分が北京から日本に帰ったあとに中国が経験した様々な経済成長、そして最後に北京に行った2019年の末から始まった新型コロナウイルスによるパンデミックはあらゆる面で北京に限らず中国の人々の暮らしを変えた。もう

        • 2022年読んだ本5選

          例年通り、今年読んだ本で特に印象に残った本をまとめた。 例年は10冊あげていたが、今年は読破した本が少なかったため、5冊とした。 ぜひ、様々な感想や意見をお待ちしております。 Kazuo Ishiguro "Nocturnes" (カズオ・イシグロ『夜想曲集』)本書は、日系イギリス人作家カズオ・イシグロによる短編集である。いわずもがな、カズオ・イシグロは、近年ノーベル文学賞を受賞し、『わたしを離さないで』や『日の名残り』で知られる著名な作家である。 本書にある5編の物語は

        • 固定された記事

        1人の中国系日本人が日本の人種差別について考えたこと

        • 人間の傲慢が生む過去と現在の二重の不幸:『遠い山なみの光』読書感想文

        • 北京の景色とアンビバレントな感情について

        • 2022年読んだ本5選

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        • 日常生活とささやかな考え
          11本
        • 社会・政治
          8本
        • 本の森
          4本

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          2022年観た映画8選

          例年その年に読んだ本のうち、特に印象に残ったものをまとめているが、自分のもう一つの趣味である映画もやったらよいのではと思い、やってみることにした。 いざやってみるとこれがなかなか大変。まず、(本のほうでも意識していることだが)監督や作品の色のバランス、地域のバランスを整えるのが難しい。 また、本年はウォン・カーウァイ監督作品を数多く観た年だが、本音を言えば全部ここに載せたい。しかし、逸る気持ちを抑えなんとか二つに留めた(『花様年華』も『2046』も『欲望の翼』も本当は載せた

          2022年観た映画8選

          頭がいい人に限って愚かということに気が付いた話

          まず、この記事のタイトルは間違っている。正確には、 というべきである。しかし、このような些か扇動的なタイトルを付けたのは、こちらのほうがレビュー数を稼げるかもしれないという邪念がありつつ、実のところ、このタイトルがこの記事で自分が一番に伝えたいメッセージに合っているからである。 さて、変な前置きはやめにして本題に入ろう。 人はみな愚かタイトルの通り、この記事では、”頭がいい”という言葉をテーマにしたい。 ”頭がいい”という言葉は見ての通り、”頭”がいいのである。”頭が

          頭がいい人に限って愚かということに気が付いた話

          時間と空間が生む「ずれ」と叶わぬ恋、又は「秘密」を閉じ込めること ~映画『2046』レビュー~

          先日ウォン・カーウァイという香港出身の監督の映画『2046』を観た。 ウォン・カーウァイというのは映画好きにとっては知らぬ者はいないほどの名匠であり、『花様年華』や『恋する惑星』などで知られている。 ここでは彼の作品『2046』へのレビューを書きたい。 あらすじ 本作品は過去の叶わぬ恋の傷をまだ引きずっている男チャウ(トニー・レオン)が出身地である香港に戻るところから始まる。本人は元々新聞社で記者をやっており、香港に帰ってきたあとは新聞への寄稿で何とか生計を立てていた。やが

          時間と空間が生む「ずれ」と叶わぬ恋、又は「秘密」を閉じ込めること ~映画『2046』レビュー~

          ヒロシマから考える人間の尊厳 -広島訪問前日記-

          今度広島に旅行することとなった。その際はもちろん原爆ドームや広島平和記念資料館など原爆関連のスポットも訪れるつもりである。 親族に被爆者がいるわけではないものの、広島には長らく格別の思いを抱いてきた。本日はそれについて綴りたい。 中国で聞いた原爆の話 私の原爆に関する最初の記憶は中国にいたときのものである。幼稚園から小学校3年生まで私は中国で暮らしていたが、そんな小さな頃から私は色んなところで歴史の話、特に日中戦争に関する話をたくさん聞いてきた。中国で日本といえば先の大戦に

          ヒロシマから考える人間の尊厳 -広島訪問前日記-

          “反省”することとは何か 〜カズオ・イシグロの『浮世の画家』を読んで〜

          先日カズオ・イシグロによる『浮世の画家』という小説を読みました。 かつて第二次世界大戦時に戦意高揚に貢献するような作品を数多く描いた画家が、晩年に自分の人生について振り返るというストーリーです。 本書のテーマの一つに、“反省”があると思います。この場合、“反省”には単に過去を省みるという意味と、自身の過ちについて考えるという二つの意味がありますが、本作における主人公はまさにこの二重の意味における“反省”を強いられています。人はある時代におけるある社会の規範・常識のもとで生き

          “反省”することとは何か 〜カズオ・イシグロの『浮世の画家』を読んで〜

          アイデンティティがもたらす歪みを巡って 〜映画『籠城』鑑賞後の雑感〜

          先日東京大学東アジア藝文書院(EAA)が製作した映画『籠城』の上映会に行ってきた。 本作品は今の東大の駒場キャンパスに1935年から45年(正式な終焉は50年)まであった旧制第一高等学校(一高)をテーマとした映画である。 以下に印象に残った点についていくつか書きたいと思う。 ◯本作品について本作品は、様々な映像・写真資料や現在のキャンパスの光景を入れながら、当時の一高生の心情を表現した台詞を入れることで、一高という場所にいた当時の学生の体験を追体験するものとなっている。

          アイデンティティがもたらす歪みを巡って 〜映画『籠城』鑑賞後の雑感〜

          他者が生み出す地獄?! -「人ってこんなにも違うんだ」ということを実感した話

          「人ってこんなにも違うんだ」 「人ってこんなにも違うんだ」 今までの会話で数多く出会ってきた相手のあんまりピンときていない顔を思い返しながら(そして相手が見たであろう私のピンときていない表情を想像しながら)、一つのありきたりな結論に辿り着いた… …今画面の前にいるあなたはきっとピンときてない顔をしているので、もう少し頑張って具体化してみよう。 生きがいをめぐる違いと「命がけの飛躍」 あまりにもいろんな切り口からこの話はできるが、一旦は一つに絞ろう。 人によって生きが

          他者が生み出す地獄?! -「人ってこんなにも違うんだ」ということを実感した話

          2021年読んだ本トップ10

          2021年も多くの素敵な本との出会いがあった一年であった。 今年私が出会えた素敵な本のうち10つを取り上げてここで紹介したい。簡単な内容紹介と共に、自分がこれらの本を通して考えたことや新たに沸き起こった疑問についても少しばかり書いた。 順番は順不同で、ランキングはつけていない。そして、残念ながら、紹介できなかったものも数多くある。 私の内容のまとめ方に間違っている部分があるかもしれないことは重々承知しつつも、それでも自分がインプットしたことをアウトプットすることに価値がある

          2021年読んだ本トップ10

          横浜中華街:国家の枠から溢れた者たちの曖昧な空間 -映画『華のスミカ』を見て-

          先日『華のスミカ』というドキュメンタリー映画を見てきた。 戦後、横浜中華街の中国人(華僑)コミュニティが大陸派(中華人民共和国派)と台湾派(中華民国派)に分裂して対立した歴史を描いた映画である。 その映画を見た感想を少し書こうと思う。 本作では、横浜中華街の華僑たちがそれぞれが思う中国に自身のアイデンティティを持ち、それにコミットする様子(例:中華人民共和国/中華民国の建国記念日のパレード、学校に掲げられていた毛沢東像)が描かれているが、興味深いと思いつつも、どこか腑に落

          横浜中華街:国家の枠から溢れた者たちの曖昧な空間 -映画『華のスミカ』を見て-

          大坂なおみの聖火リレー最終ランナー起用から考える日本社会の現在と未来

          大坂なおみさんを聖火リレーの最終ランナーで起用してよかったか。 彼女の起用を前向きに捉えたい自分と、彼女の起用はただマイノリティの(多様性の記号としての)消費にすぎないのではないかと言う自分が、この問いをめぐって果てしない論争を心の中で繰り広げている。 そして、後者の自分が途方もない問いを一つ挙げる。 この社会は彼女を聖火リレーの最終ランナーに起用するのに値する社会なのか。 大坂なおみさんが聖火リレーの最終ランナーとなったことに対して、多くのメディアは彼女を「多様性の象徴」

          大坂なおみの聖火リレー最終ランナー起用から考える日本社会の現在と未来

          東日本大震災・原子力災害伝承館を訪れて

          景色ただっ広くひろがる海岸線と土地を見ながら、都会の人が都会の外に出たときに感じる典型的な開放感と爽快感に私は浸っていた。 しかし、何気ない景色も、無数の人の苦しみと悲しみの跡かもしれないということを知れば、たちまち違ったように見える。 2011年3月11日、多くの人がいまだに覚えているこの日付は東日本大震災が起き、東北や関東地方の太平洋沿岸が未曾有の津波に襲われた日である。地震と津波が襲った後、原子力災害に見舞われ、多くの人がその日常を捨てることを余儀なくされた。 被災地

          東日本大震災・原子力災害伝承館を訪れて

          1人暮らしを始めて

          会社から家に帰ると、服を着替え、朝洗い残した皿を洗う。洗い終わると、冷蔵庫から今日使う食材を出してまな板にのせ、今日作ろうとする料理のレシピを再度確認してから、包丁に手を伸ばし、食材を切り始める。忙しない調理作業を終えて、夕食を食べる。 そして、夕食を食べ終えると、皿や調理器具を洗い、洗い終わたところでやっと一息つける。 3月より初めての一人暮らしを始め、そして4月から会社に行き始めてから、このような暮らしがずっと続いている。 まだ慣れない家事は僕にとって自分を煩わせる面倒

          1人暮らしを始めて