発信者、必見。読書好き、必見。とにかく書くのも読むのも、楽しくなる1冊。「読みたくなる文章のからくり」とは?『文芸オタクの私が教える バズる文章教室 - 三宅香帆』【書評】
三宅香帆 著『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』
本著をひとコトで表現するならば、「とにかく書くのも読むのも、楽しくなる本」。書く楽しみが増えれば、読む楽しみも増える。で、また書きたくなるし、読み手の反応も楽しみになる。そういう循環を作ってくれる、めちゃくちゃ楽しい本。
SNSが主流になり、誰もが発信者となった現代。ただ書くだけじゃ味気ない。楽しんで書くことで、その面白味はグッと増す。発信者を応援してくれる、とてもとても丁寧な1冊です。
『バズる文章教室』は、〝文才〟と言われる「すぐれた文章感覚」を、できるだけ平易な言葉を使って解説する本です。
主にブログやSNSなどで日常的に、自分の考えや体験などを発信している人に役立つようにと考えて作りましたが、めったに文章を書かない人にも、これから文章を書いてみようと考えている人にも、あまり知られていない「読みたくなる文章のからくり」を楽しんでもらうことをめざしています。
本著、購入後、自分でもびっくりするほどのスピードで読了。あまりにも興味深いことが詰まっていて。なので、もう1度読み返しますし、きっと定期的に読み返します。
どう書けば魅力的な文章が書けるのかを学べる1冊であり、有名な作家の文章のどこにそのヒントが隠されているのかを紐解ける1冊でもあります。
本著では、『5音9音ぶつ切りモデル 村上春樹の音感力』『過剰口語モデル 三浦しをんの台詞力』『倒叙ミステリーモデル さくらももこの配慮力』といったように、誰もが知る作家の文章をもとに、『○○モデル』としてテクニックを抽象化している点がとても興味深い。
好きな作家が披露しているテクニックを学べるだけでなく、「なるほど。そんなテクニックが隠されていたんだな」と、読む時の新しい発見にもつながるのが本著の魅力です、はい。
何より、三宅香帆さんって、本当に文章を読むのが好きなんだろうなと、その圧倒的な観察力と文章・作家への愛に脱帽してしまいますよ。
実際に「書くための技術」を学べる本は世の中にたくさんあって、ただ、そのいずれもが、どこか教科書的であると、個人的には感じています。
が、本著はまったく違います。
誤解をおそれずに言うと、とにかく本が好きな人たちが居酒屋に集まって、時間を忘れ、好きな作家の文章に隠されたテクニックなどをお互い紹介し合う。そこで学び、新たな発見を得て、で、家に帰って早速そのテクニックを使って文章を書いてみたくなる。さらには、そのテクニックが収められた作家の本を購入したくなる。
教壇に立つ講師が語る上から目線の教科書ではなく、僕らと同じ目線でいかに書くことが楽しいか、読むことが楽しいか、語りかけてくれる1冊です。
本著の表紙では、「バズる」とか「発信力」とか「モテまくる文章」といった現代の発信者をターゲットとしたフレーズが打ち出されています。ターゲットへの引きを演出するためには必要なことですよね。
ただ、本著は現代の発信者だけにとどまらず、もっともっと幅広い人たちに読んでもらいたい。普遍的なことにたくさん言及されていますし、「書き手・読み手のバイブル」と言っても過言ではないほど、名著だと感じました。
昨今、好きなことにとことんハマれば、それが仕事にもなるし、それで世にも出られる。そういう時代。そのお手本とも言えるのが本著なんじゃないでしょうか。
ちなみに本著では、それぞれのテクニックを紹介する際、著者である三宅香帆さんが語る解説文にも、さり気なく紹介するその作家のテクニックが盛り込まれていたり。それを発見する楽しみも詰まっていますよ。
すべてのページから、著者が持つ文章への愛が感じられる。これは大袈裟な表現ではなく、本当の話。こんな読書体験は、はじめて、でした。
書きたい人におすすめで、読みたい人にもおすすめで、好きなことにハマるってどんな感じ、ってことを知りたい人にもおすすめの1冊。
物書きでもある自分が、これまでに購入した物書きのための実用書としては、間違いなくナンバーワンの1冊です。興味のある方は、ぜひ!
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