東京 - Tokyo
体育の日の三連休、私は東京に来た友人(イギリス人)を名所案内した。誰かを案内するのをひどく久しぶりに感じるのは、パンデミックだったからだろうか…久しぶりのことに、私もひと時とても楽しく過ごした。
まずは友人の宿至近の上野で待ち合わせて、上野公園を通り抜け、谷根千(谷中・根津・千駄木)界隈へ。すこし前(と言っても10年以上前になるだろうか…)にこのエリアが人気になってからは、古民家を改装したカフェなんかが増えたものの、昔ながらの甘味処やお煎餅屋さんもコロナを経ても変わらず営業されていて、落ち着いた文化と風情を感じられる地域に安心感を覚えて小さくうれしい私。ここ数年の異変にも動じず、すこしも変わっていないように見える。
私たちは谷中の古民家カフェでランチをして、止まらぬお喋りに興じながら時々立ち止まっては地図を確認し、次は谷中銀座へ。何と表現すればいいだろう…ここにはいつも郷愁を感じる佇まいがある。私は北陸出身だが、私の郷里の小さな街にも "銀座" と呼ばれる通りがあって、ほんの幼い - 小学生になるかならないかの - 頃には、祖母と母が食料品の買い物によく出掛けていたのを覚えている。夕暮れ時の谷中銀座は、とりわけ郷愁感漂うフォトジェニックな街だった。
暮れなずむ街を後に、今度は本家本元の “銀座” へ。私たちは有楽町に降り立って、数寄屋橋を抜けた後、東急プラザ銀座の屋上から有楽町〜銀座界隈を望んだ。
最近の私のお気に入りスポットであるここは、無料でこの界隈が見渡せるナイスな場所でもある。真向かいにある銀座エルメスの美しいファザード、小さく望める皇居、そして込み入った有楽町の脇を走り抜ける新幹線。銀座はどこを切り取ってもドラマティックで、ここからは日本の象徴になるような画が撮れる。
その後歌舞伎座に立ち寄り、日本一の地価を誇る銀座四丁目を散策した後は、軽いディナーでこの日を締め括った。
横浜市民(都内通勤)だった20代を含めれば、これまでの海外滞在時を除いても私の東京在住歴は20年を超えてしまった(通算21年2ヶ月)。郷里で過ごした時間よりも長いことに、はたと気がついた。
驚いた。そんなに年月と齢を重ねてしまったのかと改めて、一瞬驚いてしまったけれど、最近では時々 "東京に少々飽きた感" もないこともないけれど…それでもやはり、私は東京が好きだ。銀座の騒めきと夜の灯りはいつでも私を迎え癒してくれるし、たとえ一人でも - 何がそうさせるのかはわからないけれど - 何故だろう…私はここで孤独を感じない。いつの間にか私の一つのホームになり、心ゆるせる何かを得てしまったように思う。
無意識下の私を形成したのが私の郷里北陸なら、大人になってからの、有意識下の自我が確立した私を形作ってきたのは東京だろうとも思う。
この先別の街に住むことになっても、東京ではホームを感じるに違いない。少し東京を離れれば山手線で感じるあの他人顔も、私の中では10分で元に戻る。
よく東京の文句もいうけれど、そして日本の息苦しさも時々嫌になるけれど…海外に行けば "Tokyo girl" と言われて、東京に住み始める前からまるで既視感のように東京に住むことを何故か何処かで知っていた私の、好きな街。私のファーストネームには "都" という字が入っている。私は、東京が好きだと思う。
※ 挿入されている写真及び画像はすべて筆者の撮影によるものです。