幕の内弁当をつくってみる。
やってきました、秋の行楽シーズン。この季節の想い出といえば、やっぱりお弁当。
🍱おかずの宝箱
もちろん、想い出の外枠はお出かけだったり、運動会だったりのイベントなのですが、そういうときに食べるお弁当はなんだか特別な記憶になっています。
ふだん教室で食べたお弁当より華やかで、おかずもいつもより種類が多くて、いろいろ食べられる。おとなになってお酒の味を覚えてからというもの、どどーんとひと皿がメインになる丼やカレーより、小鉢をたくさん並べた食卓にワクワクする性分になりましたが、おそらくあの頃からその片鱗は顔をのぞかせていたのかもしれません。
そんなお弁当の中でも、ひときわそそられるのが、まさにおかずの宝箱、幕の内弁当です。
ごはんにはごまが振られていて、その真ん中にカリカリ小梅の赤色がきらり。色とりどりのおかずをどれから食べようか迷う、そんな贅沢感がふたを開けた瞬間から感じられます。
今回はそんな幕の内弁当をつくってみたお話です。
🍱幕の内弁当の定義
ところで、さあつくろうと思うと、幕の内弁当の定義ってなんだろうとあらためて思いました。
調べてみると、中身はおおむね自分のイメージどおり。煮物、揚げ物、焼魚に卵焼き。あ、そうそうたしかにかまぼこが入ってるイメージです。地味なので忘れがちでしたが、あの紅白の彩りは幕の内感を出すのにはあったほうがいいに違いない。
というわけで、これが目指す幕の内のお品書きになりました。
焼魚
揚げ物
玉子焼き
煮物
かまぼこ
カリカリ小梅
お漬け物
ごはん
あらためて書き出すとけっこう具だくさん。手際よくやらないとですね。
🍱幕の内つくってみます
🐟️焼魚は鮭の味噌漬け
まずは焼魚から。今回は彩りも考えて鮭にしました。
お弁当箱サイズに削ぎ切りします。こうしておくと、見映えもいいうえに、薄くて火どおりもよくなります。
味付けは味噌、みりん、砂糖。よく和えたら冷蔵庫で1時間ほど漬けて味噌漬けにします。大きな切り身と違って、薄切りなのでわりと短時間で味も染みてくれるはず。
あとは漬かったら、軽く味噌を拭い取り、アルミホイルに載せて、オーブントースターで5分くらい焼くだけです。
焼魚というと調理はシンプルなのに、グリルを使うので後かたづけが大変というイメージがありますが、小ぶりの切り身ならオーブントースターが圧倒的に便利。中にはいるサイズであれば、焼き時間を調整したら大丈夫です。さすがに鯛丸ごととかは無理ですが。
課題があるとしたら、焼いたあとのお魚のにおいでしょうか。味噌をまとった魚の香りが残ると、次に使うときのにおい移りが心配…というかたもいるかもしれません。でもそれも、焼き上げたあと、しばらくふたを開けておけば、それなりに消えます。ふだんは2、3時間も置けば気にならなくなる感じです。
🔥揚物はメンチカツ
続いて揚げ物。幕の内なので和食方向だとしたら、定番はえび天なのかなと思いつつ、今回は洋風。
すこし前につくって冷凍しておいた、作り置きのメンチカツです。
冷凍から揚げるときは、油を火にかけたらすぐにいれて、そのままじわじわと加熱していくと、うまく揚がるなあと気づいたのはいつだったか。最近は冷凍したフライものを揚げるときは、もっぱらそのスタイルです。
🥚甘い玉子焼きと煮物
お弁当の彩りに大切な鮮やかな黄色といえば玉子焼き。
関西出身なので、だしたっぷりのだし巻き玉子も大好物ですが、それはなんとなくおせち料理やお祭りの日に食べる、ごちそうバージョンという意識があります。
なのでお弁当にいれるときは、お砂糖たっぷりの甘くて、食感はしっかりめの玉子焼きが好きかも。卵1個にお砂糖小さじ1で、水やお出汁は加えません。
そして煮物。たけのこ、れんこん、にんじん、こんにゃく、干し椎茸。しいたけはこのときは生より絶対干し椎茸がおいしいです。
これもお弁当のときは、けっこう甘くてしっかりした濃い味に。そのほうが冷めてもおいしいんですよね。まさにこっくり味です。
🥢おかずラインナップ
メンバーが勢揃いしました。
真ん中にいるのは作り置きのチャーシューのスライス。メンチカツもありますが、ちょっとお肉があるといいなと思っての登場です。たまに市販の幕の内だと、鶏の照り焼きが入ってたりしますよね。あのポジションです。
あと、カリカリ小梅に細切りたくあん。香の物だけで赤と黄色の色彩確保に成功です。
🍱盛り付けのポイント
いよいよ盛り付けていきます。
まず最初のポイントはごはん。幕の内といえば、おにぎりを型どった、型押しごはんですよね。でも、さすがにこのために押型を買うということはなく。
これでいきます。水で濡らしたテーブルナイフですっと切り込みをいれて、ごはんをおにぎりっぽくしてみました。
ごはんの上には小梅とごまを。おかずを嵩の大きい煮物から詰めていきます。
メンチと玉子でおかずコーナーの外周を囲うように。質量の多いおかずで土台をつくるのがポイント。
そうやって外枠を固めてから、ひと切れずつ用意したおかずを隙間に詰めていくと、安定するうえに、少ないおかずもちゃんと顔の見える仕上がりになります。
チャーシューの上に鮭の味噌漬け。
仕上げにかまぼこを飾って、ごはんの上には千切りたくあんです。
これがトケイヤkitchenの幕の内弁当。蓋をしたら、風呂敷で包んでお出かけしたくなる気分です。
🍱お弁当の温度
ところで、みなさんお弁当って、食べるときあたためますか。
今回のようなお重に盛ると、そもそもそのまま温めることができませんが、それとは関係なく、冷めた状態で食べるお弁当がけっこう好み。
子どもの頃、学校で食べるお弁当って、持っていったらそのまま食べてましたし、いまでも帰省のときに新幹線で食べるお弁当は冷たいままです。
冷たいといっても、冷蔵庫で保管してたものを、取り出してすぐ食べるわけではないので、食べる頃にはいわゆる常温状態。この温度感がいいんですよね。あつあつのおかず、ほかほかのごはんとはひと味違ったおいしさを感じます。
お弁当のおかずって、基本味がしっかりしておるほうがおいしいと思っていて、それは白いごはんとともに食べるということもありますが、温度というメリハリがないからかなと感じます。
たとえば、ある日のおうちごはん。メインはあったかい肉豆腐だったとします。小鉢にはきゅうりの酢の物、ほうれん草のおひたし。もうひと品サブメインにコロッケ。
これって、肉豆腐のあったかいに対して、冷蔵庫で冷やした酢の物はひえひえで、茹でてから和えておいたおひたしは常温、コロッケは揚げたてでアツアツ、みたいに温度にコントラストがありますよね。
🍱おいしさの秘密は
それと比べて、みんなおなじ温度になるお弁当がメリハリをきかせることのできるポイントは味付けと食感です。素材によって生まれる食感のバリエーションと、料理それぞれの味がしっかりと主張してることがおいしさに影響してるという気がするんですよね。
味噌味の鮭をひと口。ここで白ごはん。次に食べるメンチにはソースをちょっとかけて、次はこっくり味の煮物。食感の違い、味噌味、ソース味、醤油味という味の変化、それぞれの味付けの主張。これが、また次のひと箸が進む理由なのかもしれません。
といいつつ、もしお弁当に入れたおかずの残りが、お皿に載って冷めていたら、食べるときにレンジするかもしれないなぁとも思います。
つまり、常温のおいしさの根本を支えているのは、きっとお弁当というスタイルと、お弁当箱という容れ物と、そしていつかのお弁当の記憶なのでしょう。そこに味付けのメリハリというテクニックで、それをバックアップしているのではないでしょうか。
あしたからは三連休。
“おべんと”持って、どこかに出かけてみませんか。