ニクヤキストへの道
🥩お肉を焼く緊張感
お肉を焼くのって調理法としてはもっともシンプルなものだと思います。
でも薄切り肉は別として、ある程度の厚みがあると、焼き具合が気になりまよね。
特にステーキ。
絶妙なミディアムレアに仕上げようと思うと、焼きなれていないとなかなか大変です。
実は私もずっとお肉を焼くのは苦手でした。
というより、煮込み料理と違って、もし失敗したらリカバリーのできない緊張感がいやで焼くのを避けてきたという気がします。
🥩お肉の焼き加減には名前がついている
お肉の焼き方というと段階があって、中にどれくらい火を入れるかで、それぞれの呼び名が変わるくらいです。
火通りの浅い方から順に、
レア(rare)=ブルー(bleu)
ミディアムレア(medium rare)=セニャン(saignant)
ミディアム(medium)=ア・ポワン(á point)
ウェルダン(well-done)=ビアン・キュイ(bien cuit)
と名前がついています。
レアは中が生のように鮮紅色ですが、実際には熱は通っていて、ほんのりと温度は感じるくらいの浅い焼き方で、順に中心部の色が赤からピンク、そしてウェルダンは完全に火が通った褐色という感じです。
レストランではお肉の焼き加減のリクエストを訊かれますが、おそらく一番多いのはミディアムかミディアムレアではないでしょうか。
そして、いざ焼こうと思うと、そのくらいが一番難しかったりするんですよね。
🥩とはいえ、焼くしかない
どんなに難しくてもリクエストが入ると焼くしかありません。
そんなわけで焼くわけですが、焼く回数が増えれば増えるほど、経験値があがります。
そしてそんな経緯を経て、肌感覚でお肉の中の状態がわかるようになってきます。
お肉を焼くのって、ある意味で慣れることで苦手意識は払拭できるものなんですよね。
🥩ではニクヤキストへの道を進みます
“ニクヤキスト”というのは何かというと、雑誌か何かで見た、お肉料理のシェフの肩書のようなものでした。
キャッチーな感じがしたので、お肉をうまく焼けるようになりたいと思ったときに、「よ~し、ニクヤキストになってやる!!」みたいな感じで目標を掲げて以来、お肉を焼く自分が目指す場所にしています。
さて、では焼いていきましょう。
🥩まず常温に戻す
まずお肉は焼く前に冷蔵庫から出して30分ほどおき、常温に戻しておきます。
これはけっこうポイントで、お肉の温度が冷えすぎていると、焼いたときの熱の伝わりが遅くなります。
それもお肉の厚みによって冷えている度合いが変わるので、常温に戻したお肉を焼くというのが、ムラなくお肉をうまく焼くコツかなと思います。
🥩強火で温め弱火で焼く
お肉を焼くときの火加減は弱火です。
ただし、フライパンは最初に強火で煙が出るまで温めておきます。
そのあとお肉を入れるタイミングで弱火に落として、そこからじっくりと焼いていきます。
牛脂を入れたフライパンを強火で熱して、煙が出てきたら弱火に落とします。
お肉を入れて、まず片面にじっくりと焼き色を付けます。
これくらいこんがりと焼けたら返して、反対側も同じようにしっかりと焼きます。
とにかくあせらずじっくりと優しく、じわじわ火を入れていくのがポイントです。
トングで肉を立たせて側面にもしっかりと焼き色を付けます。
香りづけににんにくを入れます。
にんにくは焦げやすいので最初から入れず、お肉にある程度火が通ってから仕上げに入れるようにします。
🥩弾力で測る焼き加減
お肉を指で押して、鼻の頭くらいの弾力になったら焼き上がりです。
ちなみに目安としての弾力はこんな感じです。
👂耳たぶくらい→レア
👃鼻の頭→ミディアムレア~ミディアム
👄顎の固さ→ウェルダン
🥩ステーキの仕上げ
焼き上がったお肉はすぐに切り分けるのではなく、ここからが最後のポイントです。
焼き上げたお肉をアルミホイルにとります。
そのままホイルで包んで10分ほどねかせます。
この工程では、焼き上がったばかりのお肉の肉汁を落ち着かせつつ、余熱で中までじんわりと火を通していく感じです。
きれいなロゼ色に焼き上がりました。
🥩さあ、いよいよ完成
お肉を焼いたフライパンでソースを温めます。
今回はステーキについていたお肉屋さんのソースですが、みりんと醤油でもOKです。
牛脂、焼いたお肉ににんにく、旨味と香りがたっぷりのフライパンはそれだけでソースに深みを足してくれる要素です。
今回はステーキ屋さんの鉄板ステーキのイメージで、もやしをたっぷり入れた野菜炒めを添えました。
🥩ニクヤキのポイント3か条
1.焼く前に常温に戻す
2.強火でフライパンを温めて、肉は弱火で焼く
3.焼いたら包んで余熱
これは順を追った工程の解説で紹介してきたとおりの、テクニック的な部分です。
🥩ニクヤキストの心得3か条
1.あせらずじっくり
2.焼いた肉は食べられる
3.感覚は身につく
これが「お肉を焼くのが苦手」という意識を取り除く大きなポイントだと思います。
1.あせらずじっくり
お肉を焼くのって、なんとなく瞬間勝負みたいなイメージがあると思います。
たしかに火通りは早い素材ですし、ましてや中心をロゼ色に焼き上げようと思うと、焼きすぎないように意識して短時間で仕上げなくてはならないという感覚が生まれます。
でも実際にはステーキのお肉に厚みがありますし、そんなに慌てなくても大丈夫なんです。
2.焼いた肉は食べられる
…という気持ちを持って焼くといいと思います。
何をいいたいかというと、自分もそうでしたが、ステーキを焼くのが苦手という場合のおもな理由は、焼きすぎたらどうしよう、という気持ちなんだと思います。
ただ冷静に考えると、生のお肉は食べられなくても、焼いたお肉は食べられます。
だからもし焼きすぎても、それは料理として失敗ではないのです。
焼いたお肉は食べられる。
お肉を焼くことは料理としては失敗の絶対にない道なのです。
3.感覚は身につく
そして、くり返し焼くことでいろんなことが自然とわかるようになってきます。
たとえば焼き上がりを確認する弾力の感触もそうですし、焼く前の室温に戻ったかどうかの温度感など、最初はわからなかったことがわかるようになるのです。
なにごともそうですよね。
たとえば、いいなと思った曲をカラオケで歌えるようになるまで練習するときのことなんかを思い出していただけると、ああ、そういうことね、と思ってもらえるのではないでしょうか。
これでお肉が上手に焼けるようになるはず。
ぜひトライしてみてください。
🥩焼きました写真集
最後に焼いたお肉たちの写真をアップしておきます。
部位やサイズが違っても、こんな感じでうまく焼けますので、まずはニクヤキストの心得をもって焼いてみてはいかがでしょう。
自分で焼いたお肉は、焼き上げた達成感もプラスされてやっぱり美味しいです。