素朴な疑問を深掘りすると視野が広くなる「日本人はなぜ欠けた茶碗を愛でるのか」
祭事、お正月などの風習、神社仏閣。
古くからある伝統は現代にも根強く残り、生活に彩りを与えてくれています。
今は当たり前のようになっていることも、注意深く観察してみると、
・お地蔵様にはどんな意味が込められているのだろう?
・アメリカの土足文化に対し、日本はなぜ靴を脱いで家に上がるのだろう?
昔からそうされているから、それはそういうもの、文化の違い、一言で片づけられる疑問は、少し考えるといくらでも出てきます。
しかし、このささいな疑問をあえて深掘りすることで、なぜそうなったのか、物事の背景や本質が見え、思考・知識をさらに深いものにできます。
「日本人はなぜ欠けた茶碗を愛でるのか ー日本のことがよくわかる本ー」(中山 理 著)では、日常のなぜ?と思う素朴な疑問について歴史をたどり、詳しく解説してくれるエッセイです。
タイトルのように、言われると確かになんでだろう?と思うことも。紐解いていくと、昔の日本について深く知り、歴史やその時代の特徴がわかってきます。
雑学といえば雑学ですが、これらを知ることで改めて自分のたちの住む日本という国をもう一度知ることができるのではないかと感じます。
個人的に気になったものをピックアップ。
リンクは電子書籍になります。
〇日本とアメリカの「すいません」の意味
アメリカでは謝罪として用いられることが多い「すいません」。
日本では、お詫びだけでなく、呼びかけ、感謝したときなどに使える汎用性の高い言葉として使われています。
揉め事・議論の場において、アメリカでは互いに納得いくまで話し合うことに対し、日本は相手を不快にさせたことをまず詫びるために「すいません」を使うことが多いので、ここで違いが生まれています。
ただ、どちらが良くてどちらが悪いという問題でなく、双方に文化や考え方があると理解するのが大切。
それはちょっとおかしい、自分はこっち派だなぁと考えず、そういう考え方であり、文化なんだと知ることが大事。
物事を俯瞰する、視野を広くするためには、些細なことに思考を向ける。
〇さるかに合戦が昔話の定番な理由
言わずと知れた昔話の定番「さるかに合戦」。
サルがカニの柿を独り占めし、カニに硬い柿をぶつけるサル。
栗と臼と蜂、牛糞とカニの子どもたちがさるを懲らしめに行くストーリー。
当時のストーリーは、カニもサルも命を落とすものになっているそうです。
当時公認されていた恨みを晴らす仇討ちがテーマとなり、人気を博していたようです。
ブレーメンの音楽隊などグリム童話と違い、登場人物が生物にとどまらず、生物と物質の境界があいまいなことも、当時の思想が反映されていると感じられます。
当時流行していたものだから、深掘りすることでその時代の常識を知ることができます。
何気なく見ていた、知っていた物語にも当時の文化を知る手がかりに。
気にも留めていなかった素朴なことから時代が見えてくる。
日常に抱く疑問も、その場限りのものにせず、深堀りしていくと知識も深まっていく。
雑学だけでなく物事の本質、広く視野を持つ大切さを学べる。
エッセイとして読みやすい一冊でした。
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最後までお読みいただきありがとうございました。