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<2020.3>群馬みなかみの旅【諏訪温泉~川古温泉】
※この記事は2020年3月の日記に加筆修正したものです。
久々の訪群。元々縁もゆかりもないこの地だが、関東人としては湯巡りの基本となるのが群馬県だ。まだ源泉と循環湯の違いも分からぬころ、随分と厄介になった。
白濁硫黄泉「草津・万座」、茶褐色「伊香保・鹿沢」、無色透明「法師・四万・沢渡・猿ヶ京」などなど、激湯から温湯までバラエティに富んだ言わば温泉のデパート。徐々に身体が温泉の効かせ方も身に付き、現在は体調に合わせ湯を使い分ける。
10年以上通年悩まされる全身痛。特に冬場の激痛は深刻。冷えや血液循環の影響もあるのか、頭痛や睡眠障害も出やすい。数日続いた小春日和も一転、厳寒へと逆戻りしたこの日、老体に鞭うつように向かったのは「湯宿温泉」。
旧三国街道(国道17号)沿いにひっそりと佇む小さい温泉街で、本当に国道沿なのかと疑われるほど静かだ。旅趣漂う石畳に無料の共同浴場が4件(地元民及び宿泊者のみ利用可)。大型ホテルもなければ土産屋もない。
かなり鄙びた印象だが、湯量に見合った街造りは、目の肥えた温泉ファン達を魅了する。初訪から7~8年ほど経つか、年心身の保養目的でこれまで最も利用してきた地だ。
小雨の降る中旅はスタート。みなかみエリアは雪の予報も出るほど、この日は寒かった。
先立って向かった先は、朝昼兼用腹拵え「永井食堂」。おそらく日本で一番有名なモツ煮屋。朝9時からオープンするこちらの店。赤城IC を降りて17号を北上すると忽然と現れる行列店。
休日にもなると30台ある駐車場が溢れ誘導員が出動。それでも混雑は収まらず17号に渋滞ができてしまうほどだ。またここしかないであろう、モツ煮専用の自動販売機があるのも特徴だ。
20席はあるL字のカウンター席は常に満席状態。ラーメンや納豆定食、目玉焼き定食などのメニューもあるが、ほとんどの客の注文は迷うことなく3択。「普通」「半ライス」「レディース」。この店の普通盛は茶碗摺り切り2杯ほど。半ライスでも一般的な大盛程だ。
「半ライス」と注文すると10秒足らずでモツ煮定食が着丼。この店には独自の風習があり、縦方向で配膳される長方形のお盆を横向きにしてはいけない。ルールを知らずに横向きにするとすかさず女性店員から檄が飛ぶ。
「お盆は横にしないで!」
時々テレビなどで取り上げられると、不文律を知らない外客も多く訪れる。どうもこんな日はいつもより店員さんは期限が悪そうだ。
パンチの効いた辛みがあるモツ煮に七味を加えてご飯と掻き込む。雨だというのに外で行列を成す客がいるため長居は禁物。10分で完食。会計は590円。味と速さと安さ、大満足だ。
原価高騰や段階的に上がり続ける消費税。苦渋の決断を強いられ値上げに迫られる飲食店が多い中、この店は開業以来一度も値上げをしたことがないという。何という企業努力。いつまでも残ってほしい名店だ。
ここからは本題の湯巡りへ。ファーストダイブは上牧駅と水上駅の中間に位置する「諏訪温泉センター」。
見落としてしまいそうな路地に入り、車幅と変わらぬほどの狭路を抜けると風呂屋とは見つかないボロ屋が。玄関を潜ると番台へ350円を支払い館内へと向かう。いつも女将さんは無口だ。
こちらは小さい内湯が一つのみ、41度の硫酸塩泉がかけ流しでいただける。ほんのり漂う優しい石膏臭に温めの湯が全身を包み込む。あまりの気持ち良さにウトウトと眠気が誘う。
この湯は飲泉も可能で土着は焼酎「大五郎」の4ℓペットボトルを持参している。胃腸病に効果があるという湯は、癖がなく飲みやすい。
飲泉が出来るのは、湯を循環や消毒液臭使用をしていない証拠。飲んで入って、素晴らしい湯だった。
玄関を出ると、さっきまで降っていた小雨は雪へと変わっていた。雄大な坂東太郎(利根川)に落ちる六花を駐車場から眺める。そう言えば最近雪見温泉をしていない。
予定にはなかった「川古温泉 浜屋旅館」へ向かうことにした。
細雪の舞う中、猿ヶ京方面へと登る。赤谷湖近くのローソンが見えたら信号を右折。そこから10分程、最後は渓谷沿いへと吸い込まれるように一軒宿に到着。
その効能の高さから「川古の 土産は杖を一つ捨て」と詠まれる名湯だ。
客のほとんどが連泊のリピーター。チェックアウトの際に次回の予約を取って帰る湯治客も多いという。ここちらのメイン浴槽は混浴大露天風呂。
冬場となれば37度ほどの不感温度となり、客はみなここで眠る。リウマチ体質の私にとっては筋肉の弛緩に最適の湯だ。
だが少々残念なことに招かざる迷惑客(覗き目的)が多く、土日は不定休の場合もあるようだ。
露天に入ると先客が6名。雪のためかいつも以上に温く、何時間でも入っていられそうだ。赤谷川の支流に落ちる雪を眺めながら、1時間ほど経過。
湯から上がるとかなり寒いので、内湯で仕上げる。3名サイズの混浴内湯は露天よりも少し温度が高い。石膏臭がハッキリ感じられるフレッシュな源泉を堪能。
暫し独泉を愉しんでいると、困ったことに妙齢の女性が入って来てしまった、、気まずいので出ようとすると「気を遣わなくて大丈夫ですよ」という。
「はぁ」と答え一度上げた腰を戻す。かけ湯をしている女性の背中には、、和彫り。どうりで肝が据わっているわけだ。
沈黙が続く中、女性の方から声をかけてきた。
「あなたはどちらから?」
「恋人はいるの?」
「仕事は何してるの?」
最初は戸惑ったが気が付けば30分談笑。さっぱりとした好女だった。湯けむり舞う混浴で、さっぱり系美女に岡惚れ、、、
いかんいかん、旅の目的が変わってしまう。
令和2年3月15日
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