リング、あるいは舞台に降臨する我が家のぬか床
つる・るるる部長によって発足されたぬか漬け部に入部したとき子です。
つるさんのぬか床愛に魅せられました。
それでも、しばらくは遠くから眺めているだけだったぬか床。
しかし、気付けば溢れるぬか床愛が私にも。
そんなわけで、ぬか床の布教をしたく、参上しました。
以後、宜しくお願いいたします♪
さて。
私と無印ぬか床との出会いは唐突でした。
あの日から、私は、くる日もくる日もぬか床に語りかけ、あるいは「まだいける、まだ入るよ!」と叱咤激励し「おおう!水分多いな!」「塩、いるか?」「ぬか足すか?」と塩梅を確認し、それはもう、リングに立つぬか床のセコンドのごとし熱さを持って付き添って参りました。
そんな、我が家の挑戦者ぬか床は、私の用意する対戦者を、ことごとく己の手中におさめていく。
1番のお気に入りは人参だ。
生だとクセのあるこいつを、6等分程に細く切って漬ける。
2日ほど待って、それを取り出すと、私は我慢できず、げっ歯類のようにそのまま先の方からポリポリ食べる。
もはやオヤツだ。じゃがりこだ。
じゃがりこならぬ、にじりこだ。
家族が人参のぬか漬けを好んでないので、好き放題楽しめるというのが、さらにポイント高い。
2番からはもはや、順位がつけられない。
大根、きゅうり、オクラは、家族全員が好きなので、これは争いになる。
「オクラは数が限定されてるからな!!今日は1人2本までぞ!!」
きゅうりに至っては、取られてしまわないよう、娘がごはん茶碗に盛り付けていく。
きゅうり丼の完成だ。
待ってくれ。我が家は3人家族。
母さんは、おかずだってそれなりに作っているはずなんだ。
なのに、ひもじいのかお前らは。
落ち着け、ぬか漬け食い過ぎだ。
アボカド、ゆで卵も好評だった。
しかし、あれは、好評が過ぎて、血を見る争いになるかと思った。
「誰だ私のぬか床に手を出したやつは…!」
埋め込んだはずの卵が見つからなかった夜、私は叫んだ。
在宅ワークの夫が犯人だった。
その際、乱暴な手つきをしたのか、アボカドを崩していて、さらに私を発狂させた。
娘と、夫を村八分の刑にした。
ナスに関しては品種を選ぶ。
水ナスが美味しい。甘い梨のようなシャクシャク感が程よく残っていて止まらない。
残念だけど、普通の長ナスのニュグっという食感は、いまいち好みではない。
なので、スーパーや道の駅で水ナスに出会うと、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。
あいつは、普段、見つからないよう身を隠してるんじゃないかと疑っているので、出会ったときは「採ったどー!!」と、心の中で叫ぶ。
水分が増えてきたら、切り干し大根を入れる。
程よく水分を吸って柔らかくなった切り干し大根は、歯応えがあって、旨味も増して本当に美味しい。
しかし、あれは、行方を探るのが難しい。
藁のようにぬか床の表面に敷き詰めるのが私のやり方なのだが、夫が勝手に混ぜ込んでいたりする。
ぬかに埋もれてしまった、白い細長いそれは、出会ってはいけない、なんらかの虫に見えてしまって、私を一瞬凍らせる。
お茶パックの袋に入れてみたりもしたのだが、そうすると、ぬかの香りが染み込んでいない気がして、なんだか物足りなかった。
仕方がないので、いっぽんいっぽん、手探りで探し出したりもするが、まぁ美味しいし、宝探しみたいなので良しとしている。
夫が「2021年の1番のヒットだ」
ぬか床に手を突っ込んでいる私に、満面の笑顔で言った。
嬉しい。嬉しいけど、ちょっと待て。
うだるような真夏の夜、どうしても唐揚げが食べたいと言う家族のために、滝のような汗を流しながら揚げ物をする日もあった。
今日は疲れている…だけど昨日の夜は外食してしまったから!そんな理由で、栄養面を重視した夕食を捻り出した日もあった。
みじん切りからの包みからの焼き、のような、3段階の調理法を駆使して、初めて一品になるような面倒な料理や、ふかして潰して塩揉みやみじん切りしたアレを入れて味付けして、と面倒なくせに「サラダしか作ってない…!」と驚愕してしまう料理も作っていたはずだ。
それなのに!!
埋め込んで、1日ないし2日待っただけのぬか床が、2021におけるトップランナー!!
セコンドとして温かい眼差しをもって見ていたぬか床に、すべてを持っていかれている主婦がここにいた。
ぬか床…恐ろしい子…!!
この令和に降臨した、北島マヤと見紛う存在。
ぜひ、あなたの家でも体感して欲しい。
台所という舞台で、絶対的存在感を放つ。
「たかが漬物」などと侮ってはいけない。
古から愛され続ける理由を、その目で、その嗅覚で、その舌で感じるのだ…!!
※妄想が始まると止まらので、そっとしておいて大丈夫です。
ところで、真夏にぬか床を始めた私は、冷蔵庫で保管しつつ見守っているわけなのですが、乳酸菌の活動のためには、冷蔵庫から出してあげるべきなのでしょうか?
今のところ、香りも味も好みなのだけど、常温保管で「これが本当のぬか漬け!」みたいになるのかと思うと、惜しい気もしております。
まだちょっと寝苦しい夜が続く広島。
常温保管のタイミングがあれば、教えていただきたい。
それにしてもだ。
挑戦者ぬか床は、食材を手中におさめるだけでなく、すでに私をも取り込んでいる。
私が程よく漬かってしまう日も、そう遠くないかもしれない。